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発売会社で倍率が違う!? フランス馬券事情

  • 2012年10月20日(土) 12時00分
 今週もフランス競馬の話。と言っても、またちょっと視点を変えてみます。

 フランス競馬の馬券は、PMU(Pari Mutuel Urban)の窓口で買います。PMUは、もともと場外発売(カフェ、タバコ屋に置かれた発売機やCafes-Coursesという場外発売所での発売など)を取り仕切っていた国有の馬券発売公社で、競馬場内の馬券はPMH(Pari Mutuel Hippodrome)が発売していました。

 手っ取り早く言えばPMUとPMHは“似て非なるもの”だったのです。しかし今は、場内で買った馬券にはPMHのプリントが入るものの両者の馬券は同じ。ロンシャン競馬場で買った的中馬券を他の競馬場や街中の発売所で払い戻すこと(その逆も。もちろん払戻期間内で)が可能になりました。

 PMUでは、インターネット投票も受け付けています。場内も場外もインターネットもPMU。フランス競馬の馬券に関しては、PMUが唯一無二の存在でした。

 ところが、最近になって別のインターネット馬券発売会社が参入してきました。Le TurfというParis Turf(フランスの全国版競馬専門紙)のグループ会社です。

 PMUとLe Turfとでは、扱う馬券の種類が若干違います。PMUにあってLe Turfにないのが、Multi(仏式4連複。選んだ馬の頭数によって配当が違う)、Tierce(基本は3連単だが、着順が違っても選んだ3頭がすべて3着以内に来れば“残念賞”がもらえる)、Quarte+(Tierceの4連単バージョン。1〜3着までを着順通りに当てた場合にも“残念賞”あり)、Quinte+(同5連単バージョン。詳しくは11年10月15日付けの当コラムで)。一方、Le Turfでは、Top4(単純な4連複)、5/5(サンク・サンクと読む? 単純な5連複)を発売 しているほか、18頭立て以上のレースになると4pと称して複勝が4着払いになります。

 両者は別会社なので、同じレースでも配当が違ってきます。例えば先日の凱旋門賞。勝ったソレミアの単勝(Simple Gagnant)は、PMUでは41.5倍でしたが、Le Turfでは40.67倍。1 着ソレミア、2着オルフェーヴルの馬単(Couple Ordre)は、PMUが293.2倍、Le Turfは304倍でした。また、Le Turfの複勝(Simple Place)で4着のハヤランダには11.5倍の高倍率がついていました。

 このシステムは、IPATやオッズパーク、楽天競馬などが、それぞれ独立した会計と独自の賭け式で馬券を発売するようなもの。日本でこれを実現させるためには、まず初めに競馬の主催者と馬券発売業務をまかなう組織を別物にする必要があります(電力会社の発送電分離方式に似た発想?)。

 必ずしもそれがベストというわけでもないでしょうし、そういう形に簡単に移行できるとは思いません。法律の改正も欠かせないでしょう。でも、競争原理を導入して馬券の売上げアップを図るという点では、見習ってもいい部分がありそうです。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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