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ばんえい競馬開幕

  • 2003年04月21日(月) 12時19分
 道営ホッカイドウ競馬開幕の10日後(4月19日)、もう一つの地方競馬であるばんえい競馬が旭川から開幕した。明年2月まで150日間の開催である。

 ばんえい競馬は、現在、旭川、岩見沢、北見、帯広の4市で構成する北海道市営競馬組合により行われている。ここも昨今の不況による売り上げ減少に悩むのは他の地方競馬と同様で、累積赤字は現在約17億円。道営ホッカイドウ競馬と比較すると、十分の一程度だが、赤字はそっくりそのまま4市の負担に跳ね返るわけで、危機感は根強い。とりわけ、昨年は不祥事が重なり、かなりのイメージダウンとなった。調教師による名義借り事件や、走路に蝋が撒かれる事件(犯人特定できず)などなど。その結果、売り上げが伸び悩み、対前年度比で94.3%、184億円余に終った。

 今年度は、150日で売り上げ目標は174億円という。ただし、開催二日間を終えた段階での数字は、かなり厳しいものになっている。19日(土曜日)が目標9850万円に対し、9152万円。20日(日曜)が目標1億2600万円に対して1億1000万円と、いずれも届かなかった。

 ばんえい競馬は、世界でただ一つ、この北海道だけで行われている競馬である。しかも、道営ホッカイドウ競馬が平日開催であるのに比べ、基本的に土、日、月の週三日開催と、ファンが足を運びやすい日程が組まれている。そして、平地競馬にはない独特の迫力に溢れたレースを愛する熱心な人々が少なくない。

 個人的な話で恐縮だが、私も数回、ばんえい競馬を見たことがある。何より驚いたのは、サラブレッドなどとは比較にならない馬の体格だった。

 パドック(一応存在するのだが、あまり意味がないような気もした)に現れた出走馬の中には、明らかに脚部不安と思える馬が混じっているのだが、隣にいた常連と思しき年配の男性に尋ねると「いいや、関係ない。走るわけでないから」という答が返って来て、妙に納得させられた。確かに走るのではなく、橇を引いて歩くのだった。

 確かに、スマートさや垢抜けた雰囲気にはほど遠い。だが、何となくアットホームでノンビリしているのは、ばんえい競馬ならではの良さだとも思える。出走馬の名前も、明らかに中央競馬の有名馬から拝借したような馬がたくさんいて、笑えた。

 その傾向はあまり変化していないようで、例えば今年の開幕三日間の出馬表を見ても、サンデーブライアンだの、スペシャルワンダーだの、ナリタビッグマン、ホクトタイクーンなど、あれ?と思わせるような名前が散見できた。しかし、極めつけは、ヤマノトップガンという馬だろう。これなど平地競馬ならば、おそらく認可されないのではないかという気がする。

 それにしても、不思議なほどばんえい競馬に多いのが、名前の一部に「シンザン」と入っている馬名。以前からそう感じていたのだが、果して今年も開幕三日間で出走したシンザン族は計6頭。毎日、出ている。初日には何と4頭がまとめて出走していた。

 中央競馬に限らず、地方競馬でも、シンザンの名前をつけられる例はほとんど見られなくなったが、ばんえいでは、まだまだ人気馬の筆頭格のようだ。思うに、これは、シンザンという言葉の持つ語感が、どっしりとした不動のイメージに繋がっているからではないか、と思うのだがいかがなものだろうか。

 ともあれ、ほとんど世界遺産ともいうべきこのばんえい競馬。何とか独立独歩で存続して行って欲しいと願わずにはいられない。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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