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フローラS、抽選馬が制す

  • 2003年04月28日(月) 20時28分
 27日の東京競馬場で行われた「第38回フローラステークス」は、何と14番人気のシンコールビーが競り勝ち、馬単25万6520円のJRA重賞最高配当記録を更新した。

 ちょうど今週は、月火の二日間にわたり、東西(中山と阪神)で今年度の抽選馬の配布が実施されるタイミングの良さ。申し込み後、抽選馬の選択権を獲得した馬主には、またとない吉兆となったはずだ。

 以前と違い、抽選馬は現在「ドラフト制」が導入されている。昨年を例にとると、まず全体で96頭の抽選馬が半数ずつ東西に振分けられ、それぞれ48頭がドラフトにかけられるわけだ。指名を受けるのはその中の40頭。予め指名順を決める予備抽選を行い、1位を獲得した馬主から好きな馬を指名して行くシステムである。

 48分の40頭。除外というか指名漏れが8頭出てしまうが、それらは後日公設の市場などで一般の希望者に向けて再販売される。どんな馬が人気になるかというと、やはり牡馬の好馬体ということになるのかも知れないが、それが必ずしも競走成績に直結しないところが馬の難しい部分でもある。

 日本軽種馬協会発行の機関誌「JBBAニュース」2002年5月号には、昨年の配布実績が一覧表で紹介されており、興味深い。それによれば、昨年の東組ドラフト1位はライブリーワン産駒の牡馬、2位がアジュディケーティングの牡馬、3位がマヤノトップガンの牡馬だった。そして西組は、1位がウォーニングの牡馬、2位がジョリーズヘイローの牡馬、3位がコマンダーインチーフの牝馬と、上位馬に牡馬が偏る傾向が顕著なのだが、因みに、フローラステークスを制したシンコールビーの指名順位はというと、西組の14位。奇しくもフローラステークスでの単勝人気と同じだった。

 昨年の配布馬の場合、市場での取引価格は下が300万円、上は1510万円と、かなりの開きがあり、シンコールビーの価格はその中でも安価に属する400万円だったのは皮肉である。必ずしも市場価格の安い馬が指名から外れやすいわけではないが、しかし一応の目安にはなっているようで、昨年の場合、最低価格の300万円の3頭のうち、2頭は指名から漏れた。

 だが、古くから言われているように、馬は走らせてみなければ分からないものだ。例えば、一昨年の配布馬の中からはタムロチェリーが阪神ジュベナイルフィリーズを制し、一気に注目を集めた。しかし、この馬の指名順位は西組の31位。市場での購買価格は400万円だった。

 これはいったいどうしたことか。単純に、抽選馬を希望する馬主や管理する調教師に見る目がない、などとは言えない。それどころか、血統や馬体、騎乗スタイルなどから総合的に判断し、与えられた順位の中で最良の選択をしているはず。にもかかわらずこの結果だということは、いかに走る馬を探し当てることが難しいことか、を端的に表わしているように思えてならない。

 なお、前述のJBBAニュースによれば、2001年配布の指名上位馬の競走成績も掲載されており、東西の上位指名3位までの計6頭は、配布後1年経過した段階でもすべて未勝利という結果になっていた。その中に私の生産したスカイノシアトルという牝馬も混じっていたのは、何という皮肉か……。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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