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静内二十間道路の桜並木開花

  • 2003年05月05日(月) 19時52分
 例年に比べると今年の連休はまとまった休日を取りにくい日取りとなり、そのせいなのか北海道でも屈指の桜の名所として知られる静内二十間道路も割に閑散としているのに驚いた。

 5月5日子供の日。生産牧場ではほとんどそれも仕事に潰されてしまう。折りしも種付けはちょうどピークを迎え、私の牧場でも、この日(運悪く?)二十間道路に面した某スタリオンセンターに行くことになってしまった。

 昨年も確か同じようなことを書いた記憶があるのだが、この時期、連休と桜の満開、そして晴天などが重なったら大変な事態になる。日高のたった一本しかない国道は大渋滞なのだ。苫小牧方面から静内、浦河を経由して十勝方面に抜ける人もいれば、その逆のコースを取る人も多い。いずれにしても、目的地の一つが静内の桜並木見物(花見)である。

 しかし、どうも今年はいささか様子が違っていた。連休最終日の5日現在、静内の桜は三分から五分咲きといったところ。満開にはまだ数日かかるようだ。そして、もう一つはこの道路一帯が駐停車禁止区域になってしまったことも大きいという。

 昨年だったと思うが、花見客が馬を驚かせて怪我を負わせ、裁判沙汰になった事件が発生した。その教訓からか、今年は並木の路肩に車を止め、そこでバーベキューを楽しむことができなくなってしまった。所定の駐車場はかなり奥まったところのため、そこからわざわざバーベキューセットを持参して歩いてくるのは至難の技。結局、車で通過するだけでは楽しみも半減といったところなのかもしれない。

 ただ、私たち牧場関係者にとっては、交通量の減少は何よりありがたいことだ。この一帯には、以前より種馬場が集中し、毎年この時期の種付けが頭痛の種だったのだから。現在、4ヶ所(南より、レックス、アロースタッド、日本軽種馬協会静内種馬場、静内スタリオンステーション)の種馬場で繋養されている種牡馬の総数は約75頭。ピンからキリまで様々とはいえ、これらの種牡馬たちが交配する繁殖牝馬の総数は大変な数に上る。何とか、連休だけは避けたいと生産者ならば誰しも考えるのである。

 辛うじて桜の満開とは重ならずに今年の連休も終ったのだが、ところで今年はどこの種馬場も種付け頭数の減少が顕著だと聞いた。生産地の不景気ぶりから判断するのならばそうそう生産頭数が増える要素はないのだが、それにしても予想以上に減っているというのである。

 いずれシーズン終了後、今年の種付け頭数が明らかにされることと思うが、特定の種牡馬だけに人気が集中しており、それ以外はどの馬も苦戦を強いられているという。

 それを裏付けるように、私の友人知人の牧場でも、廃業したり、あるいは今年度の種付けを断念したりという例が時々ある。そうなると、今度は種牡馬の種付け料収入が減少しひいてはそれがシンジケートの解散や用途変更に繋がってしまう。

 我が生産馬トウケイニセイも例外ではなく、すでにここ数年は種付け料収入で自身の預託料を賄えない状態が続いており、オーナーのポケットマネーで支えられているのが現状だ。苦戦を強いられているのは、主としてこういうクラスの種牡馬である。種牡馬も、せめて「自活」できなければかなり厳しい時代になったと言えるだろう。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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