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勝負師としての差

  • 2012年11月30日(金) 12時00分
 外国人騎手と地方出身騎手にあって、中央競馬の騎手にないもの。それは勝負への貪欲さと狡猾さではないかと思う。

 彼らは強引な違反すれすれのプレーをする。だが、それによって馬主や生産者が得る物は、とてつもなく大きい。ジャパンCの優勝賞金は2億5000万円。ジェンティルドンナの父ディープインパクトは、この勝利で日本リーディングサイヤーをほぼ手中に収めた。

 生産牧場のノーザンファームは、これでジャパンC3連勝。馬主はよりこの牧場の生産馬に群がることになるだろう。むろんジェンティルドンナと、母系の血統価値もハネ上がる。

 1、2着は同じ勝負服ではあるが、オルフェーヴルの父ステイゴールドは日高に売っている。生産牧場も同じ社台グループとはいえ追分ファームだ。岩田騎手は2週間の騎乗停止、浴びせられる批判と引きかえに、そのとてつもなく大きな物をノーザンファームにもたらした。それゆえに信頼が厚い。

 私はラフプレーが好きではないし、オルフェーヴルに勝ってほしいと願っていた者の一人だが、この勝負における貪欲さと狡猾さは否定しない。

 ただ、海外に比べると中央競馬は多頭数だし、週ごとに伸びのいい馬場が違う。ジャパンC当日は朝から内を突いた馬が伸び、外を追込む馬は苦戦していた。

 そこに今回の騒ぎが起きた。やっぱり日本は、「日本なりのお行儀の良さ」が必要かもしれない。第一、中央競馬の騎手はそう教育されている。こんなラフプレーが続けば、いずれ大きな事故が起こるだろう。

 とはいえ、馬に罪はない。何度も体がぶつかりながら、少しもひるむことなく最後まで伸びたジェンティルドンナには、ただただ脱帽するしかない。

 この日、東京競馬場には12万近くもの人が入った。オルフェーヴルが集客したものであることは、ジェンティルドンナの表彰式で拍手がパラパラでしかなかったことでもうかがえる。

 オルフェーヴルには有馬記念で勝ってもらおう。誰にも迷惑をかけない大外をぶん回し、ファンが見守る外ラチ沿いをゴールすればいい。そのほうがオルフェーヴルらしい。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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