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C.ウイリアムズ騎手(3)『調整ルームにびっくり…ユタカにも相談しました』

  • 2012年12月17日(月) 12時00分
ウイリアムズ騎手のインタビュー第3回、今回はウイリアムズ騎手の日本での暮らしぶりに迫ります。競馬前日から調整ルームに入らなくてはいけないという、日本競馬特有のルール。外国人ジョッキーの意外な本音とは。そして、友人との爆笑・大阪珍道中も大暴露します。(12/10公開Part2の続き、通訳:木村孝也氏)

赤見 :馬場やゲートインなど、日本と海外の競馬の違いを教えていただきましたが、他にも違うことはありそうですよね。日本は主催者がJRAとNARのふたつありますが、オーストラリアは?

ウイリアムズ :分かれているのは日本だけなんですよ。オーストラリアもフランスもみんなひとつなんですけど、オーストラリアはヨーロッパみたいにレベルで分けているのではなくて、地域で分けてるんです。日本で言ったら北海道から九州までの全部の競馬場を、トップジョッキーが順番に回るんです。

赤見 :それはすごい。見てみたいです。

ウイリアムズ :いつオーストラリアに来る(笑)?

おじゃ馬します!

「世界一の調整ルーム、イチバン!」

赤見 :えっと…(笑)、でも、ぜひ行ってみたいです!! 「調整ルーム」も日本特有だと思いますが、このルールは面倒くさくないですか?

ウイリアムズ :WSJSの時って、リッツ・カールトンなど良いホテルを用意されて、調整ルームの替わりにそういうホテルに入れてもらえるんですよ。それはもう、世界一の調整ルームです。イチバン! 普段は競馬場の調整ルームに入ります。それは他の国にはないですけど、僕は海外から来ていますから、外にファミリーがいるわけでもないですし、時間もありますから。調整ルームに入ると、他のジョッキーとしゃべったり、次の日のレースにも集中できます。というのも、JRAの競馬っていうのは週末だけじゃないですか。

赤見 :はい。

ウイリアムズ :その週末だけの競馬に集中しないといけないので、そういう集中する場を持てるっていうのもありますし、あとは、体重に難のあるジョッキーだったらそれを落とす場でもありますしね。実際に、WSJSで呼ばれて良いホテルに泊まれるのに、調整ルームに入るジョッキーもいますから。だって、リッツ・カールトンにはサウナがないですから(笑)。

赤見 :あはははは(爆笑)。さすがの高級ホテルも、調整ルームに勝てないところがあるんですね。

ウイリアムズ :そうそう。それに、日本の調整ルームってきれいですからね。でも、残念ながら調整ルームの枕は最悪…。最初に日本に来た時に「この枕でよく寝られるな」って思いました。(武)ユタカにも「どうやって寝てるの?」「この枕使ってる?」「ひょっとして枕持ってきてる?」っていろいろ聞きました。日本の調整ルームは最高だけど、枕だけは許せない。

赤見 :それは辛いですね…。

木村:以前、競馬の当日の朝に「首が痛い」「背中が痛い」って言っていたことがあったんです。その時は枕の話を知らなかったので、寝違えたのかなって思ったら、やっぱり枕なんですよね。それで、翌日起きて体が痛いことがあるみたいです。もちろん、みんながみんなではないでしょうけどね。

赤見 :でも、騎手にとって体のメンテナンスは大事ですから、重要な問題ですね。この記事をきっかけに、改善されたりしたらいいのですが。日本でホームシックにはならないですか?

ウイリアムズ :今はスカイプがあるでしょ。それで毎日家族と会話しています。

木村:彼は本当に家族思いですよ。毎日必ず奥さんとスカイプで会話していますから。

赤見 :素敵〜。まさに騎手の鑑ですね。オフの時はどうやって過ごしていらっしゃいますか?

ウイリアムズ :本当に休みだったら、必ずどこかに旅行に行きますし、オフで時間があるときは、バックパッカーみたいにうろちょろうろちょろ。大阪でも、難波から梅田まで歩きます。マッスグ、ミギ、ヒダリ、マッスグ…トコトコって。

赤見 :アクティブですね〜。

ウイリアムズ :今日もオーストラリアから友達が来たので、観光で「大阪城に行こう!」って、タクシーで行ったんです。そうしたら、大阪ガスに連れて行かれました。

赤見 :???

ウイリアムズ :「オオサカキャッスル」「オオサカカス」「オオサカガス」…

赤見 :あはははは(爆笑)。

ウイリアムズ :運転手が「大阪ガスにつきました」って言うので、「ノー! オオサカキャッスル!」って。まあ、仕方がないので、お金を払って降りました。だから今度はこうやって言います、「オオサカジョー」って。

赤見 :それがいいですね(笑)。かなり日本で観光をされているんですね。そうすると、ファンの方とも会っていそうですね。

木村:会っていると思いますよ。一緒に行動していても、それはよく感じます。競馬の前後も、空港でファンの方が待っているんですよ。

おじゃ馬します!

丁寧なファンサービスに感動…

ウイリアムズ :面白かったのが、ファンの人が僕じゃなくて木村さんに「サインください」って(笑)。

木村:そうそう。なんで僕のサインなのかって。それこそ「アリエヘン」ですよ(笑)。

ウイリアムズ :あはははは(爆笑)。でも、そういうのって、ファンの人の競馬に対する情熱が伝わってきますよね。

赤見 :そう言えば、ウイリアムズ騎手が競馬の日に最終レースが終わってから、待っていたファンの方全員にサインをされていて。すごく時間をかけてされていたので、「さすがだな」と思いました。最後にファンの方々が拍手で「ありがとう」って言って。あんな光景、初めて見ました。

ウイリアムズ :中山の時かな? それは父が、「必要なことだ」って教えてくれたんです。例えば、友人がテニスのコーチをしているんですけど、テニスだったら1対1の試合で、負けた方はすぐ帰っちゃって、勝った方がサインするんですよね。でも、競馬だったら、そういうシチュエーションがあったら、いつでもサインはするべきだなと思っています。

木村:日本の競馬会は、「ファンの方々の為に公正な競馬を…」というのが基本ポリシーですが、海外はファンより馬主だったり調教師優位な部分があります。外国人の場合、その辺が理解し難い事もあるのですが、彼の場合は「みんなからの情熱が伝わってくるから、そのために自分もちゃんとしないといけない」って日本的な考え方に合わせようとしてくれるんです。そこが彼の良いところでもあるんですよね。(Part4へ続く)

◆次回予告
次回はウイリアムズ騎手インタビューの最終回。今年の凱旋門賞では、オルフェーヴルがあと一歩で世界に手が届くという2着。そして先日は、ロードカナロアが日本馬初の香港スプリント勝利。世界レベルの活躍が目立ってきた日本競馬を、世界を知る名手はどう見ているのでしょうか。公開は12/24(月)12時、お見逃しなく。

◆クレイグ・ウィリアムズ
1977年10月23日生まれ、オーストラリア出身。メルボルン地区を拠点とする騎手。93年見習い騎手としてデビュー。00年、オーストラリアンオークスを制し、GI初勝利。06年リーディングジョッキーに輝く。オーストラリアの他、イギリス、ドバイ、香港でも騎乗。06年にWSJSで初来日、翌07年同シリーズを優勝。10年に短期免許で来日。短期免許2日目に、ジャガーメイルで天皇賞・春を制覇。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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