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チェルトナムゴールドCの見どころ

  • 2013年03月13日(水) 12時00分
 英国は今、障害シーズンのクライマックスを迎えようとしており、今週はそのハイライトとも言うべきチェルトナムのフェスティヴァル開催(3月12日〜15日)が施行されている。

 4日間でハードル、スティープルチェイスあわせて12のG1を含む20の重賞が行われる中、頂点に君臨するのが15日(金曜日)に行われるスティープルチェイス界の最高峰「G1チェルトナムゴールドC(芝26F110y、障害数22)」である。

 今年エントリーしているのは12頭だが、近年にない混戦模様で、少なくとも4頭以上の馬に優勝の大きなチャンスがあると見られている。

 ブックメーカー各社が3.5〜4倍のオッズを掲げて1番人気に推しているのがボブズワース(騸8、父ボブバック)だ。スティープルチェイサーとしてのキャリアはわずか5戦で、ハードルとナショナルハントフラットを合計しても11戦しかしていないという馬だが、その中身は濃い。

 チェルトナムフェスティヴァルは、11年がG1スパノーヴィスハードル(芝24F)、12年がG1RSAチェイス(芝24F110y)に出走して、いずれも勝利を収めている。この2戦を含め、チェルトナムは4戦4勝と、このコースを滅法得意としている馬だ。

 今季初戦となったのが、12月1日にニューバリーで行われたG3ヘネシーゴールドC(芝26F110y)で、ここを無事白星で通過。その後はここ1本に的を絞ってじっくり調整されてきた。

 当日予想されているSoft(=重馬場)のトラックコンディションは、ボブスワースがこれまで経験したことのないものだが、前走のヘネシーGCの際も発表はGood to Softだったものの相当にぬかるんだ状態で、あの馬場をこなせるならば大きな懸念材料にはならないと見られている。

 各社4.33倍から5倍のオッズを掲げ、差のない2番人気となっているのがサーデシャン(騸7、父ロバンデシャン)だ。この馬もまた、スティープルチェイスのキャリア8戦、ハードル時代の3戦を加えても障害は11戦しかしていない馬である。

 平地では4戦未勝利に終わった同馬だが、4歳春にハードルに転向すると3連勝。そしてスティープルチェイスに転向した昨シーズン(11/12年)も、チェルトナムのG2ゴールデンミラーノーヴィスチェイス(芝20F)を含めて5戦5勝の戦績をマーク。障害界に新星登場と騒がれる存在となった。

 ところが、今季初戦のG2ジョンダーカンメモリアル(芝20F)でフレメンスターの2着に敗れて障害における連勝がストップ。続くG1レクサスチェイス(芝24F)では勝ち馬とわずか3/4馬身差だったはいえ4着に敗退し、評価が急降下することになった。

 そのサーデシャンが捲土重来を期して出走したのが、2月9日にレパーズタウンで行われたG1愛ヘネシーゴールドC(芝24F)で、ここではフレメンスターを2着に退けて優勝。再び評価が上がることになった。

 この馬もまた、チェルトナムは2戦2勝と、このコースを得意としている。

 各社4.5倍から6倍のオッズを掲げ、これも差のない3番人気となっているのがシルヴィニアーココンティ(騸7、父ドムアルコ)だ。

 4歳春にハードラーとしてデビューすると、2つの重賞を含む5連勝をマーク。将来楽しみな若手が出てきたと注目されたが、6戦目となったチェルトナムのG2インターナショナルハードル(芝17F)で3着に敗れて連勝がストップ。続くG2キングウェルハードル(芝16F)でも4着に敗れ、尻つぼみの成績で10/11シーズンを終えた。11/12シーズンからスティープルチェイスに転向し、このシーズンの成績は5戦2勝。エイントリーのG2マイルドメイノーヴィスチェイス(芝25F)を13馬身差で制したのをはじめ2重賞を制したものの、G1には手が届かず、高い資質を認められながらも戦線の最前線に立つまでには至らなかった。

 そのシルヴィニアーココンティがひと皮剥けたのは今シーズンに入ってからだ。初戦のG2チャーリーホイールチェイス(芝25F)に続き、ヘイドックのG1ランカシャーチェイス(芝24F)でもロングランらを退けて勝利を収めてG1初制覇。2月9日にG2デンマンチェイス(芝24F)も危なげない競馬で制し、3連勝で大一番に臨むことになった。

 ここへ来て評価急上昇の同馬だが、チェルトナムの経験が一度しかなく、しかも、本格化前だったとはいえ敗戦を喫している点が、いささかの懸念材料と言われている。

 ここまでご紹介した3頭が、いずれも新興勢力の部類に属する馬たちであるのに対し、既成勢力の代表と言えるのが、各社6.5倍から7倍のオッズを掲げて4番人気に推しているロングラン(騸8、父カドゥーダル)だ。

 11年のこのレースの勝ち馬であるロングラン。連覇を狙った12年のこのレースは3着に敗退。更に今季初戦となったG1ランカシャーチェイス(芝24F)でも、今が伸び盛りのシルヴィニアーココンティの2着に敗れ、「世代交代か?!」との声が高まることになった。

 更に、結果的に勝利を収めたものの、その内容に疑問符が付くことになったのが、12月26日にケンプトンで行われたG1キングジョージ6世チェイス(芝24F)だった。最終障害から数えて3つ目の障害を飛越した段階で、鞍上ウォーリーコーヘンが追い出しにかかると、抜群の反応を見せたロングランが一気に加速。後続に5馬身ほどの差をつけ、この馬の楽勝かと思われた。ところがそこからロングランは、突然レースへの興味を失ったよう左右に蛇行しつつスピードを緩め、あっと言う間にキャプテンクリスの反撃を許して、2番手に後退したのである。最終障害飛越後、我に帰ったかのように再加速したロングランは、2馬身はあったキャプテンクリスとの差を再逆転して首差の勝利を収めたのだが、この内容を「スムーズな競馬が出来なくても勝利を収める、さすがの実力」と捉えるか、「一筋縄ではいかない馬で、大レースで全幅の信頼は置けない」と判断するか、評価が分かれることになったのだ。

 管理するN・ヘンダーソン師は15日のロングランに、集中力を高める目的で、シープスキン・チークピーシズを着用させることを決断。この「勝負手」が、結果的にどちらの目に出るかは、やってみなければ判らないというのが正直なところだ。

 以下、昨年のチェルトナムフェスティヴァルではG1RSAチェイス(芝24F110y)に出走にしてボブスワースの2着だったファーストルーテナント(騸8、父プレゼンティング)が各社9倍から11倍のオッズを掲げて5番手評価。一昨年のチェルトナムフェスティヴァルでG1アークルチャレンジトロフィー(芝16F)を制しているキャプテンクリス(騸9、父キングズシアター)が各社13倍から17倍の6番手評価となっている。

 デンマン、コートスターといった重量級の横綱が現役を退き、シーズンの総決算と言いつつ、今後のスティープルチェイス界の趨勢を占う意味を持つチェルトナムゴールドCとなりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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