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ドバイワールドCなどG1・3競走のレース展望

  • 2013年03月20日(水) 12時00分
 ドバイワールドCナイトの開催が来週末(30日・土曜日)に迫っている。今週はまず、日本馬の出走はないものの、好メンバーが集まったG1・3競走の展望をお届けしたい。

 まずは、芝1000mのG1アルクオーツスプリント。

 19日の段階では出否未定なのだが、出てくれば中心となるのはマイク・ドゥコック厩舎のシェイシェイ(セン5、父ナショナルエンブレム)だろう。南アフリカ産馬で、2歳シーズンの秋に祖国でデビュー。3歳秋にG3マンノウォースプリント(芝1100m)で重賞初制覇を果して出世の糸口をつかみ、3歳シーズン最終戦となったG1ゴールデンホースカジノスプリント(芝1200m)でG1初制覇を達成。4歳秋にもG1コンピュータフォームスプリント(芝1000m)を制して、南アフリカにおけるトップスプリンターの地位を築いた。その実力が如何なく発揮されたのが、ドバイ2戦目となった3月9日のLRメイダンスプリント(芝1000m)で、先行馬群から残り300m付近でスタンド寄りに進路をかえると、桁違いの末脚で抜け出し、2.1/2馬身差の快勝を演じている。

 2番手は、昨年のこのレースの2着馬ソールパワー(セン6、父カイラキー)か。昨年のロイヤルアスコットではG1キングズスタンドS(芝5F)で3着に入り、欧州短距離界の安定勢力としての力を誇示。今季初戦となったLRメイダンスプリントでも2着に入り、仕上がりの順調さと、コース適性の高さを示している。

 この路線の水準が高い香港から、香港スピードシリーズ初戦のG1センテナリースプリントを連覇しているイーグルレジメント(セン5、エルモクシー)が参戦する。昨年もこのレースにエントリーし、現地まで赴きながら直前で出走取り消しの憂き目にあっているだけに、陣営も今年こその意気込みに燃えているはずだ。

 アジアの仲間としては、シンガポールから遠征するミスタービッグ(セン4、父イルーシヴクオリティ)の健闘も期待したいところだ。

 続いて展望する、芝1800mのG1ドバイデューティーフリーは、確固たる主役が居ない混戦模様だ。

 実績最上位は、スーパーサタデーのG1アルマクトゥームチャレンジラウンド3(AW2000m)で大敗を喫してG1ドバイワールドC(AW2000m)参戦を断念し、こちらに廻って来たリトルマイク(セン6、父スパニッシュステップス)だ。G1BCターフ(芝12F)とG1アーリントンミリオン(芝10F)を同一年に制した初めての馬という勲章は、燦然と輝いている。ただし、北米芝路線の水準は高くなく、近年ドバイの芝のレースに挑んだ北米調教馬の成績は芳しくない。例年に比べるといささか格落ちの顔触れとなった今年のこのレースだが、それでも、欧州、豪州、南アフリカからG1勝ち馬が参戦している中で、北米調教馬を高く評価するには躊躇いがある。

 中心となるのは、ニュージーランドから遠征してくるオーシャンパーク(牡4、父ソーンパーク)ではないだろうか。4歳を迎えた今季、豪州におけるこの路線のチャンピオンを決めるレースと言われるG1コックスプレート(芝2040m)を含めて、シーズン初戦からいきなりG1・4連勝。その後2つの敗戦を挟んで、3月9日にエラズリーで行われたG1ニュージーランドS(芝2000m)を3馬身半差の快勝し、5度目のG1制覇を果してドバイに乗りこんでくる。調整に齟齬がなければ、北半球の馬たちをまとめて負かす力のある馬と見る。

 欧州勢の筆頭は、仏国から遠征するジオフラ(牝5、父ダンシリ)か。ニューマーケットのG1ファルマスS(芝8F)の勝ち馬で、昨年暮れには香港に遠征してG1香港カップ(芝2000m)で2着になっているから、遠征競馬での強さも実証済みだ。

 英国調教馬で、昨年夏に北米に遠征してG1ビヴァリーディーS(芝9.5F)を制しているアイムアドリーマー(牝6、父ノヴェーア)も、アウェイでの戦いに強い馬だ。

 19日の段階では出否未定で、出てきても取捨選択に迷うのがイグーグー(牝5、父ガリレオ)だ。南アフリカで史上初の牝馬3冠を達成しただけでなく、G1ダーバンジュライ、G1J&Bメットという南アフリカの2大競走をいずれも制している超大物が、ドバイに渡ってからの2戦でいずれも淡泊なレースを見せて敗退。管理するのが南アフリカの魔術師と言われるマイク・ドゥコックだけに、本番へ向けてどんな仕掛けを用意しているか不気味ではあるのだが、近走を見る限り南アフリカで走っていた頃の出来にはなさそうで、巻き返しは困難と思われる。

 ドバイワールドCナイトのメイン競走となるG1ドバイワ−ルドC(AW2000m)に、残念ながら今年は日本馬の出走がない。

 中心となるのは、ゴドルフィンのハンターズライト(牡5、父ドバウィー)であろう。今年に入り、G2アルマクトゥームチャレンジラウンド2(AW1900m)、G1アルマクトゥームチャレンジラウンド3(AW2000m)を、いずれも危なげのない競馬で連勝。昨年秋にG1ローマ賞(芝2000m)を制して芝のG1勝ち馬となっていたのだが、ここまで5戦4勝とオールウェザートラックも滅法得意としている。

 今年、そうそうたる顔触れで臨むのが、北米チームである。

 前年に続いての遠征となるのがロイヤルデルタ(牝5、父エンパイアメーカー)だ。昨年、一昨年と2年連続でG1BCレディースクラシック(ダート9F)を制し、牝馬チャンピオンの座に輝いている女傑である。ことに、それまで見せたことのなかった「逃げる」スタイルで完勝した12年のG1BCレディースクラシックは圧巻で、ここへきて更に充実していることが窺える。ポイントは、メイダンのメイントラックに敷設されたタペタへの対応になろう。昨年のこのレースでは9着に大敗しているが、敗因が馬場にあったのだとしたら、同じ轍を踏むことになる。

 北米チームの一角には、一昨年のG1ケンタッキーダービー馬アニマルキングダム(牡5、父ルワーデザニモー)という、ロイヤルデルタに負けず劣らずのビッグネームも加わっている。昨年秋、8か月半の休み明けだったG1BCマイル(芝8F)で2着に突っ込み、改めて潜在能力の高さを示した同馬。3歳時にはオールウェザーの重賞制覇もあり、陣営は早くから「ここ目標」を宣言していた。壮行レースとなったG1ガルフストリームパークターフH(芝9F)では2着に敗れたが、ややちぐはぐなレースをした上に、負けた相手がポイントオヴエントリー(牡5)では致し方なく、まずは万全の体調で大一番に臨めそうだ。タペタ適性が高ければ、好勝負必至だろう。

 北米チーム3本目の矢は、オールウェザーのG1・3勝の実績を誇るデュラハン(牡4、父イーヴンザスコア)だ。同厩のリトルマイクとともに早めにドバイ入りし、スーパーサタデーのG3バージナハール(AW1600m)に出走したものの、11着に大敗。これが、現地入り入りして1週間で迎えた競馬ということで「調整不足」が敗因ならば、本番での巻き返しが期待できるが、タペタが合わなかったのだとしたら、本番も前走と同じような結果になる恐れがある。

 北米勢にとっては、いずれにしても、タペタへの対応が大きな鍵となりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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