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「今は失敗したっていいんだよ」松山騎手ご指名対談〜藤岡佑介騎手編(5)

  • 2013年05月01日(水) 18時00分
 藤岡佑介騎手を迎えてのご指名対談も、いよいよこれが最終回。「精神的な弱さが今後の課題」という松山騎手に、はたして佑介騎手はどんなアドバイスを贈るのか。「気持ちの切り替え」「本物の自信」「自分だけのカラー」などなど、今回も重厚なキーワードをもとに、熱いトークを展開します!

■“自信”は勝手に湧いてくるものではない

松山 先ほどご自分で「精神的な強さが足りない」っておっしゃってましたが、僕からすれば、全然そんなふうには見えないです。僕なんて、“1番人気でまた負けた…”って落ち込んでばかり。

佑介 『今週も全然勝てなかったんですよ〜。もうダメっす…』とか、いつも言ってるもんな(笑)。

松山 僕も相当、メンタルは弱いほうだと思います。しかも、その弱さを見せてしまう。よくないですよね。

佑介 いや、弘平ちゃんは、“また負けちゃいましたよ〜”とか、言葉に出して言っているだけいいと思うよ。実際に言葉にすることで、気持ちって楽になることがあるから。

松山 そういうものですかねぇ。前に福島で佑介さんと一緒に乗ったとき、僕が先生にすごく怒られてたこと、覚えてます?

佑介 ああ、そんなこともあったね。

松山 あのときも“ああ、やってしまった…”ってすごく落ち込んで、次のレースにまで影響してしまって。僕、切り替えが遅いんですよね。そのあたりも、今後の課題です。

たとえ負けても仕方がないって思えるんじゃないか

たとえ負けても仕方がないって思えるんじゃないか

佑介 僕もどちらかというと、切り替えられないほうだったよ。それについて、いつも“なんでなんだろう…”って考えてたけど、結局、そのレースに対してイメージを持って乗ってないから、負けたときに“ああ乗っておけばよかった、あそこでこう動いておけばよかった”ってなる。だから切り替えられないんだよね。でも、“こういう競馬をしよう、こういうふうに乗ろう”っていうイメージを描いた上でレースに臨んで、できるだけそのイメージ通りに乗ることができれば、たとえ負けても仕方がないって思えるんじゃないかと。

──切り替えがうまくいかないのは、イメージするという過程が足りないのではないかと。

佑介 はい。考えないで乗れっていう人もいるし、それは人それぞれなんでしょうけど、僕の場合は、考えて乗るべきだと思うんですよね。先週も、メイケイペガスターで負けて(若葉S8着)、前の僕だったら絶対に落ち込んでいたと思うけど、“こういう競馬をしよう”ってきちんと考えていたから、すぐに切り替えられた。結果的に、引っ掛かって負けてしまったけど、やろうと思ったことを全部やっての結果だから、「申し訳ありません。自分が悪いです」って、今の自分の実力として受け止めることができた。

松山 それはすごいですねぇ。

佑介 さっきも言ったけど、以前の僕なら間違いなく引きずっていたと思うよ。でも今は、あの馬に出会わなければ経験できなかったことだと思える。やっぱり、自分でも変わったのかなって。

松山 やっぱりプラス思考でいかないとダメですよね。僕もプラスに考えよう考えようとしてるつもりなんですけど、心のどこかでマイナス思考になってしまっているというか。

佑介 弘平ちゃんは大丈夫だって。一番心配なのは、自分のなかにため込んでしまう人、それから冷めてしまっている人だよ。

松山 たしかに僕、“またダメでしたぁ…”って言いながら、心のなかには“なにくそ!”っていう気持ちがすごくあります。

佑介 あのね、この前“自信”について考えたんだけど、最初に自覚する“自信”て、大抵、自分のなかから湧き上がってくるものなんだよ。結果が出てきて、“俺はやれる!”みたいな感じで勝手にね。でも当然、いろんな壁にぶつかって、途中で心が折れる。

松山 はい。その繰り返しのような気がします。

佑介 “自分を信じる”って書いて自信だから、たしかに自分のなかから湧いてこなくちゃいけないんだけど、でもね、それは決して勝手に湧いてくるものではなくて、周りの人に「お前はこういうところがいい」とか「お前なら大丈夫」とか認めてもらって、初めて湧いてくるものなんじゃないかなって。そうやってついた自信はなかなかなくならないと思うから、自分を信じるためにも、周りの人を大事にしなくてはいけないって思うんだ。そういうことに気づくためにも、今の弘平ちゃんみたいな時期は大事だと思う。だから、失敗したっていいんだよ。

だから、失敗したっていいんだよ

だから、失敗したっていいんだよ

松山 はい! なんか佑介さんに言われると、頑張れる気がします。

佑介 あと、弘平ちゃんはもっと、自分のカラーを出していったほうがいいと思う。なんかね、まとまってしまっているというか、まるで自分を見ているような感じがして。

松山 そういえば、去年の暮れにこのコーナーの忘年会をやったとき、“自分のアピールポイントは?”っていう質問に、僕だけ答えられなかったんですよ。

──そうでしたね。川須くんはスタート、高倉くんはステッキワークって答えて。

佑介 ああ、彼らはちゃんと意識してやってましたからね。弘平ちゃんだって、今から見つけていけばいい。全然遅くないよ。たとえば、こういう取材のときに、積極的に言葉にして自分のイメージを作り上げていくのもありだし。

松山 なるほど。やっぱり言葉にするって大事なんですね。今日はホントにいいお話をたくさん聞けて、改めて頑張ろうって思えました。ありがとうございました! 佑介さんとお話しすると、なんていうのか、見えてくるものがあるというか。でも佑介さん、いなくなっちゃうんですよねぇ…。

佑介 うん、そうだよ。

松山 そのあいだ、誰に相談すればいいんだろ〜(泣)。

【次回のキシュトーーク! は?】
 秋山真一郎騎手を迎えての、ご指名対談第4弾。ホストは国分優作騎手です。ひょんなきっかけから言葉を交わすようになったというふたりの、異色対談をお楽しみに!

元祖「キシュトーーク」のレギュラー陣、国分恭介、国分優作、松山弘平、川須栄彦、高倉稜を中心に、栗東・美浦・地方からも幅広く、これからの競馬界を担うU25の若手ジョッキーたちが登場します!

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