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『今後の戦略と、われわれができること』“外れ馬券は経費か否か”有識者座談会(3)

  • 2013年05月27日(月) 12時00分
5/23に判決が言い渡された“外れ馬券は経費か否か”裁判の、『競馬有識者緊急座談会』第3回。毎年2500億円ものお金を国庫に納めている競馬会。本当に国のためになるには、どんな方法が最良なのか。須田鷹雄氏が自身の見解を語ります。(5/20公開Part.2のつづき)
※座談会の収録日は、判決前の5/1です。判決を受けての各々の感想と見解を、本文末尾に掲載しています。判決の詳細はこちらから

赤見:この裁判を「netkeiba.com」でニュース化した時に、掲示板に「自分たちも何かできないか」というファンの方の書き込みがたくさんあったそうです。そういうエネルギーはどこにぶつけたらいいんですかね。

斎藤:今回の件は、何に対して署名をしたらいいかというのが難しいですよね。普通なら裁判の署名って、被告を助けるとかの署名ですけど、今回は争点がそうではないから。

野元:全然違いますからね。

須田:やっぱりみんな何かして戦いたいとは思ってるけど、戦い方が分からないというのもあるんでしょうね。

野元:本当なら、弁護側がどういう考え方なのかが分かればいいんですけどね。署名という組立てをするんだったら、例えば「馬券非課税を立法しましょう」というのが、一番シンプルかつ有用だと思います。もう1つ考えなきゃいけないのは、この事件での本丸は行政訴訟ですが、兵糧(訴訟費用)が続くのだろうかという点は、非常に心配ですよね。

須田:だとすれば、兵糧を供給する募金をする。それは1つの手かもしれないですね。それをJRAがやるわけにはいかないですからね。

赤見:JRAとしては3連単とかWIN5とか高額配当馬券を作って、こういう税金の問題が起きる予見というのは?

野元:法改正は、今世紀に入ってからもう3回あったんですが、実はその都度、課税について何も言っていないわけではどうもないらしいです。事が動かなかったのは、「今はその段階じゃない」とかそういう意味だったと思われますが、少なくとも問題意識を持っていなかったわけではないようです。

赤見:そういう意味では、この裁判でクローズアップされたことで。

須田:結局、宿題を先送りしていたら、どえらい形で大砲を打たれたということですよね。ここまでの経緯は仕方ないとは思うんですよ。寝た子を起こすなという作戦できたことに関しては悪くない。ただ、起きちゃったものをまた寝てくれないかなと待ってる今のやり方はどうかと。

野元:もう寝てはくれないですからね。現に僕の周辺でも、PATを止めたという人がいましたから。

おじゃ馬します!

競馬産業の核心に触れる議論が続く

須田:僕は、この問題は競馬ファンが半世紀にわたって社会からいじめられてきたことの集大成的なテーマだと思います。

野元:そういう気はしますね。結局、カジノもそうだと思うんですけど、官庁同士で調整しても、これは絶対にできません。そこで、政治が「えいやあ」でやるのですが、政治家の調整ですから、足して2で割るとか、ざっくりした形になる。そこで、既存の制度や慣行とのズレとか、ノイズのような要素が現れがちです。他の業種とか様々な方面に波及効果が及ぶ可能性があるので、政治的な決断がないと動かない話をどこまで常識に折り合った線にとどめるか。

赤見:でも、競馬会はかなりのお金を国庫に入れているわけじゃないですか。

須田:落ちてきたとは言え、毎年2,500億円を入れているわけですからね。それが急になくなったら、インパクトはあるでしょうね。競馬ファンではない人まで、おしなべて2,000円ずつ余計に取られるわけですよ。だから、競馬がなくなったら「競馬をやらない人が金銭的に損をするんですよ」ということは周知してもいいと思います。

あと、どうしてもわれわれは、関係のない人間が酷税を課されているときに無関心でいるわけです。タバコを吸わない人なら、タバコの値段がどれだけ上がったって「知ったこっちゃない」と思ってる。

斎藤:競馬をやらない人にとって、この件はどうでもいいことだから、味方にはなってもらいづらいですね。

須田:ただ、タバコは値上がりして本数を減らしても、味は同じです。でも、競馬で理不尽な酷税って、実質的な控除率が上がるという話じゃないですか。控除率が上がるとタバコの味がしなくなるのと同じなわけですよ。

高額払戻が当たった人は、例えば1億円当たった人には諦めて2500万円は払ってもらうと。まあまあ人間、7500万円儲かったという高揚感があれば、ぎりぎりで生きていけるわけです。でも、PATで普通の馬券を反復的に買っているだけの人は違いますし、ましてや現金投票でも源泉をかけろという話が始まったら、これはもう「味がしない」っていう話で、よそに流れちゃうわけですよ。

変な網を掛けて国庫納付金を痩せさせるよりは、1回この問題で競馬ファンの気持ちをシュリンクさせたのを逆に利用して、堂々と馬券が当たっていい時代になったという解放感で馬券の売上低減を止めた方が、最終的には国庫としても得なわけです。

赤見:マスコミはこの件に関してあまり踏み込んでいないですが、それは?

野元:まず、理解するチャンネルが不足していると思います。もう1つは、近年、多くのメディアが国税からの圧迫をひしひしと感じている状況もあります。

須田:どうするのがいいのかということをみんな計りかねている。それとやっぱり、扱い方を間違えると競馬をつぶしかねないテーマですから、明らかに「これだな」という図面ができるまで、みんな自分の責任では騒げないというところがあって。僕も「原稿に書かない書かない」と言われるんですけど、やっぱり気軽には書けないですよ。

あとは、JRAがどうしていきたいのかが見えないと、勝手に理想を言っていても仕方ないし、絶対に通らないような要求を言っても仕方ない。もう1つは、競馬をやる人間は納得するけど競馬をやらない人間が誰も納得しないようなところを掲げても勝てないと思うんです。タバコ吸う人と吸わない人の間には、価値観の差が相当ありますよね。

赤見:でも、現金でやるようになったら、他の公営競技も他人事じゃなくなりますよね。

須田:政治作用で味方に付け得ると僕が勝手に考えているのは、例えば維新の会です。「カジノだ、カジノだ」と言っていますけど、もしカジノを日本で導入するとしたら、当然基準は競馬と同じということになりますが、いわゆる「ハズレ馬券は経費にならない」式では、カジノは成立しないので。

赤見:そうなんですか?

須田:例えばバカラで100万円置いて負けました。次のプレーで100万円置いたら、今度は勝ちましたと。さっき負けていても、今のプレーで出た100万円に課税という話になるわけです。そんなことが実際にできるかって言ったら、……実はカジノのほうが容易なんですよ(笑)。カジノはアイ・イン・ザ・スカイ(監視カメラ)があるでしょうと。さらに最近はi-tableという、カードの磁気情報を読んで自動決済できるシステムもあるので、そういったものとプレイヤーズカードを組み合わせれば、プレイ履歴は完全に把握できます。結果として、のべ1億円回して5000万円損した人に2億円の課税もできるような話になってしまいます。

だから、このままカジノを作ったらひどいことになりますよ、と持ちかけたいですね。とりあえず最悪でも「本当に儲かった金額」に対する課税でしょうと。

野元:そうかもしれないですね。

須田:ましてや、公営競技はガンガン課税してカジノ非課税なんてありえないでしょうと。しかも、競馬って控除率で25%取られても見た目の配当が大きいときがあるから、まだ生きていけるんです。気持ちの上で。

でもカジノは、例えばバカラのハウスエッジは1%台ですし、ブラックジャックでベーシックストラテジーを守らず雑に打っても3〜5%くらいです。一方で当たる場面の倍率は2倍がメインの低倍率。これで税金がのしかかったらもう、体で感じるレベルの影響があります。

しかもカジノの売上は、ごく一部のハイローラーが売り上げの大半を占めるわけですよ。そこで、大阪の国税と同じに解釈してやったら、ワンプレーごとに勝った時だけ税金を取って、さっき負けたのは知らないっていうことの繰り返しですよ。それでカジノをやろうと思ったら、絶対に成立しません。これ、競馬よりも成立しないですよ。

赤見:カジノをやるんだったら、競馬と同じようなやり方を適用してもらわないと。

須田:そう言ったら、「それは困る」という政治家が出てくるわけです。そこはコミコミで、最終的に国家財政に寄与するのはどういうやり方ですかという観点で決めましょうよと言って、彼らも味方に付けていかないと。

斎藤:これでも、非課税という話を進める段階になった時に、控除率が25%というのはありえないですよね、多分。

野元:そこが問題なんです。でも、とりあえず言うしかない。

おじゃ馬します!

控除率の問題をホワイトボードで解説

須田:お客さんは、控除率が上がるとなると文句を言うけど、JRAプレミアムのように下がる話にはさほど感謝しない(笑)。だから難しいけど、今後どのみち控除率に傾斜をつけるという話は出てくるでしょう。例えば3連単とWIN5は30%にするけど、枠連やワイドは20%にするとか。その時にどさくさで非課税をセットにするというのは、ひとつの戦略かもしれませんね。

多分ね、3連単とWIN5の控除率30%は、体では分からないと思いますよ。3連単で12万円というのと11万4000円って、分からないじゃないですか。

野元:3連単って特に、この程度の組み合わせなら何倍とか、相場が見えない馬券ですよね。

須田:控除率に傾斜をつけて、実質的な控除率増というのはできるし、その方が僕は、競馬産業の延命のためにはいいと思っているんです。単にお客さんにおもねって「控除率を下げろ」なんて書く人もいますよ。いますけど、競馬がつぶれたら元も子もないだろうということを考えたら。

野元:現実にJRAは、税の議論とは別個に、どの賭け式を何%にするか、今考えています。あと1、2年の間には何らかの方向が出てくるはずです。実は昨年も法改正がありましたが、これは生産界向けの助成事業が5年で期限切れとなるため、更新するというのが最大の目的でした。従って、次のタイミングがいつになるかも、大体分かっています。

須田:その時に「他のお土産をつけてくれ」という話にするのもいいでしょうね。

野元:そうです。その時に今の控除率の話と絡めて。控除率自体は、今は主催者が決められるということになっていて、法律事項では既にないわけですが。ともかく、次の法改正がまた数年後にあるので、そこで今の話を踏まえて税金に関しても、競馬産業にとって望ましい方向性を、どうやって出していくかですよね。

赤見:これだけのお金が動いているんだから、政治家がバックアップしてくれたりは?

須田:未だに競馬の味方をしたら女性票が逃げる、みたいなのはあるんですかね。

野元:多分今でもあるとは思います。例えば、バブルの頃って世の中全体がユーフォリア(多幸症)みたいな雰囲気で、ギャンブルに対してもみんなが寛容だった部分があったと思います。だから当時は女性ファンも一気に増えた。しかし、今のように先の見通しが暗くて、「身を固くして生活防衛」みたいな雰囲気の下では、ギャンブルに否定的な風潮がまた巻き返してくるのではないかな、と。あくまで想像ですけどね。

須田:ただ、世の中ちょっと理解力が増しているところもあって、例えば震災の後の自粛ブームの時に、消費活動を自粛させることはむしろ国としてはマイナスだということを言っていい時代になったわけじゃないですか。そう考えると、馬券をいっぱい売った方が国庫としては得なんだよという議論が、理解できる段階に来ているんじゃないかなという期待はあるんです。

おじゃ馬します!

赤見「具体的にどうしていくことが?」

赤見:例えば、具体的にどうしていくことが考えられますか?

須田:これは、今年の赤本のあとがきにも書いたんですが、集票団体を作るのがいいんじゃないかと。

野元:ロビー団体ですね。

須田:そうです。ロビー活動をするための組織を作って、仮に何票抑えられるのかという。しかも競馬の世界には、資金力を持っている人がたくさんいますからね。集票団体がけっこう大きい規模でできたとなると参院に代表をなんてことにもなりますが、そうしたら赤見ちゃんが出馬するとか(笑)。

赤見:ええっ?!

須田:イメージを考えたら女性の方がいい。そこまで一足飛びには無理でも政治サイドに味方が必要だから、それをどう獲得していくか。

もっと単純、簡潔ですぐできることも考えたほうがいいんじゃないでしょうか。例えば、各政党に「あなたの政党は、馬券の課税に関してどう考えているのか」というアンケートを一斉に投げる。それに対する回答を公表して、中には回答しない政党もあるでしょうけど、それも踏まえて競馬ファンの有権者が「じゃあこの政党を支持しよう」ということを考えるというのはありますね。netkeibaさんでweb上にそういった場を提供してもいいと思います。

赤見:なるほど! そういう方法も考えられるわけですね。(了)

【判決を受けて、各々の感想と見解】

野元賢一記者
 正直、刑事の判決でここまで踏み込んでくるとは予想外でした。量刑を聞いて「かなり削ったな」と思いましたが、判決理由で今回の所得を「雑所得」と認定した時点で、廷内の雰囲気が変わりました。国税側にとっては完敗と言ってよいでしょう。

 今回のような非典型的な所得は、発生の仕方など、実態を十分に把握した上で、ケースバイケースで性格づけをすべき、という過去の判例もあり、判決はこれを踏襲したと言えます。払戻金を一時所得として例示した1970年の国税庁通達が「行政側の解釈に過ぎない」と判示した点も、司法が行政の誤りを正すという本来の役割を果たした意味で高く評価できます。

 国税は控訴して欲しいでしょうが、形は有罪だから大阪高検の判断も難しい。8割方「もらい事故」ですからね。コアなプレーヤーは雑所得という線が出たことで、どこまで「コア」かの線引きが問題になってきます。コアでない人は一時所得だから、今回のように当局に「いいとこ取り」をされるリスクが残る。9割のファンがトータルで損をしている実情を踏まえれば、担当弁護士のコメント通り、JRAや農水省は小細工せず、堂々と馬券非課税の法制化を主張すべきです。

斎藤修氏
 単純無申告についての有罪は当然として、一審からハズレ馬券を経費と認めたのは画期的と思う。被告の「全面的に主張を認めてもらった」、弁護人の「実質勝訴」という会見のとおり。ただFXや先物取引と同様に投資・営利目的と認められたのはきわめて特殊なパターンで、そういう意味では大多数の競馬ファン(馬券ファン)にとっては、一定以上の配当を得たときには「偶発的な一時所得」として税金を納めなければいけないということには変わらない。

 また座談会でもすでに言われていたように、履歴の残るネット・電話投票と、実馬券の場合とで、ハズレ馬券を必要経費とすることを同等に判断することは事実上不可能だし、ネット・電話投票に限って必要経費として認めるというのも現実的でない。となると、ファンも含めた競馬業界(他の公営競技も含めて)が目指すのは、「配当金については非課税」というところになる。安心して馬券が買えるスッキリした解決方法だ。

 ただその方向に向かった時に問題になると思われるのが、座談会でもちらっと発言したのだが、非課税となっている宝くじやサッカーくじtotoとの兼ね合いだろう。宝くじやtotoは配当率が50%前後で、仮に公営競技の配当がそのまま非課税になったとすると、「75%も配当があるのに、同じ非課税なのかよ」という指摘が間違いなく出てくると思う。配当が非課税になっても、馬券(や車券や舟券)の配当率が大幅に下がる(控除率が上がる)ようなことになれば、公営競技の衰退は確実。非課税を目指すにしても、ファン、直接の競技関係者、そして売上げの一部を国庫納付金として得る国(さらには国民全体)と、すべてが幸せになれる線引きをどこにするのかは難しい。誰かが不幸になるだけならまだいいが、やり方を間違えれば全員が不幸な結果になりかねない。

赤見千尋さん
 今回の座談会は、テーマがとてもデリケートな問題でした。判決の前の時点では、競馬マスコミで今回の裁判について大きく報道している媒体は少なく、私自身情報不足、勉強不足でした。座談会でお話を聞き、改めてこの裁判の怖さに気づきましたし、デリケートな問題をここまで掘り下げて話してくれたみなさんに、心から感謝しています。

 判決については、有識者のみなさんからそれぞれ意見をいただいているので、私からは別の側面から一言。座談会のPart.1で語られた、「競馬を知らない記者がこの裁判のことを書いて、どれだけ負の広報効果があるか…」ということです。判決の記事を読むと、2パターンの報道の仕方がありました。「実質勝訴」というものと、「有罪」ということを強調したものです。内容としては、実質勝訴であり有罪でもあるのでどちらも正しいわけですが、「有罪」を強調した報道を競馬を知らない方が読んだら、競馬に対してどれだけ負の印象を抱くでしょうか。さらに言えば、「馬券を買って裁判になっている」ということがそもそもかなりの負の広報効果になっているはずです。

 JRAもNARも、何年も何年もかけて競馬のイメージを良くし、新規ファンを獲得しようとあらゆる広報キャンペーンを行って来ました。その効果もあって、近年の競馬のイメージはかなり良くなっていると感じます。しかし、どれだけお金を掛けても、どんな人気タレントを使っても、こういう裁判が起こってしまうことで、新規ファンになり得る人たちが背を向けてしまうことは十分考えられます。

 現在の競馬ファンのためにはもちろんですが、今後新たに競馬ファンになり得る人材を減らさないためにも、課税の問題をクリアにし、二度とこういう裁判が起きないよう努力することが大切なのではないでしょうか。

須田鷹雄氏
 座談会を実施した当初は、1審でもあり国側有利=競馬側不利の判決が下りるのではないかと全員が想定していた。ところが判決は予想外のもの。雑所得と認め、それゆえハズレ馬券も経費となった。内容的にも、民事方面への踏み込み方も相当なものだ。

 競馬側に問題があるとすれば、被告があまりにレアケースであるために、整理されていない部分が残ったことだ。雑所得扱いになったことで「一時所得扱いの競馬ファンはハズレ馬券を経費として認められるのか」ということは触れられずに終わっている。これは争点にならなかったので仕方ないことである。

 しかし判決の中に、担税力に応じた適切な課税をするべきという内容が入ったことで、事実上「証明できればハズレ馬券も見る」となったと考えていいだろう(もちろん、拾ってきたハズレ馬券などは証拠能力が無い)。雑所得かどうかの線引きは他の雑所得との相殺に関わる問題であって、「なにをもって馬券の儲けとするか」の概念が馬券購買者ごとに違うということは、あってはならない。課税の基本三原則でもある公平性に関わる。

 もちろん、個々の国税職員の出方次第では一時所得扱いの普通のファンがすごい刺され方をする可能性が0というわけではない。しかし常識ある職員なら、不服審査あるいは訴訟になったときに「ハズレ馬券ノーカウント」を通す自信はもはや無くなりつつあるだろう。まして今回の被告のように規模の大きい戦いはそうそう存在しないわけで、訴訟リスクも含めた徴税効率を考えると、国税も戦って得をする戦場ではなくなった。

 今後の課題は、「なにかがある可能性が0に近いけど0ではないので怖い」という競馬ファンの不安を取り除くことだ。

 座談会をした時点で我々が現実的な防衛ラインと考えていた「一時所得でハズレ馬券はカウント」が「ほぼ」とはいえ実現された以上、理想はやはり非課税だ。斎藤さんは宝くじ等との控除率の違いが障壁になると不安視されているようだが、反復回数や資金の循環性を考えると、現状のままでも主張はできると思う。控除率に傾斜をつける時にセットでいければなおスムーズだ。

 最後に、座談会実施時点と判決後では良い意味で状況が変わったので、内容に現状と合わないものが生じたことをお詫び申し上げる。

 ただこの問題は完全に解決したわけではなく、手を変えて網をかけようという勢力が出てきてもおかしくはない。そのためにファンの皆さんには、常に正確な状況認識と冷静な判断をしていただきたい(ネット上にはデマや感情論も多い)。JRAには、表だって行動できなくても水面下で「味方」の結束を形成していってほしい。

 競馬に関わる人間は、常に味方どうしであり、そこで内ゲバを始めては状況はより困難になる。結束を固めて競馬ファン以外にも理解を求めていくことが必要だ。そのためにnetkeiba.comや競馬総合チャンネルにも「場」としての貢献を期待する。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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