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フランキー・デトーリがカタールの王族と騎乗契約

  • 2013年07月03日(水) 12時00分
 ヨーロッパのトップジョッキー、フランキー・デトーリ(42歳)が、カタールの王族シェイク・ジョアン・アル・ターニと騎乗契約を結ぶことになった。

 昨年9月16日、ロンシャン競馬場での騎乗後にフランスの競馬統括団体フランスギャロが行った抜き打ちのドーピング検査で、コカインの服用が発覚し、昨年11月20日から今年5月19日まで半年間の騎乗停止処分を受けたフランキー。当初は5月20日からイギリスで騎乗を再開する予定だったが、停止処分を通達したフランスにおける免許再交付の手続きに予想以上の時間かかかり、ようやく現場復帰を果したのが5月31日だった。

 昨年までは、シェイク・モハメド率いるゴドルフィンの主戦騎手として騎乗していたフランキーだが、足掛け20年に渡ったゴドルフィンとの騎乗契約が昨年をもって終了。今季は、以前からエージェントを務めていたレイモンド・コックレイン元騎手とのタッグを継続した上で、フリーランスとして騎乗することを決めていた。実際に、復帰が迫った5月に入ると、ニューマーケットはもとより、フランスやアイルランドにも足を伸ばし、様々な厩舎の調教に参加するフランキーの姿が見られていた。

 当代一の腕利きで、ファンからも絶大なる支持を得ている人気ジョッキーの復活とあって、マスコミもおおいに注目することになったのが、復帰の舞台となった5月31日のエプソムだった。

 メイン競走は牝馬クラシックのG1英国オークスがで、千両役者が檜舞台で華々しく復活という場面と期待したファンも多かったのだが、ライセンスの再交付がいつになるかギリギリまで判明しなかったため、残念ながらオークスは騎乗馬がなかったフランキー。その翌日のG1英国ダービーでは、5頭出しで臨んだエイダン・オブライエン軍団のどれかに騎乗するのではないかとの噂が流れていたが、ここも結局騎乗馬はなく、この日のメイン競走も観戦することになった。

 翌6月2日にシャンティーで行われたG1仏ダービーでは、馬主ティーム・ヴェイラーの総帥B・アーウィン氏からの直々の指名でファーストコーナーストーン(牡3)に騎乗。復帰後初めてとなるメジャーレース参戦を果したが、単勝30倍(9番人気)の伏兵ではフランキーも腕のふるいようがなく、19頭立ての15着に敗れている。

 6月6日にサンダウン競馬場で行われた距離5Fのハンデ戦で、ウィリアム・ハガス厩舎のエイジアントレイダー(セン4)に騎乗し、復帰後12戦目にしてようやく初白星を挙げることが出来た際には、G1でしかやらないはずの「フライングディスマウント」を披露し、喜びを爆発させた。

 これをきっかけに、次々と有力馬に騎乗し大観衆を沸かせることになるのであろうと、多くのファンは期待をしたのだが、残念ながら現実はそうはならなかった。

 6月18日から23日まで、欧州競馬の華と言われるロイヤルアスコットが開催されたが、フランキーは5日間で20レースに騎乗したものの、まさかの勝ち星なしに終わったのだ。騎乗した20頭のうち、16頭がオッズ10倍以上の伏兵だったから、単刀直入に言えば乗り馬に恵まれたとは言い難い状況に置かれたのだった。

 大馬主や大厩舎のほとんどが一流騎手と騎乗契約を結んでいるのがヨーロッパである。その隙間の縫ってのスポット参戦は、そうでなくとも有力馬の確保が容易ではないのに、シーズン開幕から2か月が経った段階での戦線復帰では、いかにフランキー・デトーリといえども、おいそれと割り込む隙間は見つからなかったのである。

 シェイク・ジョアン・アル・ターニからのフランキー側へのオファーは、かなり早い段階であったようだが、20年振りの「フリー」を楽しみたいとしていたフランキーは当初、この申し出に対しあまり乗り気ではなかったと伝えられている。だが、トップ戦線に返り咲くには大きな後ろ盾が必要なことを、身をもって知らされたことで、オファー受諾の方向に舵を切ったようだ。

 シェイク・ジョアン・アル・ターニは、6月25日にエミールの座から退位したシェイク・ハマド・ビン・ハリファ・アル・ターニの五男にあたる。フランスで教育を受けた背景を持つことから、まずはフランスのノルマンディーにブーケット牧場を所有し、競走馬の生産に着手。英国競馬へ本格的に進出を図ったのは今年からで、ロイヤルアスコットでもリチャード・ハノンが管理するトロナート(牡3)がG1セントジェームスパレスS(芝8F)で2着となっている。

 そのトロナードだが、次走に予定されているG1サセックスSは、これまでも同馬に騎乗してきた、リチャード・ハノン厩舎のファーストジョッキーであるリチャード・ヒューズが手綱をとることになるようだ。

 一方、マルコ・ボッティ、マイケル・スタウト、ジェーン・セシルらが管理するシェイク・ジョアン所有馬には、今後はフランキーが騎乗することになる。

 また、ごく最近シェイク・ジョアンが購買した今年のG1仏二千ギニー馬スタイルヴァンドーム(牡3)など、フランスに置いているシェイク・ジョアンの所有馬にも、フランキーが優先的に乗ることになる予定だ。

 今後は、欧州から届くメジャーなレースの結果に、フランキー・デトーリの名を見つける機会が急増することになりそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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