スマートフォン版へ

冷夏を通り越して…

  • 2003年07月21日(月) 19時22分
 今月初旬にノーザンホースパークで開催された「セレクトセール2003」には、本州方面から数多くの友人知人がやってきた。彼らが一様に口にした台詞は「寒い」。「涼しいどころか、もうブルブル震えそうなくらいだ」と驚く人が多かった。

 自衛手段として、わざわざウールのセーターを持参してきた友人もいたが、これが大正解で、市場開催中ずっと身につけていた。「まさか、こんなものの世話になるとは思ってもみなかったけれど、これがないと凍死しそうなくらいの気候だね」と一言。実際に、8日火曜日(市場二日目)の最高気温はたぶん、12度から13度程度だったのではないだろうか。

 それからもう二週間経過した。しかし、オホーツク海高気圧の勢力が今年はかなり強いらしく、依然として日高は冷たい夏のままである。

 高気圧の圏内にあるため、雨はほとんど降らない。だが、その代わりに海岸沿いは湿った東風が吹き込み基本的にどんよりと曇っている。海霧で見通しの悪いこともしばしば。気温は低い。浦河の場合、朝の最低気温は12度から13度ほど。日中でも17度か18度くらいのものだ。

 今月はこのままの冷夏で終りそうな気配なのだが、来月に入ったところで、どれほど暑い日がやってくるものやら。そのうちにお盆になり、お盆が過ぎれば北海道の夏はもう終りを告げるのだ。今年はおそらく夏らしい夏にならずに秋を迎えることになりそうな気配である。

 そんな状態なので、馬にとってはもう「絶好の気候」だ。暑くもなく寒くもないという、実に快適な毎日を送っている。先日、BTCに仕事に出かけた時にも、たくさんの休養馬を見かけたが、みんな生き生きとしている。「これタカラシャディーですよ」と乗り運動の最中に、知人のMが馬上から私に教えてくれた。道営から中央入りし、ダービーにも出た逸材である。こうして、秋競馬に向けて、冷涼な日高で英気を養っているのである。

 ところで、このBTC周辺には開業以来かなりの数の育成牧場が進出してきたのだが、このところ少しずつ多くの牧場で在厩馬の減少傾向が見られるという。もちろん、まったく数の変らない牧場もある一方で、ほとんど在厩馬が半減したところもある、というように、徐々に牧場間の格差が出始めているのだ。

 その原因がどういうところにあるのか、は簡単に説明できることではないが、つまりは、この時期(夏期間)昨年まで入厩していた休養馬が予定通りに入って来なくなっている傾向があるので、ということになるだろう。

 しかしながら、依然として新規開業も後を絶たない。既存の生産牧場をそっくり「居抜き」で借り上げて育成牧場を始めるケースや、BTC内の馬房をいくつか借り受けて数頭程度の育成馬を管理するところから独立し始めるケースもあり、方法は実に様々だ。要は、どれだけの顧客を確保できるかで開業に踏み切れるかどうかが決まる。育成牧場も、今後は「淘汰の時代」へと向かうことだろう。

 そうそう、冷夏の話に戻そう。今年、日高を訪れる予定のある競馬ファンの方がおられたら、長袖のトレーナーや厚手のジャンパーなどをお忘れなく。涼しいどころか、寒いんですから……。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング