せっかく柏木さんが臨時コーチについたというのに、9Rまで的中がないオオヤブ。そんなスカポンタンな様子を間近で見て、柏木さんに憐憫の情が湧いたのか、10Rの八ヶ岳特別の「特注馬」をオオヤブにそっと耳打ち。果たしてコーチの助言はオオヤブを救ったのか?
金は減るわ、柏木さんのメンツは潰すわで、自暴自棄になりかけていたオオヤブだったが、柏木さんのコーチングに笑顔がパッとサイデリア! さっそく教えてもらった馬を本命にした馬券を購入。もはや的中したも同然というようなオオヤブのスマシ顔が、どうにもこうにも腹立たしい。
『次の
八ヶ岳特別なんですが、netkeiba.comでのコメントチェックでは出走馬16頭中なんと12頭の評価が良かったんですよ。これだけでもうこのレースは難解だということがわかります。だから昨日予想している段階では、この10Rは自重しようかなとも思ってたんです。でも、柏木さんの「天の声」が僕に勇気を与えてくれました。コメント評価が良かった12頭の中で調教評価がAだったのが8.ポップジェムズと10.トーセンマルス。そして柏木さんが教えてくれた特注馬が10.トーセンマルス。う〜ん、なんという偶然、僥倖、オーマイガッ! これぞ神の思し召し! トーセンからガッチリ買いましょう(←古っ!)ってか』
ここが今日イチ!
と、馬券を見せてもらうと、トーセンマルスの単複と馬連に、1着付けの馬単まで買っている。残り資金14450円にして、6000円の投入だからここは大勝負。なりふり構っていられないといったところか。
『いやぁ、柏木さんに馬券の買い方をレクチャーしてもらったけど、いろいろ教えてもらい過ぎて、もう何が何だかわからなくて……。とりあえず単複・馬連・馬単の4種類買っとけばいいんじゃないかと。さすがにワイドはやめましたけどね』
どうりで柏木さんがレクチャーしても上の空な感じだなと思ったら、そんなわけだったのね。脳みそのキャパは満タンで、大事な教えも馬耳東風じゃ、なんとももったいない。しかし、そんなオオヤブをあたたかく見守ってきた柏木さんの表情がなんとなく険しい。
「東京開催は今週で最後だし、芝コースは外からの「差し」がかなり効くんじゃないと思ったんだけど、今日のレースを見ていると、内の先行馬ばかり好走しているんだよねえ。差し馬も一応来てはいるけど外を回してちゃダメ。でも、わたしが勧めたトーセンは追い込み一辺倒で、おそらく直線では外を回すはず。それでも、もしかしたらなんとかしてくれるかもしれないけど、やっぱり厳しいかな」
なるほど、柏木さんの言うとおり、今日の芝のレースを見ていると、内を突いた馬の好走がやけに目立つ。しかもこのレースは芝の1800m。マイルと違って東京の芝1800mと芝1400mは先行有利のイメージがなんとなくあるもんなあ。
「そうそうこの距離だとやっぱり先行できる馬がいい。でもだからこそ、追い込みのトーセンには妙味があると思ったんだよ。それにしても5番人気かあ。これじゃ過剰人気じゃないかな(笑)。それにしたってオオヤブくんも買い過ぎだよね。いくら自信があるといっても、買う前にもうちょっと吟味しないと」
すみません、柏木さん。そうしたことがハナからできる男だったら、そもそも柏木さんにコーチは頼んでいませんし……。どうぞ、聞かせてわからないなら、戸○ヨットスクール並みにガツンとバシッと教育しちゃってください! 竹刀でもムチでも用意しますからっ!
「まあまあ。でもオオヤブくんって面白いじゃない。これだけ競馬に一喜一憂して純粋に楽しめるのも才能ですよ。JRAもこんないいお得意さんを持って、本当にありがたい話だよねえ」
◆大健闘したって馬券にならなきゃ“ダメだこりゃ!” さ〜て、いよいよ運命の10Rのファンファーレ。さっきまで笑っていたオオヤブも心なしは緊張している。まったく何考えてるんだか、別に死ぬわけでもなし。
『万が一死ぬかもしれないじゃないですか! でも馬券が当たりそうになって興奮で心臓が止まるのはマシだけど、ハズれてショック死したら目も当てられない!!』
ダイジョブ、ダイジョブ。レースの結果で死ぬようなら、これまでもう100回以上は死んでるわ! まあ、「お前はもう死んでいる」可能性もあるけどさ。
「このレースはわたしにも責任あるし、オオヤブくんの馬券を応援しないといけないね」
と、やさしい柏木さんだが、本命にしたトーセンマルスは案の定、ほぼ最後方の位置取り。これを見た柏木さん曰く、
「直線では伸びてくれると思うけど」
夢破れる
その直線では、トーセンはやはり進路を外にとって追い込み態勢。だが、これが明暗を分けてしまう。直線で抜け出したのは馬場の内めを先行した2番人気のアーデントで、2着に1馬身半差をつけての快勝だった。弥生賞でも3着した実績馬だけに、調子を戻せば1000万のここではさすがに力上位。2着にはこちらも内枠を利して内を差してきたエーブフウジン。3着にも先行したエパティックが入り、4着は逃げたアップルジャック。オオヤブの本命トーセンマルスはよく追い込んだものの5着が精いっぱいだった。とはいえ、内枠の逃げ・先行馬が上位を占める中、33秒5の最速上がりで5着したトーセンマルスは立派。柏木さんが特注馬で狙った通り、状態はかなり良かったんだろうし、この条件自体が合っているのだろう。惜しむらくは馬場が合わなかった。まさにこれに尽きる!
ヤケになりつつあるオオヤブ
「よく追い込んだねえ。見ているこっちも力が入ったよ。でもさすがにあそこまでが一杯かなあ。残念だった」
『う、ううううう……。せ、せめて2着なら、アーデントは押さえていたのに。ダメだこりゃ!』
と、いかりや長さんばりの捨て台詞を吐き、まるでたらいが頭に落ちてきたくらいのショックを受けているオオヤブ。
「さあ、いよいよメインレースだよ。オオヤブくん。そういえば、今日一番自信のあるレースは、メインの夏至Sだって言ってなかった?」
『もうどうでもよくなってきました。夏至Sなんて当たらないでゲシ。どうせダメなら、複勝多点買いでもするゲシ』
若干おかしくなり始めているオオヤブに柏木さんが、
ここで複勝多点買いしよう
「複勝買いするなら
夏至Sよりも
阪神メイン。メンバーを見ても向こうのほうが荒れそうだよ。うん、やってみようよ。ここで複勝多点買い」
この柏木さんの一言が衝撃の展開を呼ぶことになるとは、このとき誰も思わなかった……。
現在の馬券的中数
26本ゴールまで残り
74本「複勝多点買い」の結果は!?
【次回予告】
ついに柏木さんを臨時コーチに迎えた6月の100本ノックのクライマックス。もっとも自信のあるレースだと豪語していたメインの夏至Sを前に、阪神メインに手を出したオオヤブが見たものは天国か、それとも地獄か?
【馬券100本ノックのルール】
・netkeiba.comのコンテンツを使って馬券を的中させれば『1本』。馬券の種類は問わない。
・万馬券であれば1本プラス、10万馬券ならば10本プラス。
・100本に到着するまで本企画は終わらない(不人気で連載終了の可能性は僅かにあり)。
・馬券を購入できるのは月に1日。どのレースを買ってもいいが、重賞は必ず買う。
・購入資金はオオヤブのお小遣い3万円以内。足りなくなったら・・・・・・