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太がジョッキーの“体重管理”について語ります!

  • 2013年07月23日(火) 18時00分
この春、新人の原田敬伍騎手が、2Rから10Rに向けて汗取りを行ったことで、熱中症で倒れるという出来事がありました。それについてユーザーから「ジョッキーはレース当日もまだ体を絞るのですか?」という素朴な質問が。太論では、これまでも度々話題に上がってきた“体重管理”ですが、その辛さを知っている小牧騎手が、改めてその重要性と苦悩を語ります。
(取材・文/不破由妃子)

■ジョッキーとして、心構えが足りん!

──6月に新人の原田敬伍騎手が、体重調整の失敗からレース当日に熱中症になり、2日間の騎乗停止処分を受けるという出来事がありました。レースとレースの合間に汗取りをして倒れたことから、これに関連して「レース当日にまだ絞るなんていうことはあり得るのでしょうか?」という質問がきています。

小牧 あるある、普通にあるよ。僕の場合、大抵は前日までに調整するけど、レース間隔が空いてる日には、なにか食べてから調整ルームに戻って、食べたぶんをお風呂に入って絞ったりするし。でも原田くんのケースは、ジョッキーとして恥ずかしいことやね。馬に乗る以前のことやから。

──たしか、2Rの51キロから10Rの50キロに向けて汗取りをして、具合が悪くなってしまったんですよね。

心構えが足りん

心構えが足りん

小牧 そうそう。普通の人は「可哀想に…」とか思うのかもしれんけど、ジョッキーとしてそれはダメやね。倒れるということは、心構えが足りんということ。だって、僕らにとって体重管理は大事な仕事やからね。そりゃあ、つらいときもあるけど、僕はそれで具合が悪くなったことはない。丈夫やし、つねに余裕を持ってやっているから、そこまで追い詰められたことはないわ。

──若いジョッキーの体重調整の失敗は、時々ありますよね。

小牧 そうやね。まだ自分に合った方法を知らんのかもしれんけど、それ以前に考えが甘いんでしょうね。まぁ、最近の若手は背が大きい子が多いから、苦しくてたまらんのでしょう。

──小牧さんは、園田時代も含めて、体重調整に失敗したことはありますか?

小牧 一度もないです。若いころは軽かったのもあるけど。それに、僕はもう自分の体のことをわかってるから、無理に軽いのは乗らんからね。53キロは乗れるけど、52キロはもう乗らんとこと思って。

──体重管理の話題は太論でも度々出ますけど、改めて「体重管理の苦労話を教えてください。なにが一番つらいのでしょうか?」という質問がきています。

小牧 一番つらいのは、なにをやっても落ちないことやね。前にも話したけど、園田時代にケガをしたあと、まったく体重が落ちんようになった時期があって。退院後に60キロまで太って、54キロまではスッと落ちたんやけど、そこから何をしてもまったく落ちなくなった。丸1日、水しか飲まない日もあったんやで。それでも落ちんかったからね。あのときはもう、風呂に入ろうがサウナに入ろうが、汗がひとっつも出ぇへんねん。干からびてるから、喉だけは渇くんやけどね。あのときはホンマに往生したわ。

──どうやって乗り切ったんですか?

小牧 昼と夜に走るようにしたら落ち始めたわ。普通に1時間走るのって想像以上にしんどいから、そのときは合羽を着て1日2回、ゆっくりゆっくり1時間走りましたわ。僕はその方法が一番落ちるね。

──自分に合った減量法を見つけたということですね。

小牧 うん。ついこの前も、むっちゃ暑い日があって、これやったらジムに行くよりサウナスーツでも着て、琵琶湖の周りを走ろうかなと思ってね。湖畔にある駐車場に車を止めて、サウナスーツに着替えて走りましたわ。で、しんどくなってふと時計を見たら、30分近く走っていて。もうその時点で、戻れる自信がなかった(笑)。ホンマにもう走れんくて、死にそうやったわ。帰りはさすがにサウナスーツを脱いで歩いたんやけど、それでも車まで辿り着けないかと思った。久しぶりに死にそうになったわ(笑)。

──小牧さんでも、そうやって日々努力されているんですね。毎週毎週の体重調整はもうつらくはないですか?

(体重調整は)当たり前になってるから

(体重調整は)当たり前になってるから

小牧 当たり前になってるからね。でも僕は重たいから、苦労してるほうだと思う。そういえば、さっき裸で計ったら55キロあったわ。51キロを目標に、木曜日にだいたい落とすんやけどね。

──週末までにあと4キロですか! 普通では考えられない…。ちなみに、夏場は絞りすぎると体のいろいろなところが攣(つ)ると聞いたことがありますが。

小牧 そうそう、ゲートのなかとかで指が攣るの。脱水症状やね。夏場に頭数が多いと、疲れも相まって余計に攣るわ。だから最近は、塩をよく舐めるようにしてます。

──指が攣ったら騎乗に支障があるのでは?

小牧 ゲートのなかでは「痛い〜!」って思うんやけど、ゲートを切ってしまえば、いつの間にか忘れてる(笑)。集中するからかな。

──仕事とはいえ、体重管理は自分との戦いですね。今日、改めてそう感じました。

小牧 体が大きかったり、骨太だったりすると、余計に大変やろうなと思う。僕も重たいほうやけど、さっき話したケガのとき以外は、毎週きちんと落ちるからね。なにしろ僕は、お風呂が好きやから。昨日も、午前中は三重県の榊原温泉に行って、2時間くらいお風呂に入ってね。1時半くらいに帰ってきたんやけど、しばらく横になってボーッとしてたら、またお風呂に入りたくなって、3時半くらいに今度はニューびわこ(ホテルに併設されている温泉施設)のお風呂に行ったわ(笑)。前にも言ったけど、苦しいのが好きみたい(笑)。サウナスーツを着て自転車を漕いだりとか、苦しいんやけど、よくやってるもんね。好きじゃないとやらんでしょ。

──やっぱりドM…(笑)。

小牧 そうかもね(笑)。

【次回の太論は!?】
 春は自身初ともいえる大不振に陥った小牧騎手ですが、6月の後半以降、近5週で8勝をマークするなど、すっかり調子を取り戻した感があります。次回は、直近のベストレース、ワーストレースを振り返るとともに、間もなく始まる小倉開催に向けての手応えをお聞きします。
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太論 / 小牧太
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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