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『高橋先生の思いがあって騎手を続けられる』難波剛健騎手の信念

  • 2013年08月13日(火) 18時00分
 猛暑が続いていますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。この時期は、地方の美味しい食べ物が沢山あり、楽しみです。いっぱい頂いて、体力をつけましょう!

 さて、サマーマイルシリーズ第2戦関屋記念は、最内枠から先行したレッドスパーダが有利にレースを進め、 ジャスタウェイの追い込みや有力馬を退け、見事な勝ち星でしたね。7歳馬とは思えないくらい、たくましい走りでしたね。秋に向けて大きな楽しみがでてきました。

 関屋記念といえば・・・、僕でしょう! と。

 8月11日号の週刊競馬ブックの表紙をご覧になられましたか? オースミコスモ号に僕が騎乗し、関屋記念を制覇したときの写真が記載されていて。「えっ、これ、オレか?」って半信半疑だったけど、じっくり見ると「やっぱり俺なんや」とびっくりしました。後のGI馬アドマイヤマックスより先着したので高配当だったんですよ。

 2003年8月3日に行われた10年前の関屋記念の、オースミコスモの勇姿に、改めて「ありがとう」と感謝の気持ちでいっぱいになりました。8月2日が僕の誕生日なので自分への褒美でした。夏の牝馬の馬体はとってもきれいだなと、改めて思いました。やはり競馬は、馬の魅力をいっぱい伝えられ、記憶に残って受け継がれていくことができる、夢とロマンのスポーツですね。オースミコスモも繁殖牝馬として頑張っています。馬体が小さいのでお産が大変だそうです。私事で失礼しました。

 今週のゲストは、難波剛健騎手です!

 障害騎手としては若手のジョッキーなんですが、「気がつけば独身寮では年齢が上から2番目になりましたよ」と、にっこりつぶやく、笑顔のかわいい「ナンチャン」です。

 そうそう、8月10日(土)新潟4R(障害3歳上未勝利)、セフティーフライト号で勝ちました。おめでとうございます! 未勝利を勝つのは、とっても嬉しいんですよね。新潟競馬場を後にして8月11日は小倉へ。障害3歳オープンのネオファッショ号に騎乗です。僕も小倉から新潟へ行ったことがありますが、移動が大変なんですよね。

 今週は、新潟ジャンプS(J-GIII)シンワカントリー号に騎乗予定です。ナンチャン、応援してるよ!

若手期待の難波剛健騎手

若手期待の難波剛健騎手

常石:ナンチャン、今日はよろしくお願いします。

難波:いえいえ、こちらこそ。僕なんかを取材してくれるなんて。

常石:そんな控えめなナンチャンの印象がいいよね。「難波」といえば大阪のミナミ出身かと思ったら、岡山なんですね。大阪に南海電車で「なんば」という駅があるんですよ。さて、この世界に入ろうと思ったきっかけは?

難波:つねさん、それは無いかな(笑)? 数少ない岡山県出身です。古川先輩と近くですよ。古川さんは山の方ですが、僕は海の方です。

 ゲームのダービースタリオンが流行っていて ゲームにはまっていましたね。それがきっかけで競馬にも興味をもちました。体重も身長もぴったりだったんです。動物が大好きだったので、ムツゴロウ王国で動物と一緒に過ごし、仕事をしたいなと思っていました。だから友達に騎手になると話した時「まさか」と驚いていました。今は志村けんさんの動物のTV番組を見て癒されていますよ。

 父が自動車教習所の教官だったので、自己流で車に乗った経験があったら正しい運転技術がなかなか身につきにくい。乗馬もしない方がいいのではとアドバイスがあったので、乗馬はしなかったですね。

 競馬学校へ入ってから実際に初めて馬に乗ったので、いっぱいいっぱいでしたね。競馬学校で初めて障害レースも練習しました。でも、一人で馬に乗ることができて嬉しかったです。

常石:障害馬に乗るきっかけは?

難波:先輩の林さんが調教していた馬が複数出走するので、それで声をかけていただいたんです。自厩舎の馬で安定している馬だから乗ってみたら、というのがきっかけですね。

 初めてだったから怖かったですね。競馬学校を卒業してからほぼ乗っていなかったですからね。上手く飛ばせなかったです。でも、怖くないと言えば嘘になるかも知れませんが、乗れることが嬉しかったです。怖いと思ったら乗れませんよね。

 本格的に障害騎乗を始めたのは4年前からです。自厩舎の馬に沢山乗せていただいていましたが、なかなか結果を出せなくて。高橋成忠先生の定年解散も近くなり障害馬多かったので、障害馬も乗っていかないとこのままでは騎手は続けられないなと思ったんです。

 先生がいろいろ気を遣ってくださったので、少しでも恩返しをしなくてはと思いました。辞める人も多かったので大分悩みましたが、先生が懸命に僕のことを応援してくれたのに、僕自身の思いだけで勝手に辞めるわけにはいかないと思いました。この調教服も高橋成忠厩舎の服で、先生の思いを忘れないためにも、ずっとこの厩舎服で仕事をしたいと思っています。

雨の中でも熱心に調教をつける難波騎手

雨の中でも熱心に調教をつける難波騎手

常石:ナンチャンと言えば、白とピンクの新撰組マークの厩舎服が目立ちますよ。

難波:新撰組ですか(笑)? かっこいいですよね。白とピンクと言えば、つねさんもそうですよね。

常石:ナンチャンのレースを見ていたら、時々大穴あけますよね。「馬券買っとけばよかったな」と、後悔する時があるんですが?

難波:平地と違って障害は、馬の能力だけではなくコース取りや飛びのタイミングなどで挽回や立て直しができるチャンスがいっぱいあるので、騎手の持って行き方にかかってくる部分も大いにあるでしょうね。上手くいったときははまるし、コーナーも多いので流れが変わりやすいので、僕は阪神が好きですね。京都はスピード競馬になるので馬の能力が出ると思います。

常石:障害馬は自分で作るから魅力もありますよね。調教でナンチャンがこだわっていることってどんなところですか?

難波:今乗っている馬は、未勝利とか500万下が多いので、まだ力が出せていない馬が多い。能力もまだまだ足りないから、コース取りに無駄が無いように上手く使い、いかにロスの少ない乗り方をしてチャンスを見つけるかが大事だと思ってます。

 僕自身の経験も浅いので、初めは見よう見まねから入りました。先輩のアドバイスをいっぱい聞いています。例えば出津さんや北沢先輩は作り方も乗り方も安定感がありますね。それでいて、やるときはやりますからね。頼もしいです。西谷先輩は飛びが上手い。だからよく併せ馬をお願いしています。

 競馬は1頭では走らないので、馬の後ろから飛ばしたり併せ馬で調教をするのが大切だと思う。できるだけいろんなパターンで練習させるようにしています。障害レースは自分の頑張りで乗りこなせると思うので、障害騎手の仲間のアドバイスをきっちり受け入れていきたいです。

 障害に乗ってる騎手はみんな言うと思いますが、自分で作った馬でレースに出るのは、嬉しいし面白い。だから辞められないんじゃないですか? 上手くはまって勝った時はメチャ嬉しいので辞められないんですよね。あの時の嬉しさは最高ですよね。

 乗り出してまだまだですが、いつ凄い馬に出会えるか分からないから、それまで騎乗技術をしっかり磨いておきたいです。まだGIに乗ったことが無いので、できれば自厩舎で行きたかったですが、五十嵐厩舎や武宏平厩舎に沢山乗せていただいているので、これから頑張ります。

常石:夢はいっぱいありますが、ファンにメッセージをお願いします。

難波:障害馬はレースごとに馬の成長が見られるので、一頭の馬を追いかけてみて欲しいなと思います。みんなで競馬をするので障害騎手同士のトークショーなどがあれば面白いかな。4Rのレース後パトロールビデオを見ながら、昼休みにトークするのも面白いと思う。レースの展開を見ると参考になる。事故を未然に防ぐために、障害騎手同士いつも意見交換しています。

福祉施設でのイベントの様子

福祉施設でのイベントの様子

難波騎手と相撲の大嶽親方

難波騎手と相撲の大嶽親方

常石:話は変わりますが、高田騎手たちと一緒に福祉施設を訪問されているそうですね。

難波:あれはね高田先輩と奥さんが始められたことで、誘っていただいて僕もお手伝いさせてもらいました。「お兄ちゃんまた来てくれたね。ありがとう」と言ってもらって、メチャ元気をもらいました。子供たちは、よく覚えているので嬉しいです。

 競馬にも興味を持ってくれ、いろいろ聞いてくれます。1日しか過ごすことができませんでしたが、また仕事を頑張ろうと思います。GIにも乗りたいので、子供たちにパワーをもらって頑張ります。(インタビュー終了)

 ナンチャンの優しい人間性がいっぱい出てくるようなお話を沢山聞くことができ、心が豊かになりました。お父さんのお話もいっぱいしてくれました。「父のアドバイスがあって、今の僕がある」「高橋先生の思いがあって、僕は騎手を続けられる」、大切にしているナンチャンはかっこいいなと思いました。

 最後に、うちのお店で偶然に大嶽親方に出会い「がんばれよ!」と声をかけていただいたときのツーショットです。いろんな方との出会いを大切にしたいと思います。常石勝義ことつねかつでした。[取材:常石勝義/栗東]

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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