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第37回 完徹ノックで生き地獄の巻

  • 2013年09月23日(月) 18時00分
(第36回までの超ざっくりとしたあらすじ)
臨時コーチの丹下日出夫さん

臨時コーチの丹下日出夫さん

「必勝法を見つけた!」という1通のメールがきっかけで始まった、ひとりのサラリーマンの泣き・笑い満載の馬券ドキュメント。当企画の主人公のオオヤブは、毎回ネット競馬のサイト『netkeiba.com』から馬券のヒントになるものを探し出し、それを元に手を変え品を変え、馬券を購入するという方法をとってきたが、春の青葉賞の会心ヒットを境に大スランプに突入。以降、オオヤブは迷走をはじめ、連敗続きで完全に自分を見失ってしまう。業を煮やした編集部はオオヤブにコーチをつけることを画策。6月の日刊競馬の看板評論家・柏木集保氏に続き、7月は東スポの渡辺薫氏を臨時コーチに迎えての馬券修行。そして8月、3人目の臨時コーチとして丹下日出夫氏を招聘し、さらなる馬券修行にいそしむオオヤブであった。
 8月の馬券100本ノックの実戦前夜に、某居酒屋で開催された丹下さんの馬券講義は予想外の盛り上がり。丹下さんとオオヤブは同郷ということもあり、GMT話にも花が咲き、夜更け近くまで続くロングラン。会場となった居酒屋自体、今回の実戦の舞台となる東京競馬場までそれほど遠くないからいいようなものの、だからといって寝る時間はあまりない。つまり、ほぼ完徹でノック突入と、まさに生き地獄の展開と相成った……。

◆フラフラのオオヤブを競馬場に連れていくも使いものにならず

『頼んますよ〜〜! 丹下さんに今日の狙い馬を聞いたわけだし、今日は午後からの100本ノックでいいんじゃないですか? 午前中一杯は爆睡タイムにしてください。ボク、基本的に寝ないとダメダメなのび太くんなんですよ』

 仮にお前がのび太だとしたら、ちゃんと寝たとしてもダメなヤツだと思うが……。とにかく、競馬場には朝イチから行くのだ。午前中のレースは「見」するにしろ、一応すぐに馬券を買える態勢にはしといてくれよ。厳しいように思えるかもしれないが、この企画は地獄の猛特訓かつチャレンジ企画だからこそ意味があるのだよ。そうでなきゃ「100本ノック」なんてタイトル付けないっつーの。

まったく競馬に集中できずに1Rはただ見てるだけ

まったく競馬に集中できずに1Rはただ見てるだけ

『くそ〜、眠いし、軽くうたた寝くらいしかしてないのに、二日酔いってどういうことよ! 胸やけはするし、頭ガンガンで腹はピーピーって。ノック中に興奮して、ケツからプリッとしたらどうしようかしらん!?』

 というわけで、二日酔いの体に鞭打って東京競馬場に到着したオオヤブ。とりあえず無料の飲料水をガブ飲みするが、ずっとうつむき加減のまま。なもんで、新聞の馬柱を眺めても細かい文字ばかりで、さらに酔いが回ってしまう。

『この2重丸ってホント腹立ちますわぁ。上から下まで並んでいる二重丸がうずまきのように見えて気持ち悪いし、催眠術みたいですっごく眠くなるんですよ』

フロアの端っこで横になっているオオヤブ

フロアの端っこで横になっているオオヤブ

 どんな状態でも、競馬場に連れて来さえすれば、自称「競馬バカ一代」のオオヤブの馬券熱に火が点くんじゃないかと思ったものの、まったく競馬に集中できずに1Rはただ見てるだけ。しかも、本日のベースにできるような座席も空いておらず、フロアの端っこに新聞を敷いて座るハメになり、いつのまにかそこで横になっている体たらく。2Rが始まっても起きる気配が無く、まるで土左衛門と化したオオヤブの姿があまりにも不憫なため、横っ面に猪木ばりの元気注入をして叩き起こし、とりあえず食堂に移動。だが、そこで何も頼まず寝るという、渋谷のマックにたむろするギャル以下の行為を周囲に見せつけてしまう。このまま夕方まで死人同然というのは、頼むから勘弁してくれよ〜!

◆丹下さんがオススメする新馬特注馬でとりあえず運試し

 オオヤブが目を覚ましたのはお昼前。若干だが復活したオオヤブは、いそいそと本日の予想をし始める。予想といっても、買うのは師匠・丹下さんが薦めてくれた馬と決まっている。プライドのカケラも無いオオヤブは、丹下さんからもらった虎の巻(丹下さんの予想が書いてあるアンチョコ)を広げて、オススメ馬を軸馬にした買い目を忘れないようにメモしている。と、ここでオオヤブは、虎の巻の最後のページに新馬戦の情報があることに気付いた。

『あららら、丹下さんの予想は特別戦だけだと思ったら、新馬の特注馬も書いてあるじゃないの。なになに函館5Rの新馬はペプチドスピカがいいって……げぇ〜、もうレース終わってるし、ペプチドスピカが圧勝してるじゃん。うわあ、こうしてらんない。小倉と新潟の新馬を買っとかないと!』

エイシンキサナドゥから相手を3頭選ぶも…

エイシンキサナドゥから相手を3頭選ぶも…

 と、食堂を飛び出し、馬券売り場へフェードイン。丹下さんの小倉のオススメ新馬・エイシンキサナドゥは単勝1.8倍でグリグリなので、そこからの馬単勝負を敢行。オオヤブはnetkeiba.comで調教と厩舎コメントが良かった3、4、6を相手に選ぶ。ところが軸のエイシンは快勝したものの相手が痛恨のヌケ……。

『そういえば丹下さんは厩舎コメントをあまりアテにしないって言ってたな。僕も調教だけ見てれば2着の9.セフィーロはギリでアリだったんだよなあ。せっかく講義してもらったのにもう忘れるなんて、ボクはバカだ。大バカだ!』

 今さら断言しなくても、お前がおバカなんてのはみんなわかってるって。でももったいなかったよなあ。丹下さんの教え通りに買ってればよかったのにさ。真剣さが足りないんじゃないの?

『何を言うんですか! ボクは本来、真剣に学習する真面目な男なんですよ。しかもボクは昔、効率よく学習をしようと「キオークマン」と、「小林克也のアメリ缶」を買って、一日中脳を活性化させていたほど学習熱の高かった男なんですから』

 なるほど、丹下さんの話がオオヤブには馬耳東風だったのがわかる気がする……。

『今度は外しませんよ。新潟5Rの新馬戦は、丹下さんの特注馬キュリオスティーから手広く流しますから』

 と、勢い勇んで買ってみたら、軸馬のキュリオスティーが惨敗で不的中。

『ここでヘコんでいたら弟子の名が廃る! 新潟6Rの新馬戦も丹下さんの特注馬のネロから馬単で手広くじゃい!』

収支はマイナスなのに8本的中って、ありえなくね?

収支はマイナスなのに8本的中って、ありえなくね?

 口から強烈なアルコール臭をまるでゴジラのように周囲に放出させつつ、新潟6Rで再び勝負。すると、これが本日初ヒット。しかし、相手の3.ラヴァーサクラは本線ではなく押さえだったので収支はマイナス。でも、柏木さんから続く「オオヤブ修行編」では、臨時コーチが振った2つのサイコロの目を足したものと的中数を掛け算したものがオオヤブの的中本数となるので、新潟6Rの的中は、丹下さんが帰り際に振って出たサイコロの目「8」を掛けて、なんと8本的中の扱い。ルールとはいえ、収支はマイナスなのに8本的中って、ありえなくね? まったくもって最高級のコーチを付けた意味がないってーの。しかも、

『すんません。6Rの直線で大声出し過ぎて、今ヘンなものがここまで浮いてま〜す』

 と、オオヤブはヒマワリの種を口いっぱいに頬張ったリスのような顔をして苦しんでいる。こっちも思わずもらってしまいそうだが、トイレに向かってアイビスサマーダッシュをかますオオヤブを見ながら、「トイレの場合は大外じゃなく最内に入れればいいね」と下らぬ心配をしてしまうのであった。

現在の馬券的中数 67本
ゴールまで残り 33本

丹下さんの「ふんどし」は甘いか!?、酸っぱい!?

丹下さんの「ふんどし」はどっち!?

【次回予告】
いよいよ8月の馬券100本ノックのクライマックス。廃人寸前までいったオオヤブが奇跡の生還を果たし、師匠・丹下さんの予想を駆使して特別戦に挑む。丹下さんの「ふんどし」は果たして甘いか、酸っぱいか!?


【馬券100本ノックのルール】
・netkeiba.comのコンテンツを使って馬券を的中させれば『1本』。馬券の種類は問わない。
・万馬券であれば1本プラス、10万馬券ならば10本プラス。
・100本に到着するまで本企画は終わらない(不人気で連載終了の可能性は僅かにあり)。
・馬券を購入できるのは月に1日。どのレースを買ってもいいが、重賞は必ず買う。
・購入資金はオオヤブのお小遣い3万円以内。足りなくなったら・・・・・・

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【主役:オオヤブ】 妻子持ちの36歳。一応、雑誌・書籍の編集業に携わっている。若かりし頃にイギリス留学経験もあり、ニューマーケットで馬券の研さんを積んだ、なんてことはまったくない3度のメシより競馬好き。ギャンブル全般に造詣が深いと本人は思っているが、周囲の見方は単なる「下手の横好き」。

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