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台風被害続報

  • 2003年08月25日(月) 18時45分
 未曾有の大被害をもたらした台風10号の襲来から、二週間経過した。被災地の日高中部、西部地区では連日懸命の復旧活動が行われている。

 一方、道道と二級河川を管理する北海道は、先週、まず十勝管内上士幌町での道道崩落によるワゴン車の5人が死亡した事故で、札幌市手稲区の遺族宅を訪れ、道の対応の不手際について釈明した。この、上士幌町内の道道は、二年前にも崩落した現場であり、昨年復旧工事を実施したばかりだったというが、この事実(二年前の崩落事故)を、管理する帯広土木現業所の副所長は「今回の崩落事故が起こるまで知らなかった」と発言したことから遺族側を硬化させてしまった経緯がある。最初このニュースに接した時、どう考えても私の感覚ではこの発言の意図、真意が理解できず、未だに謎のままだ。責任転嫁のためなのか、何なのか、これでは人災と言われても反論できまい。案の定、遺族側も「あんたたちに殺されたようなものだ」と帯広土木現業所の対応に関する調査報告書(北海道が作成)の受け取りを拒否したという。

 道建設部長(山上徹郎氏)は、近く新冠町を訪れ、厚別川に沿って走る道道で亡くなった三人の遺族宅に弔問と釈明を行う予定だそうである。

 日高管内は、室蘭土木現業所の管轄区域だが、帯広と同様、果して8月9日夜の対応に落ち度はなかったのだろうか。集中豪雨による水害は自然災害として避けられなかったにしても、せめて職員には非常呼集をかけて(自宅待機だったと聞く)できる限りの対応を心がけるべきだったと思う。とりわけ、人の命が失われた道道を事前に通行止めするなどの措置は、危機管理の最たるものだったと考えざるを得ない。

 さて、近く日高軽種馬農協では、今回の台風による被害を受けた牧場軒数及び被害状況についてまとめた数字を発表する予定という。25日現在で問い合わせたところによれば、馬が行方不明もしくは死亡した例は現在16頭、被害を受けた牧場数は140軒に上るらしい。

 しかし、実は未だに、各町役場や総合農協(JA)などの被害調査と擦り合わせが終了していないらしく、この数字もあくまで「現在まで判明した数字」に過ぎないという。そして、例えば、馬の被害にしても、水害によって大怪我を負った馬(流れてきた流木などにより)や大量の泥水を飲んで内臓疾患に陥った馬なども相当数になるだろうとの説もあり、わずか16頭だけで済んだことには決してならない。また、たとえ馬は無事だったにしても、厩舎や放牧地、乾牧草や麦干などの飼料や敷料等々、飼養管理のためのライフライン復旧が急務である。

 また、テレビが報じていない地域の被害も深刻だ。計4人の命が失われた厚別川流域の被害が最も大きいのは周知の通りだが、日高はほとんど全域が基本的に日高山脈を源流とする中小河川によって開かれた「沢」が連続しているため、厚別川ほどではないにしても、大量に増水して被害を受けた地区が他にもかなりある。140軒といえば、日高にある牧場の1割をはるかに上回る数である。厚別川流域だけで60軒の牧場があると言われる。少なく見積もってもそれ以外に80軒もの牧場が被害を受けたことになり、程度の差こそあれ、今後は大変な時間と資金が復旧のために費やされることになるわけだ。折りから、日高は、二番牧草の収穫時期を迎え、早いところではそろそろ当歳馬の離乳を準備している時期でもある。台風の残した爪痕がいかに深くとも、日々の業務は待ってはくれない。まずは、元の姿に戻すための何らかの支援が求められるところだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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