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エリサべス女王杯と世代比較論

  • 2013年11月05日(火) 12時00分
 エリサべス女王杯のように3歳馬と古馬がぶつかる場面では、世代比較論が持ち出されがちである。かつては有馬記念の予想などでも、世代比較の話がよく出た。

 しかし実際のところ、世代によるレベル差というのはどのくらい存在するのだろうか? 古馬のG1を勝ったのがオサイチジョージだけという1986年生まれの牡馬などは確かにレベルが低かったような気はするが、そこまで極端な指標の差がでていない世代どうしの比較は難しい。

 そもそも、基準をどのように取るかという問題がある。先述したG1勝利だと、1頭の傑出した馬がいるだけで世代全体が過剰評価されやすくなる。反対に一般レースまで含めた話にすると、世代ごとの違いというのは見えづらくなる。

今回はエリザベス女王杯を考えるうえでの折衷案として、このように考えてみた。3歳上・4歳上の牝馬限定芝重賞・オープン特別における1走あたり賞金を参照するのである。G1の賞金が効きすぎる面もあるが、G1馬を出したということ自体は評価されてもいいわけだから、そこはよしとする。また1走あたり賞金なので、レース数の累積が浅い4歳世代でも不利にはならない。

 10月末現在の結果は次の通り(カク地・カク外は除く)。

・世代
[着度数]勝率,複勝率,1走あたり賞金

・現3歳(2010年産)
[0-0-1-2/3] 0.0%,33.3%,433万円
・現4歳(2009年産)
[6-4-3-46/59] 10.2%,22.0%,719万円
・現5歳(2008年産)
[12-9-10-101/132] 9.1%,23.5%,757万円
・現6歳(2007年産)
[7-13-14-161/195] 3.6%,17.4%,450万円
・現7歳(2006年産)
[10-8-8-92/118] 8.5%,22.0%,665万円
・現8歳(2005年産)
[7-10-9-155/181] 3.9%,14.4%,396万円
・現9歳(2004年産)
[12-17-10-149/188] 6.4%,20.7%,638万円
・現10歳(2003年産)
[10-7-12-115/144] 6.9%,20.1%,662万円

 3歳はまだほとんど該当条件を走っていないので評価外。あまりぱっとしない印象の現4,5歳世代は実は健闘しており、6歳世代は昨年の覇者レインボーダリアが賞金を稼いでもなお1走あたり賞金が低い。あとは現8歳世代(リトルアマポーラなど)が弱いくらいで、全体的には差が小さい。

 世代比較論というのは、「この馬は4歳の中では関脇くらいだけど、4歳世代は5歳世代よりだいぶ強いので、5歳の大関より評価すべき」というように使われるもののはず。しかしこのようにデータを見ていっても、そこまでの効力は無いように思える。

 むしろ、世代の中でのポジションを整理し、世代を問わず番付上位から評価していくような単純なやり方のほうが手っ取り早いのではないだろうか。今回は3歳のトップクラスが出走するが、その陰で古馬各世代のトップクラスの人気が下がるようなら、そちらを優先して取る手もあるということである。

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1970年東京生まれ。競馬評論家、ギャンブル評論家。中学生時代にミスターシービーをきっかけとして競馬に興味を持ち、1990年・大学在学中に「競馬ダントツ読本」(宝島社)でライターとしてデビュー。以来、競馬やギャンブルに関する著述を各種媒体で行うほか、テレビ・ラジオ・イベントの構成・出演も手掛ける。競馬予想に期待値という概念を持ち込み回収率こそが大切という考え方を早くより提唱したほか、ペーバーオーナーゲーム(POG)の専門書をはじめて執筆・プロデュースし、ブームの先駆けとなった。

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