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例年以上に興味深い顔合わせが実現しそうな香港国際競走

  • 2013年11月13日(水) 12時00分
 11月5日にフレミントンで行われたG1メルボルンC(芝3200m)は、JC予備登録馬が5頭も出走するので要注目、という内容で書かせていただいたのが、先々週のこのコラムだった。

 レースを終え、10番人気で4着に入ったシメノン(セン6)と、20番人気で11着に入ったデュナデン(牡7)の2頭が、JCに参戦することになった。

 もう1頭、デュナデンと同じオッズ61倍の20番人気で2着に健闘したレッドカドー(セン7、父カドージェネロー)も、一旦は招待を受諾したものの、レース後の疲労が激しいことから回避するとの発表が陣営からあった。生粋の香港人で、香港ジョッキークラブ会長を務めたこともあるロナルド・アーキュリ氏の所有馬であるレッドカドーにとって、シーズン後半の最大目標が前年に続くG1香港ヴァーズ(芝2400m)連覇にあることは間違いない。9月にG1愛セントレジャー(芝14F)で4着に敗れた際、管理するE・ダンロップ師から「年齢的な衰えがあるのかもしれない」とのコメントが出ていただけに、豪州→日本→香港という消耗の大きなローテーションを避けることになったのは、むしろ当然かもしれない。その替わりに、と言っては語弊があるかもしれないが、ダンロップ厩舎からは、当初、今年の最終目標は香港と言われていたジョシュアツリー(牡6、父モンジュー)のジャパンC参戦が決まったから、日本のファンとしては御の字と言わねばなるまい。

 残念なのは、前哨戦のG1コーフィールドC(芝2400m)で2着となった後、G1メルボルンCでも5着と悪くない競馬をしたダンディーノ(牡6、父ダンシリ)もまた、香港直行を表明したことだ。硬い馬場が大好きな馬で、陣営が早くからジャパンC参戦へ前向きな姿勢を示していたのに、ここへ来ての翻意はどうしたことか。G2勝ちの実績はあるものの、G1勝ちはまだないのがダンディーノだけに、G1コーフィールドCの2着でG1制覇への渇望が益々募り、3年前に挑みコテンパンにやられているジャパンCよりは、相手関係の軽そうな香港で必勝を期すということであろうか。

 当初はメンバーが手薄と見られていたG1香港ヴァーズだが、レッドカドー、ダンディーノの2頭が日本行きではなく香港行きの便に乗ることになったのに加え、ブリティッシュチャンピオンズデイの牝馬G1フィリーズ&メアズ(芝12F)を制したシールオヴアプルーヴァル(牝4、父オーソライズド)にも参戦の可能性が浮上している。ここへの遠征を視野に入れているアスカクリチャン(牡6、父スターリングローズ)やダノンバラード(牡5、父ディープインパクト)にとっては、歯ごたえのある敵が揃うことになりそうだ。

 ヴァーズだけでなく、それ以外のカードでも、今年の香港では例年以上に興味深い顔合わせが実現しそうな情勢となっている。

 今週初めに北米から聞こえてきたのが、リトルマイク(セン6、父スパニッシュステップス)のG1香港カップ(芝2000m)参戦というニュースだ。

 昨年、G1BCターフ(芝12F)、G1アーリントンミリオン(芝10F)、G1ターフクラシック(芝9F)と3つのG1を制した同馬。今年は、2戦していずれも大敗したドバイでの競馬を含めて、年初から4連敗を喫したが、9月28日にベルモントパークで行われたG1ジョーハーシュ・ターフクラシック(芝12F)で4度目のG1を獲得。連覇を狙った前走G1BCターフ(芝12F)は、勝ち馬マジシャン(牡3、父ガリレオ)から3馬身半差遅れの7着に終わった。

 リトルマイクは先行馬で、府中よりもシャティンの方が、競馬はしやすいはずだ。ましてや、スタート後まもなく最初のカーブを迎える香港カップで内枠に恵まれれば、自分の競馬に持ち込める可能性が高い。日本のファンとすれば、JC経由で香港へ行ってくれればと思うのだが、第三者的に見れば賢明な選択と言えそうである。

 ブリーダーズCを使った馬では、G1BCターフで2着となったザフーガ(牝4、父ダンシリ)、G1BCフィリー&メアターフ(芝10F)を制したダンク(牝4、父ダンシリ)らにも、香港カップ参戦の可能性が残されている。

 更に、前走G1チャンピオンS(芝10F)2着の仏国調教馬シリュスデゼーグル(セン7、父イーヴントップ)の陣営も既に、G1香港カップ出走を明言している。

 これだけの顔触れを、このレース3連覇がかかるカリフォルニアメモリー(セン7、父ハイエストオナー)、今年の春にG1香港クイーンエリザベス2世C(芝2000m)とG1シンガポール国際C(芝2000m)を連覇したミリタリーアタック(セン5、父オラトリオ)らが迎え撃つとなれば、香港カップは香港国際競走のメインレースに相応しいハイレベルな戦いとなりそうだ。

 G1香港マイル(芝1600m)にも、欧州から相当の顔触れが襲来することになりそうだ。

 中心的存在となるのが、仏国から遠征予定のムーンライトクラウド(牝5、父インヴィンシブルスピリット)である。今季ここまで重賞ばかり4戦し、全て牡馬相手に完勝。G1モーリスドゲスト賞(芝1300m)でこのレース自身3連覇を達成すると、連闘でG1ジャックルマロワ賞(芝1600m)に駒を進め、後にG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)を完勝するオリンピックグローリー(牡3、父ショワジール)を2着に退け優勝。凱旋門賞当日のG1ラフォレ賞(芝1400m)でも強烈な末脚を発揮して3馬身差の楽勝と、まさに向かうところ敵なしの快進撃を展開している馬だ。

 G1・2勝馬で、G1ラフォレ賞では2着だったゴードンロードバイロン(セン5、父バイロン)の陣営も、既に昨年に続く香港マイル参戦を表明。

 9月28日のG1サンチャリオットS(芝8F)で、今季3度目、通算4度目のG1制覇を果したスカイランターン(牝3、父レッドクラブス)にも、香港マイル参戦の可能性が残されている。

 ここまでのレースに比べると、現段階での見込みではいくらか手薄になりそうなのが、連覇をかけてロードカナロア(牡5、父キングカメハメハ)が出走を予定しているG1香港スプリント(芝1200m)である。

 この路線における地元のエースと言うべきラッキーナイン(セン6、父ドバウィー)が、この秋は豪州遠征を敢行。緒戦のG1マニカトS(芝1200m)では2着に健闘したものの、大目標だった11月9日のG1VRCスプリントクラシック(芝1200m)では粘りのない競馬で6着に敗退。厳しい遠征から帰国緒戦となるG1香港スプリントに万全の態勢で臨めるかどうか、疑問符がついている。

 G1マニカトS、G1VRCスプリントクラシックを連勝した豪州調教馬バッファリング(セン6、モズマン)には、当初から香港遠征の意思がない。

 今週末にシャティンで行われる地元の前哨戦G2ジョッキークラブスプリント(芝1200m)で、今年1月に行なわれた香港G1センテナリースプリント(芝1000m)勝ち馬イーグルレジメント(セン6、父エルモクシー)、今年3月に行なわれた香港G1クイーンズシルヴァージュビリーC(芝1400m)2着馬タイムアフタータイム(セン6、父デインヒルダンサー)、シーズンオフを挟んで重賞連勝中の上がり馬スターリングシティ(セン5、父ナディーム)、昨年のG1香港スプリント2着馬セリスチェリー(セン8、父ゴールドキーパー)らがどんな競馬をするかにもよるが、ロードカナロアが現役最後の一戦を華々しく白星で飾るお膳立てが、整いつつあると言えそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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