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ばんえいJRAジョッキーDAY

  • 2013年11月20日(水) 18時00分
ばんえいJRAジョッキーDAY

ばんえいJRAジョッキーDAY



◆今年で7回目のばんえいJRAジョッキーDAY

 今年で7回目となる「ばんえいJRAジョッキーDAY」が、去る11月18日に帯広競馬場にて開催された。昨年までは、夏の北海道開催に合わせて、8月下旬あたりに行われていたのだが、今年は札幌競馬場改修により開催が函館のみとなったため、帯広までの移動距離と所要時間がネックで、実施が遅れてしまったらしい。

 それにしても、この時期の北海道はもう「初冬」のたたずまいである。先々週の門別競馬場では、折からの寒気襲来で雪が降った。帯広は日高などと比べると寒い土地だから、最初にこのイベントの告知を見た時には「大丈夫か?」と心配になったほどだ。しかし、幸運にも、この日は天気予報が良い方に大きく外れ、終日ほぼ晴天微風で温暖な一日であった。

エキシビションレース風景

エキシビションレース風景


「JRAジョッキーDAY」は、年に一度、中央競馬の騎手たちがやってきて、エキシビションレースに出走するイベントである。トークショーもあるし、騎手たちはそれぞれポケットマネーを出し合って「協賛レース」も実施する。

 今年は、七回連続出場となる勝浦正樹騎手を始め、内田博幸、戸崎圭太、松岡正海、後藤浩輝、北村宏司、江田照男、田辺裕信、丸田恭介、丸山元気の各騎手が顔を揃えた。ばんえいはフルゲート10頭なので、10人が参加することになったという。今回は、飛行機の便の関係から関東所属の騎手のみとなった。

 トレセンや競馬場で騎手仲間に声をかけたのは、過去全て参加している勝浦騎手である。「割にすぐ人数が集まってくれて助かりました」と言っていたが、これは勝浦騎手のお人柄によるのではないか。

勝浦騎手

騎手仲間に声をかけた勝浦騎手


 エキシビションレースの発走予定時刻は午後4時40分。あらかじめ枠順と騎乗馬、そしてコンビを組むばんえいの騎手名が決まっており、抽選で馬を引き当てるのではない。出走表は次の通りであった。

1.スズキンショウ 560 丸山元気(菊池一樹)
2.トクマサヒカリ 570 丸田恭介(島津 新)
3.ライトアーム  580 田辺裕信(渡来心路)
4.キンサマ    560 江田照男(松本秀克)
5.ヒロノクィン  550 北村宏司(西 将太)
6.フジノハヤテ  550 後藤浩輝(大河原和雄)
7.フナノセンプー 580 松岡正海(村上 章)
8.タカラダイリキ 550 勝浦正樹(大口泰史)
9.リードヤマト  560 戸崎圭太(西 謙一)
10.シベチャタイガー610 内田博幸(阿部武臣)

 このメンバーの中では610キロの重量を課せられたシベチャタイガーが実力上位とのことだったが、その前にまず「練習」が行われるのが通例だ。今年も初参加(ということは初体験)の騎手が多く、午後3時過ぎより、調教場の一角にある坂(障害)を利用しての試走からスタートした。夫人や家族を伴って帯広入りしている人もいて、練習場はとても和やかな雰囲気に包まれていた。“指導”するのは、ミスターばんえいの異名をとった金山明彦調教師と、久田守調教師の2人。また練習用に用意された2頭のうちの片方は、ギンガリュウセイであった。今年3月のばんえい記念でカネサブラックに続き2着となった実力馬で、10月27日の北見記念を制したばかり。こんな馬を練習台にしちゃって良いのだろうか?と思わぬでもなかったが、次々に各騎手が交代で橇(そり)に乗って、手綱を握る。みんな割に上手にコツをつかんで、1人で坂を越えたりもしている。終始、笑い声が絶えず、一通り騎手たちが練習した後は、夫人や子供たち、取材に訪れていた井上オークスさんも橇に乗せてもらっていた。

後藤騎手の練習風景

後藤騎手の練習風景


 この時期の夕暮れは早く、午後4時にはすっかり日が落ちてしまう。エキシビションレースに出走する各馬にJRA騎手が騎乗し、パドックに姿を現したのは4時半過ぎ。熱心なファンが柵沿いに陣取りカメラを構える。ばんえいの場合は、ここで騎手が出走馬に跨るが、鞍はないので裸馬である。今回は中央の騎手が騎乗し、ばんえいの騎手と厩務員が馬を引くという役割分担であった。

 ばんえい騎手は概して体格が良いが、中央競馬の騎手たちはそれに比べると小柄で細い。にもかかわらず、馬は普段見慣れているサラブレッドの倍も体重のある大型馬だから、パドックで周回する姿は何ともアンバランスに映る。

パドックでの北村騎手

パドックでの北村騎手


 騎乗したまま各馬はスタート地点まで移動し、すぐにスタート時刻がやってきた。40分、ファンファーレが鳴り響き、ゲートが開いた。橇の前部に中央の騎手が乗り、その後方に“本職”が立つ。手綱を握って「追っている」人もいれば、ただ橇につかまっているだけの人もいる。見ているとさすがに“ベテラン”の勝浦騎手は1人で手綱を持っていた。

 抜け出したのは田辺裕信騎手のライトアーム。渡来心路騎手とのコンビで堂々の一着でゴールインした。2着は戸崎圭太騎手のリードヤマト(西謙一騎手)、3着に丸田恭介騎手のトクマサヒカリ(島津新騎手)が入り、全馬が無事にゴールインであった。落馬ならぬ「落橇」はなかった。(過去にはあったのである)

田辺騎手とライトアーム

抜け出したのは田辺裕信騎手のライトアーム


「良い馬でした。跨った瞬間にそう思いました(笑)。良い感じで追走できましたし。また来て乗りたいと思います。見るのも初めてですし乗るのも初めてですが、こういう機会がないとなかなか経験できないので良かったです。サラブレッドとの違いですか?乗ってみると割に共通している部分が結構あるなぁと思います。ただ裸馬に跨った時には、大きいんでさすがに違和感がありましたけどね。先頭でゴールした時ですか?なかなかゴールが遠かったですね。これは伝統あるレースですし、実際に乗ってみると本当に奥深さがありますね。」(田辺裕信騎手)

優勝した田辺騎手

優勝した田辺騎手(写真中央)


 ボランティアにならざるを得ないイベントながら、JRA騎手たちがみんな楽しそうに乗っていた姿が印象に残っている。彼らはもちろん馬券も買い、協賛レースにも協力して、夜の懇親会ではばんえい騎手たちとの交流も行うという内容の濃い一日であった。

内田博騎手と後藤騎手

内田博騎手と後藤騎手


 来年はぜひ札幌開催に合わせて夏の暖かい時期に実現すればと思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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