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実は太のファンだった──濱口楠彦騎手を偲ぶ

  • 2013年12月10日(火) 18時00分
小牧太

増本豊調教師、濱口楠彦騎手との思い出と“激怒”の真相を語ります

11月初旬、JRAの増本豊調教師、笠松の濱口楠彦騎手と、立て続けにホースマンの訃報が飛び込んできました。今回は、そのおふたりとの思い出を語るほか、ユーザーからたくさんの質問が届いた11月2日の“激怒”の真相を語ります。
(取材・文/不破由妃子)



■愛嬌がある半面、シャイな人やったわ

──11月の初旬、立て続けに残念なニュースがありましたね。増本豊調教師と、笠松の濱口楠彦騎手がお亡くなりになって。

小牧 ああ、ビックリしたわ。増本先生のご逝去は、近しい関係者以外では、たぶん僕が一番最初に知ったんちゃうかな。

──そうなんですか?

小牧 うん。調教の帰り、たまたま増本厩舎の馬の後ろを歩いていてね。スタッフに「最近、増本先生を見いへんけど、元気にしてるの?」って聞いたら、「いや、実は亡くなったんです」って。思わず「うそやん!」って叫んでしまったわ。新聞とかで発表があったのは、そのあとですわ。

──そうだったんですね。騎乗数は決して多くはありませんでしたが、サンライズマックスは、最後は小牧さんが主戦でしたね(小牧騎手とのコンビでは、小倉日経オープン2着など)。

小牧 そうやったね。増本先生は元気のいい方でね。トレセンでお会いすると、いつも大きな声で声をかけてきてくださって。ホンマに元気のいい先生やった。いつも坂路で大きな声で指示を出していたんだけど、いつの間にかその姿を見かけなくなってね。気にはなってたんやけど、ご病気だったとは全然知らんかった。

──67歳ですからね、早すぎますよね。濱口さんも、まだ53歳でした。『プライベートで交流はあったのでしょうか? もしあれば、思い出を聞かせてください』というリクエストがきています。

小牧 地方時代は、それほど交流はなかったんやけど、僕がJRAに入ったとき、本を出したでしょう(『泣き虫ジョッキー フトシっ!』オークラ出版)。あの本をね、一生懸命に読んでくれたみたいで。そのあと会ったときに「お前のファンになったわ!」って言ってくれてね。

──それはいつのお話ですか?

小牧 僕が中央に入ってから、笠松に乗りに行ったときですわ。それ以降は、つねに気にかけてくれてね。結局、飲みに行ったりは一度もしなかったけど、よう話すようになりました。

──地方時代というよりも、本をきっかけに距離が縮まったんですね。

小牧 そうやね。ワールドスーパージョッキーズで乗りにきたときも(濱口騎手は06年に参戦)、いろいろ喋ったなぁ。年下の僕がいうのもなんやけど、愛嬌のある人でね。でも、いっぽうではシャイなところがあったりして。それほど交流はなかったとはいえ、昔っから知っていたからねぇ。安藤さんと同期で、僕が新人のころから活躍していた人やから。園田にもよく乗りにきていたし、全日本(アラブ)クイーンCやったかなぁ、今でも覚えているけど、スズノキャスター(通算重賞14勝。アラブの重賞最多勝利記録であり、サラブレッドも含め、牝馬の重賞最多勝利記録)で安藤さんの代打で乗りにきて、ポンと勝っていってね。若いころから、すごく達者な人でしたわ。すごく巧かった。まだ若かったのに…本当に残念です。

──そのひと言に尽きますね。続いては、少々前の出来事になりますが、北村友一騎手が騎乗停止になったレース(11月2日・京都2R)についても、質問がきています(開催4日間の騎乗停止だったが、裁決室内での粗暴行為により2日間が加えられ、開催6日間の騎乗停止に)。

小牧 ああ、裁決室で僕が怒ったから…。

──そうなんです。滅多に怒らない小牧さんが怒ったということで、ユーザーの方も興味を持ったようで。『何が許せなかったのでしょうか?』というような質問がたくさん届きました。

小牧 しょうもないことをしてるからよ(苦笑)。本当に危なかったからね。あれで落ちて、大ケガでもしていたら…。外に馬がいて寄ってきたとかそういうのではなく、何もないところでしたやん。

──パトロールを見直しましたが、確かにまるで小牧さんがそこにいないかのような進路取りではありました。結局、小牧さんは立ち上がってズルズルと…。ラチと馬に挟まれるような格好になりましたものね。

小牧 そうそう。だからすごく腹が立って、ゴール板を過ぎたあと「誰や!」って探したもんね。新人やったらまだしも、あそこまでキャリアのあるジョッキーが、あんなことをしとったらアカンわ。それこそ、あんなことで騎乗停止になって、損をするのは彼自身やから。

小牧太

あんなことで騎乗停止になって、損をするのは彼自身



──馬がフラッと内にヨレたんでしょうね。

小牧 そうだと思うけど、立て直さなアカンよね。2歳の若馬やからフラフラするし、ラチを頼るから。若馬はそういうことを見越して騎乗せな。

【次回の太論は?】
 「アオる」「脚が上がる」「踏み遅れる」などなど、ユーザーからの質問に答えるかたちで、小牧騎手が競馬用語&ジョッキー用語を徹底解説。このほか、続々寄せられる素朴な疑問に、真っ向から答えます!
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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