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今週は“前半戦の総決算”とも言うべきビッグレースが立て続けに開催

  • 2013年12月25日(水) 12時00分


◆11月から5月までが本格的な障害シーズンとなる欧州

 今週の月曜日から水曜日まで、英国と愛国ではどこの競馬場を訪れても開催は行なわれていない。

 3月末からから11月上旬までが芝平地のシーズンで、11月から5月までが本格的な障害シーズンとなる欧州では、週末に限らず平日も含めて、年がら年中どこか競馬をやっている。そんな中、クリスマスを前にした3日間だけは、ピタッと足並みを揃えて開催を休み、1年でこの時季だけにある「競馬の空白期間」となる。ちなみに隣国仏国では、23日にはドーヴィルで、25日にはポーで開催があり、24日が空白日となっている。

 そのかわり、クリスマスが明けると、“待ってました”とばかりに競馬が再開。ボクシングデイと呼ばれる国が定めた休日の26日には、英国と愛国の2か国だけで13もの競馬場で開催が組まれている。

 そして、26日から週末の29日にかけては、シーズンの折り返し点を迎えた障害戦で、前半戦の総決算とも言うべきビッグレースが立て続けに開催されるのだ。

 まず26日には、スティープルチェイス・3マイル路線の大一番であるG1キングジョージ6世チェイス(芝24F)が、ケンプトン競馬場を舞台に行なわれる。

 今年は9頭立て。シーズン後半の大一番G1チェルトナムGC(芝26F110y)へ向けた前売りで上位人気に推されている、シルヴィニアーココンティ(セン7、父ドンアルコ)、ディナスト(セン7、父マルタリーン)らも出走予定だが、彼らを退けて当日1番人気に推されそうなのがキューカード(セン7、父キングズシアター)である。

 スティープルチェイス転向2シーズン目だった昨季、緒戦となったエクスターのG2ハルドンゴールドカップチェイス(芝17F110y)でスティープルチェイス重賞初制覇。更に3戦目となったアスコットのG1ベットフェアアスコットチェイス(芝21F110y)でG1初制覇。続くチェルトナムのG1フェスティヴァルトロフィーチェイス(芝21F)も連勝し、路線の最前線に躍り出たのがキューカードだ。今季2戦目となった前走、11月23日にヘイドックで行われたG1ランカシャーチェイス(芝25F)で、2着ディナストに4馬身半差をつけて3度目のG1制覇を果たし、このレースに臨んで来る。

 昨季のG1フェルトハムノーヴィスチェイス(芝24F)を含めて重賞4勝の実績を誇り、G1ランカシャーチェイスが今季初戦だったディナスト、昨季のG1ランカシャーチェイスを含めて重賞5勝の実績を誇るシルヴィニアーココンティ、今季ここまでチェルトナムのG3パディーパワーゴールドカップチェイス(芝20F110y)、アスコットのG2アムリン1965チェイス(芝19F)を連勝中と好調のアルフェロフ(セン8、父ドムアルコ)らが、上位人気に推される馬たちだ。

 26日のケンプトンでは、ハードル2マイル路線のG1クリスマスハードル(芝16F)も組まれている。ここは、チェルトナムフェスティヴァルの大一番G1チャンピオンハードル(芝16F110y)へ向けた前売りで1、2番人気に推されている両馬がいずれも出走を予定しており、一騎討ちムード濃厚だ。

 ほどんどのブックメーカーが2倍から2.1倍、中にはラドブロークスのように“オッズオン”の1.91倍というオッズを掲げているのが、ザニューワン(セン5、父キングズシアター)である。

 ハードル転向初年度だった昨シーズンの成績が6戦4勝。3戦目となったワーウィックのG2リーミングトンノーヴィスハードル(芝21F)で重賞初制覇。5戦目となったチェルトナムのG1バーリングビングハムノーヴィスハードル(芝21F)でG1初制覇と、トントン拍子に出世の階段を上がったザニューワン。これまでの戦績を御覧いただければおわかりのように、昨季は20F路線を歩んだ同馬だったが、ハードル2シーズン目の今季は16F路線に転身。緒戦となったケンプトンのLRダウンロードザエーピーピーハードル(芝16F)、前走チェルトナムのG2インターナショナルハードル(芝17F)を連勝し、ここへ臨んで来る。

 一方、ブックメーカー各社2.0倍〜2.2倍というオッズを掲げ、僅差の2番人気となっているのがマイテントオアユアース(セン6、父デザートプリンス)だ。

 この馬もザニューワン同様、昨シーズンがハードル転身初年度で、成績もザニューワン同様6戦4勝。4戦目となったニューバリーのG3ベットフェアハードル(芝16F110y)で重賞初制覇。続くチェルトナムのG1シュプリームノーヴィスハードル(芝16F110y)2着の後、エイントリーのG2オルダーヘイトップノーヴィスハードル(芝16F110y)で2度目の重賞制覇を果たして昨シーズンを終了している。前走、今季初戦となったニューャッスルのG1ファイティングフィフスハードル(芝16F)でG1初制覇を果たして、勢いに乗っての参戦となっている。

 週末になると、まずは28日(土曜日)にレパーズタウンで、愛国におけるスティープルチェイス3マイル路線の大一番G1レクサスチェイス(芝24F)が組まれている。そしてここに、チェルトナムフェスティヴァルの一大決戦G1ゴールドカップチェイス(芝26F110y)へ向けた前売りで、目下1・2番人気に推されている2頭が出走を予定しているのである。

 このレース、各社2.75〜3.25倍のオッズを掲げ1番人気に推しているのが、ボブズワース(セン8、父ボブバック)だ。

 スティープルチェイス転向初年度だった12年のチェルトナムフェスティヴァルで、G1RSAチェイス(芝24F110y)を制して脚光を浴びた同馬。2シーズン目の昨季は2戦しただけだったが、ニューバリーのG3ヘネシーゴールドC(芝26F110y)と、チェルトナムフェスティヴァルのメイン競走であるG1ゴールドカップチェイス(芝26F110y)を制し、名実ともにこの路線の頂点に立つことになった。ただし、今季初戦となった前走、11月23日にヘイドックで行われたG1ランカシャーチェイスでは、1番人気を裏切りまさかの6着に大敗。久々だったのに加え、スタミナよりはスピードを要求される馬場と展開に対応出来なかったのが敗因と言われている。ゴールドC連覇に向けて視界が開けるかどうか、ここが正念場となりそうだ。

 各社3.5〜3.75倍の2番人気に推しているのが、サーデシャン(セン7、父ロバンデシャン)だ。スティープルチェイス転向初年度だった11/12年シーズンを、5戦5勝。パンチェスタウンのG1グローワイズチャンピオンノーヴィスチェイス(芝25F)を含めて重賞4勝の成績で突っ走り、一気にスターダムを駆け上がった同馬。緒戦のG1ジョンダーカンメモリアルパンチェスタウンチェイス(芝20F)2着、続くレパーズタウンのG1レクサスチェイス(芝24F)4着と、昨季前半は前年の勢いが無かったが、3戦目となったG1愛ヘネシーゴールドC(芝24F)で勝利を収め2度目のG1制覇。更に5戦目となったG1パンチェスタウンゴールドC(芝25F)でも勝利を収め、昨シーズンを締めくくっている。ところが、今季初戦となった前走、12月8日にパンチェスタウンで行われたG1ジョンダーカンメモリアルパンチェスタウンチェイスでは、第3障害で飛越に失敗して競走を中止。ハードル時代を含め、14戦目にして初めて経験した落馬だけに、精神的ダメージが懸念されるところだ。

 レパーズタウンでは29日(日曜日)に、愛国におけるハードル16F路線の大一番G1ライアンエアディセンバーフェスティヴァルハードル(芝16F)も組まれている。そしてここに、この路線におけるシーズン後半の一大決戦G1チャンピオンハードルへ向けた前売りで、目下のところ3〜5番人気に推されている馬たちが出走を予定している。

 このレース、各社1.67倍〜1.73倍の圧倒的1番人気に支持しているのが、ハリケーンフライ(セン9、父モンジュー)。10年と12年にこのレースを制覇しているのに加え、11年と13年にはチェルトナムフェスティヴァルのG1チャンピオンハードルにも優勝。今季初戦となった前走、11月17日にパンチェスタウンで行われたG1モーギアナハードル(芝16F)を制し、歴代最多新記録となる通算17度目のG1制覇を達成した、障害界の名馬である。

 各社3.0〜3.5倍のオッズで2番人気に推しているのが、アワコナー(セン4、父ジェレミー)だ。ハードル転向初年度だった昨シーズン、4戦4勝。チェルトナムフェスティヴァルのG1JCBトライアンフハードル(芝17F)を含めて重賞3勝という成績を挙げ、この路線の新興勢力として台頭することになった馬である。10月20日にナースで行なわれた平地のハンデ戦(芝12F)を使われ4着となってここへ臨む同馬。ここで、5歳年上のハリケーンフライを撃破し、世代交代の実現を目論んでいる。

 各社4.5〜5.0倍のオッズを掲げて3番人気に推しているのが、ジェズキ(セン5、父ミラン)だ。本馬もアワコナー同様、昨季がハードル転向初年度で、成績は6戦5勝。パンチェウタウンのG1ヘラルドチャンピオンノーヴィスハードル(芝16F)など、3つのG1を含む4重賞を制する活躍を見せている。今季もここまで、ダウンロイヤルのG2WKDハードル(芝16F)、フェアリーハウスのG1ハットンズグレイスハードル(芝20F)を連勝。波に乗ってこのレースに挑んで来る。

 今週後半は、まさに競馬ファンにとって堪らぬ日々が続くのがヨーロッパだ。3月のチェルトナムフェスティヴァルをより面白く観るためにも、今週行なわれる主要障害戦の結果に皆様もぜひご注目いただきたい。


■お知らせ■
次回の更新は、年明けの1/8(水)になります。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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