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2013年WTR確定版から欧州調教馬・2歳馬ランキングの検証

  • 2014年01月22日(水) 12時00分


◆牡馬の首位は122でトゥアモア、牝馬の首位は117でクリセリアム

 1月16日に発表された2013年ワールドサラブレッドランキング確定版から、ヨーロッパ調教馬を対象とした2歳馬ランキングの検証を行なってみたい。

 首位に立ったのは、英国のリチャード・ハノンが管理するトゥアモア(牡、父アラカン)で、レイティングは122だった。

 過去10年の「2歳首位」を振り返ると、一番評価が高かったのが、07年のニューアプローチ、10年に首位を分け合ったドリームアヘッドとフランケルの3頭で、レイティングは126だった。逆に一番低かったのは、11年に首位を分け合ったキャメロットとダビルシムの119で、トゥアモアの122は08年のマスタークラフツマンと横並びで「下から2番目」の数字だ。1978年に欧州2歳クラシフィケーションの名でスタートした時代に遡っても、トゥアモアより低い数字で2歳首位となったのは、前述の2頭以外には、1992年に120で首位になったグランドロッジしかいないから、残念ながらトゥアモアは評価があまり高くない2歳チャンピオンと言えそうである。

 一方、レイティング110以上を与えられた2歳馬の数は51頭。前年は42頭だったから、前年よりは「層の厚い」2歳世代だったことになる。ただし、前年の42頭というのは2005年と並んで2001年以降では最少の数字で、過去10年の平均が52頭だから、2013年2歳世代の勢力規模は極めて一般的なものと言えそうだ。

 2歳牝馬の首位は、英国のチャーリー・ヒルズが管理するクリセリアム(牝、父イフラージ)の117。過去10年に照らし合わすと、07年のザルカヴァ(119)、06年のフィンスケールビオ(119)、08年のレインボウビュー(118)に次いで、09年のスペシャルデューティ、04年のディヴァインプロポーションズと横並びの第4位だから、こちらは2歳牝馬チャンピオンとしては悪くない評価となっている。

 2歳首位のトゥアモアに話を戻すと、同馬は12年8月に行なわれたドンカスター・プレミアイヤリングセールという、1歳馬マーケットとしては二流のセール出身馬だ。父アラカンはヌレイエフの直仔で、現役時代はG3に2勝したもののG1での好走実績はなかった。トゥアモアは父の5世代目の産駒になるが、ディックターピンというマイルG1・2勝を出してはいたものの、父は一流種牡馬とは言い難く、更にトゥアモアの牝系もまた叔父にG3入着馬がいる程度と平凡で、それでも3万6000ポンド(当時のレートで448万円)という“そこそこ”の値が付いたのは、当時から馬体の作りが良かったゆえと推察される。

 5月28日という早期デビューを果たし、レイスターのメイドン(芝5F218y)を制して初戦勝ち。続いて7月31日にグッドウッドで行なわれたG2ヴィンテージS(芝7F)に挑んで重賞初挑戦初制覇を果たすと、9月15日にカラで行なわれたG1ナショナルS(芝7F)に駒を進め、このレースを2.3/4馬身差で快勝。そのパフォーマンスが評価されて2歳首位となった。

 2014年最初の目標は、当然のことながら5月3日にニューマーケットで行なわれるG1・2000ギニー(芝8F)になるが、アンティポストマーケット(前売り市場)では、オッズ9〜12倍の3〜5番人気という評価となっている。

 2歳ランキング第2位が、G1レイシングポストトロフィー(芝8F)を含めて2戦2勝の成績で2歳シーズンを終えたキングストンヒル(牡、父マスタークラフツマン)で、レイティング120。同馬は、2000ギニーの前売りがオッズ10〜12倍の3〜5番人気、G1英ダービー(芝12F10y)へ向けた前売りがオッズ7〜12倍の2番人気となっている。

 ブックメーカー各社が2000ギニーの本命に推すのが、G3ソラリオS(芝7F6y)を含めて2戦2勝で3歳シーズンを終えたキングマン(牡、父インヴィンシブルスピリット)だが、2歳ランキングにおける同馬の評価はレイティング111で、序列的には31位タイに並ぶグループの一員に過ぎない。またブックメーカー各社がダービーの大本命に推すのが、G3BCジュヴェナイルターフトライアル(芝8F)を含めて2戦2勝で2歳シーズンを終えたオーストラリア(牡、父ガリレオ)だが、こちらも2歳ランキングにおける評価はレイティング117で序列6位と、2013年の2歳牡馬はレイティングにおける評価と前売り市場における評価に乖離が見られるのが特徴の1つとなっている。

 2歳牝馬首位のクリセリアムもまた、タタソールズ・オクトーバーセール・ブック2にて4万ギニー(当時のレートで約533万円)で購入された馬だから、市場における評価が高かった馬ではない。父イフラージは、2歳勝ち馬を量産することで知られた種牡馬で、市場でもまずまずの人気はある馬だ。祖母がG3勝ち馬で、G1リディアテシオ賞勝ち馬エヴァズリクエスト、G1モイグレアスタッドS勝ち馬プライオリーベルと、叔母に2頭のG1勝ち馬がいる牝系は相当の水準にあり、4万ギニーというのは購買側から見ると思いがけぬバーゲン価格だったと言えそうだ。

 2歳時の成績6戦3勝。ニューマーケットのG1フィリーズマイル(芝8F)を制して重賞初制覇をG1で果した後、北米に遠征してG1BCジュヴェナイルフィリーズターフ(芝8F)を2.1.2馬身差で快勝した。当然のことながら、今季のG1・1000ギニー(芝8F)へ向けた有力候補と目されているのだが、年明けの1月16日(木曜日)、同馬を管理するC・ヒルズ調教師から、後肢の蹄が感染症にかかり調整が遅れている旨の発表があり、一部のブックメーカーは同馬を1000ギニーの前売りリストから外す事態となっている。

 現時点で、ブックメーカー各社が6〜7倍のオッズを掲げて1000ギニーの前売りで1番人気に推しているのは、仏国のA・ファーブルが管理するミスフランス(牝、父ダンシリ)だ。デビュー2戦目のシャンティーの条件戦(芝1600m)で初勝利を挙げた後、英国に遠征してニューマーケットのG3オーソーシャープS(芝7F)で重賞初挑戦初制覇を果たした同馬。レイティングにおける評価は、112で2歳牝馬第4位タイとなっている。

 また、G1英オークス(芝12F10y)へ向けた前売りで各社が9〜13倍のオッズを掲げて1番人気に推すのが、愛国のA・オブライエンが管理するタペストリー(牝、父ガリレオ)だ。2005年のヨーロピアンクラシフィケーションでレイティング116を獲得して2歳牝馬の首位に立ったランプルスティルトスキンの3番仔にあたる同馬。カラのメイドン(芝6F)でデビュー勝ち後、同じくカラのデビュータントS(芝7F)で重賞初挑戦初制覇。続いて挑んだカラのG1モイグレアスタッドS(芝7F)は、3着入線2着繰り上がりで2歳シーズンを終えている。ミスフランスと同じ112で2歳牝馬第4位タイというのが、同馬のレイティング面での評価となっている。

 欧州における芝平地シーズンの開幕まで、あと2か月余りとなったが、有力馬たちが無事に調整され万全の状態でシーズンインを迎えることを期待したい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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