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ジャスタウェイ・大和屋暁オーナー(1)『狂喜乱舞の天皇賞・秋』

  • 2014年03月03日(月) 12時00分
おじゃ馬します!
初めての所有馬がいきなりGI馬に。しかも、勝ったのは伝統のGI、天皇賞・秋。今月は、ジャスタウェイを所有する強運のオーナー・大和屋暁さんをゲストにお迎えします。人気アニメ『銀魂』の脚本家という、馬主では異例の職業。謎深い大和屋オーナーの素顔とは。(聞き手:赤見千尋)


◆これまでのうっ憤晴らす快勝劇

赤見 愛馬のジャスタウェイが去年の天皇賞・秋を優勝。大和屋さんも、一躍GIオーナーになられました。それにしても、あのレースはびっくりする強さでしたね。

■天皇賞・秋レース映像

天皇賞・秋レース映像 映像

大和屋 そうですね。それまではいったい何だったんだっていう(笑)

赤見 あの弾け方は、それまでの重賞連続2着、2着、2着を帳消しにしましたよね。当日を迎えて、どんな心境でしたか? 結構ドキドキ?

大和屋 自分の馬が走る時はいつも緊張するので、お酒を飲んでしまうんです。だから、あの時もレース前からちょっと酔っぱらっていました。

赤見 そうだったんですか。パドックでは、福永騎手とどんな会話を?

大和屋 あの時「俺偉いな」と思ったのは、福永さんに「僕らをドバイに連れて行ってください!」って言ったんです。「って、須貝さんに言えと言われたので言いました」って、そういう言い方なんですけどね(笑)。福永さんも「いいですね、ドバイ」って。そうしたら、このザマですよ。恐ろしい。

赤見 現実になってきている…。私、あの時ゲート横でレポートをさせてもらったんですけど、ジャスタウェイがすごくカッコ良く見えたんです。レースを見ていてどうでしたか?

大和屋 びっくりしました。だって、むっちゃくちゃ手応えが良かったじゃないですか。

赤見 直線であっという間に先頭立って、ぐいぐい突き放しましたもんね。声は出ましたか?

大和屋 出ました。それこそ「ジャスーーーッ!」って、レース中ずっと叫びっ放しで。そして、1着でゴールして、頭がおかしくなりましたね。口取りの写真を撮っている時も挙動不審だったという。「大和屋さん、跳ねてましたよね?」って言われて、「本当ですか?」って。

赤見 跳ねてた(笑)。表彰式では、あの立派な盾を持たれて、すごく凛々しい表情に見えました。

大和屋 本当ですか!?「ちゃんと髪を切っておけば良かった」とか「しまった! ネクタイもちゃんと結んでおけば良かった」って、後悔しっ放しでした。パッとスタンドの方を見たんです。そうしたら、親戚が来ていたんですよね。しかも、結構人数が多い。

赤見 応援に来られていたんですか。

大和屋 そうそう。俺よりデカイ親戚がいるんですよ。198cm。そいつが「うわあぁぁぁ!」って飛び跳ねているから、目立つ目立つ(笑)。

赤見 皆さん競馬がお好きなんですね。

大和屋 いや、そうでもないかもしれない。やっぱりジャスタウェイがいて、皆が応援してくれるようになりましたね。

おじゃ馬します!

▲関係者皆が喜び合った天皇賞・秋(撮影:下野雄規)


◆神経をすり減らした1か月

赤見 それにしても、一頭目の所有馬がGIを勝って、しかもそれが天皇賞だなんて。

大和屋 ねぇ。おかしいっていうか、普通はないことですからね。自分でもすごいと思います。

赤見 勝つ予感はあったんですか?

大和屋 流れはちょっと来ているかなっていうのはありました。というのも、除外対象だったじゃないですか。出られるのか出られないのか…、毎日王冠が終わった瞬間から、1か月間ずっとそんな感じでしたよ。1週前登録の時点で20番目でしたからね。「これじゃあダメだ…」って。

赤見 1か月間もずっと悶々とした日が続いたなんて…。そうしたら、直前になって、回避する馬が出たり、マイルCSに変える馬が出たりして。

大和屋 そうそう。そんなこんなで出られそうになったところで、台風ですよ。

赤見 そっか。去年は台風が多かったですもんね。

大和屋 そうなんですよ。まぁ、幸い台風が来るのも早まって、当日は良馬場。「あぁ、良かったな」と思いましたね。そういう感じで行くと、ちょっと流れは来てるんじゃないのって思っていました。

赤見 いろいろな試練を乗り越えての勝利だったんですね。これも運の強さ。レースの後にネットを見ていたら、アニメファンが「えっ!? ジャスタウェイが勝ったって何、何?」「競馬だよ、競馬」「ジャスタウェイすげぇ!!」みたいなやりとりをしていて。競馬ファンだけではなくアニメファンも盛り上がっていて、すごいなと思いました。周りにも、競馬ファンのアニメ関係者っていらっしゃるんですか?

大和屋 いますよ。アニメの関係者に「馬主席に連れて行ってくれ」ってよく言われます。競馬が好きな人は、大体好きなんですよ。でも、競馬を知らない人でも、一緒に仕事をしている人は「そうなんだ、ジャスタウェイっていう馬を持ってるんだ」というところから始まって、「結構強いんだね」みたいな感じになりますね。

赤見 ジャスタウェイがきっかけになっているんですね。現在所有されている3頭すべてが、マンガ『銀魂』のキャラクター名が馬名になっていますが、マンガのジャスタウェイって、キャラ的にはすごく可愛いんですけど……、爆弾ですよね(笑)。「あ、ジャスタウェイなんだ」っていう感じでした!

大和屋 でしょう? 絶妙でしょう? 知ってる方々は結構誉めてくれますよ。

赤見 本当に絶妙! でも、何でジャスタウェイだったんですか?

おじゃ馬します!

▲赤見「“ジャスタウェイ”を選ばれたのは絶妙!」


大和屋 主要キャラの名前は付けたくなかったんです。あまり洒落が利いてない感じがするじゃないですか。そこで言うと、『銀魂』の中で一見カッコ良さげで、ちょっとアホくさいキャラクターって何だろうって。

◆「馬主になろう」と思った時

赤見 なるほど。馬のジャスタウェイは、マンガのジャスタウェイとはまた違う魅力がありますね。馬主になられてこれだけの馬が出てくると、世界も広がっていくんじゃないですか?

大和屋 そうですね。馬主さんっておもしろい方が多いですから、いろいろ勉強になります。それぞれの分野で勝ち抜いてきた人達ですから、すごいですよ。

赤見 いや、大和屋さんもすごい……(笑)。

大和屋 俺は最下層の馬主なので、他の方たちと比べてはダメです。あの方たちはしっかり仕事をされていて、巨大な資産をお持ちになっているじゃないですか。俺はそうじゃないですからね。1回失敗すると、そのまま落ちて行きますから。いつまで続けられるか…。

赤見 でも、今のところはプラス?

大和屋 まぁ、それはそうでしょう。これでマイナスだったら大変だ(笑)。

赤見 そうですよね。GIも勝たれているんですからね。馬主になることはいつ頃からの夢だったんですか?

大和屋 高校生の時ですね。オグリキャップの全盛期で「競馬って面白いな」って。それで「いつか馬主になれるといいよな」的な話をしませんか? しないですか?

赤見 ええと、、、「馬主になる」まではなかなか。「競馬場に行こうよ」というのはありますけど。やっぱりスケールが違いますね。

大和屋 いやでも、それだったら赤見さんの「騎手になる」っていうのは、すごいじゃないですか。俺なんか、既に小学校の時で無理ですよ。高学年の時に170cmも身長がありましたから。

赤見 小学校で!? じゃあ、そういう意味でも、夢を叶えるためにお仕事に励まれたというか。

大和屋 そうですね。がんばってお金を貯めました。(Part2へ続く)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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