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オータムセール終了

  • 2003年10月28日(火) 11時43分
 去る10月20日より24日までの5日間にわたり静内の北海道市場で開催されたオータムセールは、初日の当歳が162頭上場に対し売却46頭(売却率28.40%)、売却総額4億2935万円。二日目以降の1歳馬は上場755頭、売却227頭(売却率30.07%)、売却総額7億2216万円(以上サラブレッド)。最終日のサラブレッド市場終了後に行われたアングロアラブ1歳馬市場は49頭の上場に対して18頭が売却(売却率36.73%)、総額2790万円という結果を残した。

 結論から先に言うと、「予想していたよりも売れた市場だった」という印象ではある。サラブレッド1歳に限って見れば、昨年の10月市場と比較すると、売却率で6.5%程度も上回ったことになり、少なくとも取引自体は活発に行われたことになる。

 ただし、残念ながら、売却率は昨年を上回ったものの、平均価格はかなり下落した。サラブレッド1歳の場合、今回の市場の平均価格約318万円。昨年が391万円余だったことを考えると、やはりかなりの落ち込みなのだ。

 これをどう分析するかは人によって意見の分かれるところだろうが、まず言えることは昨年が11月まで市場を開催していたこともあり、10月には(この時期に及んでも)まだ“買い控えムード”が購買者にあったのではないか、ということ。それが今年はこの10月の市場が事実上の最終セールとなったことで、一定の需要を生み出したのかも知れない。売却率の上昇した要因はそのあたりにあるのではないか。

 とはいえ、平均価格の下落は、間違いなくその分だけ「サラブレッドが安くなっている」ことを窺わせる。中央競馬の本賞金こそ横ばいだが、後の諸手当などはいずれも削減されつつあり、“馬主経済”は決して楽ではないはず。まして、ひとたび地方競馬に目を転じると、状況の悪化は著しい。依然として存廃問題が燻る競馬場も少なくないし、開催は続行していても、本賞金や諸手当を大幅に減額することで開催経費を圧縮し、赤字体質から脱却しようとする主催者が多いのだ。

 このような背景が、昨今の市場価格に反映している点は否めない。それでも「いくら安くとも、ここで売却しておかなければ、これから先はもっと厳しくなる」と生産者は一様に考えている。

 かくして、大幅なダンピングを断行し、“一山いくら”のような感覚で上場馬を売りさばいてきた知人もいる。それもやむを得ない選択なのだ。「競走馬になれるだけまだまし」「自分で使ったところで赤字をもっと増やすだけ」と、割り切っている。

 そんなことはとてもできない、と考える生産者は、来春の2歳トレーニングセールに向けてどこかの育成牧場に生産馬を預けるか、あるいはさしあたり道営にでも入厩させて認定レースを目指すか、とりあえずこのどちらかだろう。

 だが、道営とて、決して甘くはない。先日とある調教師に聞いたところでは、今年の2歳馬の道営入厩はついに900頭にまで達した、とのこと。「ここ数年、かなり2歳馬の数が増えているという実感がある」そうだ。「生産者が欠点の多い売れ残りの生産馬を入厩させても、現実はなかなか勝ち切れないんですよ。今はレベルが高いからね」と厳しい表情で語っていたのが印象に残った。

 厳しい、という台詞は、この欄で幾度となく使っており、手垢にまみれた感がなきにしもあらずだが、改めて本当に「厳しい」ことを痛感せずにはいられない。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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