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三冠達成なるか?!ハッピースプリントと吉原寛人騎手の挑戦

  • 2014年04月22日(火) 18時00分
吉原寛人騎手

ハッピースプリントで南関東三冠狙う吉原寛人騎手



◆吉原寛人騎手「3歳でこれだけのクオリティを持ってて、ここまで安心感がある馬っていうのは、僕は初めて出会いましたね」

南関東の三冠レースが、現在の「羽田盃」「東京ダービー」「ジャパンダートダービー」に変更されてから、未だ三冠馬は生まれていません。激戦区の南関東で、一冠目の「羽田盃」、二冠目の「東京ダービー」を続けて制することも難しい上に、中央勢と激突する三冠目が、大きな壁として立ちはだかります。しかし今年は、「全日本2歳優駿」で並み居る中央勢を撃破したハッピースプリントが登場。金沢の吉原寛人騎手を背に、史上初の偉業に挑戦します!

赤見:まずは4月23日に大井競馬場で行われる一冠目、「羽田盃」に向けての調整をお聞きしたいんですが、1週前追い切り、本追い切りと、金沢から乗りに行ったそうですね。

吉原:やっぱり、これだけの馬ですから。出来ることはすべてやって、万全の態勢で挑みたいじゃないですか。

1週前追い切りは、前走「京浜盃」の時の追い切りの感覚で乗ったら、思った以上に時計が出てしまって…。前走の時は、パワーというよりもキレイな飛びで、スーッと進んで行く馬だなっていうイメージだったんです。でも一度使ったらスイッチが入って、すごくパワフルで力強くなっていました。これがハッピースプリント本来の姿なんだなと感じましたね。「こんなに変わるんだ…」って、ちょっとビックリしました。もう体は出来ているので、19日の本追い切りは息を整えるイメージで。直線まで我慢させて、最後1ハロンの反応を見たんですけど、抜群の動きでした。「京浜盃」の時よりも、もう一段上がっていると思います。

赤見:前走「京浜盃」では初めてコンビを組んだわけですけど、厩舎としても転厩初戦でしたし、手さぐりの部分も多かったんじゃないですか?

吉原:そうですね。休み明けでもあったし、このくらいの調教でどのくらい走ってくれるのかなとか、さぐりながらの調整でした。

レース自体は自信を持って、全体の様子を見ながら騎乗しました。大目標は「東京ダービー」ですから、出来れば無理をさせずに勝ちたいという気持ちがあって。だから、着差はそれほどなかったですけど、次に向けていいレースが出来たと思ってます。

赤見:実際に騎乗してみて、この馬の印象はいかがですか?

吉原:この馬は本当に手が掛からないというか、自由自在に動いてくれるんです。普通オープン馬だったら力もものすごく強いですから、気合が乗ってハミを取り出したらなかなか収まらないじゃないですか。でもこの馬は、13とか出てる追い切りの途中でも、15にペースダウンしようとしたら落とせると思うんですよ。GOサインを出してからでも融通が利くんです。乗り手の意思を感じて、その通りに動いてくれる。そして、その動きを可能にする体と心臓の強さを持っているんです。3歳でこれだけのクオリティを持ってて、ここまで安心感がある馬っていうのは、僕は初めて出会いましたね。

京浜盃

京浜盃では1.1倍の圧倒的人気に応えた吉原寛人騎手とハッピースプリント



赤見:ハッピースプリントは年末の「全日本2歳優駿」を勝って、2歳でNAR年度代表馬にも選ばれました。これだけの馬の騎乗依頼が来た時は、どんな気持ちでしたか?

吉原:嬉しかったですね!今は全国どこの地区の重賞でも、騎乗依頼があればその日だけ乗れるじゃないですか。それで2、3年前からスポットで門別で騎乗しているんですけど、その時に辻牧場さんとお会いする機会があって、気に入っていただいて。「いつかダービーを狙える馬が出たら頼むね」って言ってもらってたんです。今年本当にダービーを狙える馬が出て来て、でも南関東の騎手もたくさんいるし、これまで騎乗していた宮崎光行騎手もいらっしゃる中で、本当に僕に依頼していただいて…。すごく嬉しかったですし、感謝の気持ちでいっぱいです。

赤見:南関東で「東京ダービー」を目指す時に、他地区の競馬場の騎手を主戦に据えるというのは、なかなかないですもんね。

吉原:そうですよね。「東京ダービー」はまだ他の地区の騎手は勝っていないですし。だからね、何て言うか…辻牧場さんがせっかく僕を選んでくれた中で、「何で吉原なんだ?」って周りから言われたくなかったんですよ。それで、今年の初めに期間限定騎乗で2か月間南関東で騎乗したんですけど、「絶対に上位に入ってやろう」って思ってました。結果的にリーディングで騎乗を終えることが出来たので、自分にとっても自信になりました。

赤見:2か月間、南関東のリーディングを走ってみて、いかがでしたか?

吉原:周りの空気は変わりましたね。応援してくれる関係者は増えましたし、ジョッキーたちの視線も変わった気がしています。いい緊張感だったし、南関東で追いかけられる立場を経験出来たことは、本当に宝物ですね。

赤見:1年通して南関東で乗れれば…という気持ちにならないですか?

吉原:まぁそういう気持ちもないではないですけど、現行のルールの中で、色々な場所で乗せてもらってますから。本当に有難いですよ。スポットで乗れるレースは全部乗りに行ってるし、今後もたくさん依頼をいただいているんです。遠征中心のスケジュールなので、金沢の調教が出来ない日が多いんですけど、それでも乗せてもらえるので、地元の人たちにも感謝しています。

赤見:では、今後の目標を教えて下さい。

吉原:今はなんといってもダービーに賭ける想いが強くて。一昨年の「東京ダービー」は、森下厩舎で同じ馬主さんのワンツーだった(1着プレティオラス、2着プーラヴィーダ、馬主は伊達泰明氏)じゃないですか。応援してくれる森下厩舎が勝って嬉しかったんですけど、僕は2着だったので悔しい気持ちもありました。その時森下先生から、「吉原くん、絶対ダービー獲らせてあげるから」って声掛けていただいて。辻牧場さんもそうですけど、今回は本当に色々なことが繋がってるなと思います。

京浜盃でのパドック

いろいろな人との繋がりで三冠レースに挑む吉原寛人騎手(写真は京浜盃でのパドック、撮影:秋田 奈津子)



まずは「羽田盃」「東京ダービー」を勝つ!そして、三冠に繋げられたら…。金沢の騎手が南関東で三冠を獲るなんて、夢みたいな話ですけど。でも実現したら、まだまだ閉鎖的な地方競馬全体にも、新しい風が起こせるんじゃないかなと思います。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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