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【プロローグII】『騎乗停止で知った“欲のコントロール”の難しさ』

  • 2014年04月22日(火) 18時00分
祐言実行



■自分を奮い立たせるために演じた“ビッグマウス”

 自分なりのアプローチでトップを目指そうと決意し、コーチを付けたのが2010年。コーチといっても、あくまで動作解析のプロで、乗馬経験がある人ではなかったから、コーチの言う通りにカリキュラムをこなしたところで、騎乗技術が向上するとは限らなかった。

 ただ、トレーニングや体のケアに関しては、若いころからアンテナを張っていたし、実際、いいと聞けばとりあえずやってみる、ということを繰り返してきた。まずはやってみてから自分で取捨選択をする、というのが長年のスタンスだったから、コーチを付けたときも最初に思ったのは、提示されたカリキュラムに対して、一切口を挟まないでおこうということ。最初は、“えっ!? こんなことが技術向上につながるの?”っていう驚きの連続だったけれど、実際、コーチを付けた2010年に関西リーディング、翌年にはJRAリーディングを獲ることができて、すごく自信になったね。そこに至るまでのカリキュラムの内容についても、機会を見てこのコラムのなかで触れていければと思っている。

 スポーツ選手に限らず、どんな職業でもそうだと思うけれど、頑張ればそのぶんだけ結果が出るわけではない。結局は、その頑張る方向というか、押さえるポイントがわかっているか、わかっていないか。その差が仕事の出来不出来につながってくると思っている。自分は体を動かすことがそれほど好きではないし、トレーニングはどちらかといえば嫌いだ。だから、無駄なことをしたくないという思いが常にある。それが結果的に、取捨選択を慎重にさせているんだと思う。

 意識改革につながったひとつに友人からの叱咤があって、そのときに「自分がトップに立っている状況をイメージして、自分ならできると思い込め」と強く言われた。それ以来、自分に言い聞かせ、また自分を奮い立たせるためにも、「自分がこれからの競馬界を引っ張っていくつもりで頑張ります」というようなことを、あえて公の場で口にするようにした。それが2010年だったと思う。

 日本人は、謙遜しながら上を目指す姿勢を美徳とするところがあるけど、当時はあえてビッグマウスを演じたところがあった。おそらく「福永ごときがなに言ってんだよ」って思った人もたくさんいたと思う。でも、今だから言えることかもしれないけれど、

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祐言実行 / 福永祐一
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1976年12月9日、滋賀県生まれ。1996年に北橋修二厩舎からデビュー。初日に2連勝を飾り、JRA賞最多勝利新人騎手に輝く。1999年、プリモディーネの桜花賞でGI初勝利。2005年、シーザリオで日米オークス優勝。2013年、JRA賞最多勝利騎手、最多賞金獲得騎手、初代MVJを獲得。2014年のドバイDFをジャスタウェイで優勝。

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