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マイネルラクリマが出走する香港GI・チャンピオンズマイル展望

  • 2014年04月23日(水) 12時00分


◆レイティング的には最下位もレイティングの序列だけで軽視してはいけないマイネルラクリマ

 今週末のG1クイーンエリザベス2世C(芝2000m)に続き、来週末(5月4日)にシャティンで行われるG1チャンピオンズマイル(芝1600m)の出走予定馬が、主催者の香港ジョッキークラブから発表になった。顔触れは、日本から参戦するマイネルラクリマ(牡6、父チーフベアハート)を含む4頭の外国馬を、地元勢10頭が迎え撃つ、合計14頭である。

 外国勢の筆頭格が、南アフリカのマイク・ドゥ・コックが送り込むヴァラエティクラブ(牡5、父ヴァー)だ。3歳時の11/12年シーズン、4歳時の12/13年シーズンと、2季連続で南アフリカの年度代表馬に選出されている大物である。

 2歳時の成績は6戦3勝。G3レンジャーマンS(芝1500m)を首差で制して重賞を手にしていたものの、それほど目立つ存在ではなかったのが2歳時のヴァラエティクラブだった。

 変わったのは3歳を迎えてからで、3歳春はシーズン当初から重賞ばかり3連勝してG1ケイプギニーズ(芝1600m)に優勝。その後、古馬の一線級と顔をあわせたG1クイーンズプレート(芝1600m)2着、距離不向きだったG1ケイプダービー(芝2000m)2着と連敗したが、実はそこから先、ヴァラエティクラブは南アフリカで一度も負けることがなかった。3歳シーズン後半は再び重賞3連勝し、最終戦のG1ゴールドチャレンジ(芝1600m)では古馬勢を完封して2度目のG1制覇を飾っている。

 4歳シーズンは5戦して無敗。前年2着に敗れたG1クイーンズプレートをきっちりモノにし、秋にはG1ゴールドチャレンジ連覇も果して、8連勝で祖国でのキャンペーンを締めくくっている。

 今季はドゥ・コック師がドバイに構える厩舎に移動し、初戦となったG3ファイアブレークS(AW1600m)で、初体験だったオールウェザートラックを難なく克服して快勝。この時点では、G1ドバイワールドC(AW2000m)参戦も検討されたが、次走のG3バージナハール(AW1600m)でシュルクの後塵を拝して2着となり、10戦ぶりの敗戦を喫すると、ワールドCナイトでは確勝を期してG2ゴドルフィンマイル(AW1600m)に廻り、前年の覇者ソフトフォーリングレインや、前年の仏千ギニー馬フロティラらを完封して勝利を収めている。

 戦績を御覧いただければ一目瞭然だが、ベストの距離は1600mで、ここは狙いすましての参戦だ。ドゥ・コック師はこのレース未勝利だが、QE2Cは3勝しており、香港での戦い方は熟知している。この顔触れが相手なら、盤石の横綱相撲を見せてくれるはずだ。

 欧州からの参戦となるのが、ゴードンロードバイロン(セン6、父バイロン)と、ムシャウィッシュ(牡4、父メダグリアドロー)の2頭だ。

 一昨年と昨年のG1香港マイル(芝1600m)に続く、3度目の香港遠征となるゴードンロードバイロンは、4歳の夏を過ぎてから本格化した“レイトブルーマー”だ。12年秋、G1初挑戦となったG1スプリントC(芝6F)で2着となると、続くG1ラフォレ賞(芝1400m)を制してG1で重賞初制覇を達成。勢いに乗じて挑んだ12年のG1香港マイルは、アンビシャスドラゴンから2.1/4馬身差の4着と、まずまずの競馬をしている。

 昨シーズンは秋までスプリント路線を歩み、ヘイドックのG1スプリントCを3馬身差で快勝して2度目のG1制覇。連覇を狙ったG1ラフォレ賞は、ムーンライトクラウドの鬼脚に屈し2着に敗れた後、再度挑んだ13年のG1香港マイルがグロリアスデイズから2馬身差の4着だった。

 その後の同馬は、豪州に遠征。今年3月29日にローズヒルで行われたG1ジョージライダーS(芝1500m)を見事に制して3度目のG1制覇を果した後、前走4月12日にランドウィックで行われたG1TJスミスS(芝1200m)では6着に敗れている。

 平坦馬場なら1600mも守備範囲だが、本来は1200mから1400mがベストの馬だ。大崩れすることはあまりないだけに、掲示板には載ってくるだろうが、そこから突き抜ける力があるかどうかは疑問である。

 一方、ドバイからの転戦となるのが、仏国調教馬のムシャウィッシュだ。

 2歳時を1戦0勝で終えた後、3歳初戦で初勝利を収めると、重賞初挑戦となったG3ギシェ賞(芝1800m)で2着に好走。その後、強気に挑んだG1仏ダービー(芝2100m)がアンテロの4着、ロイヤルアスコットのG1セントジェームスパレスS(芝8F)がドーンアプローチの4着と、強敵相手に健闘を見せている。だが、次走ドーヴィルの準重賞(芝1600m)は勝利を収めたものの、凱旋門賞ウィークのG2ダニエルヴィルデンシュタイン賞(芝1600m)では7着に敗れ、3歳時は重賞制覇に手が届かずに終わった。

 4歳を迎えた今季は、ドバイでシーズンをスタートさせ、初戦のG2アルファヒディフォート(芝1400m)で2着となった後、G2ザビールマイル(芝1600m)を制して待望の初重賞をゲット。ワールドCナイトはG1ドバイデューティフリー(芝1800m)に挑み、ジャスタウェイから9.1/4馬身遅れの4着となっている。

 G1級に入るとひと息足りないのが現状で、だからこそ、G1イスパーン賞(芝1850m)やG1ロッキンジS(芝8F)といった欧州の主要競走を避けてこちらに廻ってきたのであろう。ゴードンロードバイロン同様、この馬も掲示板はおおいにありそうだが、突き抜ける力は持ち合わせていないと見る。

 外国勢の4番手、というか、出走予定14頭の中で、レイティング的には最下位なのが、マイネルラクリマだ。

 前走G2中山記念(芝1800m)では、今をときめくジャスタウェイの4着。着差は3馬身半+鼻+首だったから、G1ドバイデューティフリーにおけるムシャウィッシュよりは負けていない。すなわち、レイティングの序列だけで軽視してよい馬ではないと思う。

 力の要る馬場は大歓迎で、シャティンは合うはずだ。内枠を引いて、道中好位で巧く立ち回ることが出来れば、あわやの場面もあるのではないか、と秘かに期待している。

 レイティング的に14頭の中で最上位にあるのが、地元香港を代表して出走するグロリアスデイズ(セン6、父ユーゾネット)だ。

 4歳時から香港1400m〜1600m路線のトップ集団に加わった同馬。G2ジョッキークラブマイル(芝1600m)、香港G1スチュワーズC(芝1600m)を制した他、4歳時のG1チャンピオンズマイル2着、5歳時のG1香港マイル2着と国際G1での好走を重ねた末に、前哨戦を使わずにぶっつけ本番で臨むという異例の臨戦態勢となった昨年暮れのG1香港マイルに優勝。遂に念願だった国際G1のタイトルを手中にした。

 1月19日の香港G1スチュワーズCで7着に敗れると、再び実戦から遠ざかり、ここは3カ月半振りの出走となる。果して、昨年暮れと同じ手が通用するかどうか、管理するジョン・サイズの手腕が改めて問われるところだ。

 本来ならば、今頃は香港におけるこの路線をグイグイ引っ張っていなくてはならないのがゴールドファン(セン5、父ルヴィーデコロリ)である。

 愛国からの移籍馬で、12/13年シーズンの香港G1香港クラシックマイル(芝1600m)に優勝。今季は、開幕からG2ジョッキークラブマイル(芝1600m)まで、いきなり重賞3連勝。暮れのG1香港マイルでは欧州から遠征してきたトップマイラーたちを抑えて1番人気に推されたが、グロリアスデイズの強襲に遇い2着に惜敗。あたかもそのショックを引きずったかのように、1月19日の香港G1スチュワーズCではよもやの6着に大敗し、この馬に大きな期待を寄せる香港の競馬ファンを心配させたが、前走3月16日の香港G1クイーンズシルヴァージュビリーC(芝1400m)ではいつもの動きを取り戻し、自身2度目の香港G1制覇を果している。

 大きく離して勝つ馬ではなく、したがって派手さはないが、きっちりと仕事をしてくれる職人タイプで、ここも地元ファンが信頼を寄せるべきはこの馬であろうと思う。

 ゴールドファンが6着に敗れた1月19日の香港G1スチュワーズCを制したのが、重賞初制覇だったブレイジングスピード(セン5、父ディラントーマス)だ。その後、香港G1香港ゴールドC(芝2000m)でミリタリーアタックの4着となった後、前走はドバイに遠征してG1ドバイデューティフリーが10着だった。能力的にも、臨戦態勢の面でも、強調出来る材料に乏しいように思う。

 昨年に続くこのレース連覇を狙うダンエクセル(セン6、父シャマーダル)は、今季ここまで7戦して勝ち星が1つもない。だがこの馬は昨シーズンも、G1チャンピオンマイルが9戦目にして挙げたシーズンの初白星で、7戦1勝だった一昨年も、勝ち星はシーズン最終戦で挙げている。つまりは、この時期になると調子を上げて来るタイプで、そうだとしたら、前走香港G1クイーンズシルヴァージュビリーCで2着と見どころのある競馬をしたこの馬の、2度目の優勝もありうる状況と言えそうだ。

 このダンエクセルに加え、今季の香港G1香港クラシックマイル勝ち馬エイブルフレンド(セン4、父シャマーダル)、前走香港G1クイーンズシルヴァージュビリーC6着のフラックシップシャイン(セン4、父テイルオヴザキャット)の3頭出しで臨むジョン・ムーア調教師は、このレース5年連続制覇という偉業をかけての参戦となる。

 4月16日の段階で追加登録をして出走表明したのが、カリフォルニアメモリー(セン8、父ハイエストオナー)だ。11年・12年とG1香港C(芝2000m)を連覇している実力馬だが、昨年11月のG2ジョッキークラブC(芝2000m)で4着に敗れた後に脚部不安を発症。3連覇がかかった昨年暮れのG1香港Cは出走を回避していた。当時は、長期休養を要すると言われただけに、この段階での復帰には少々驚かされている。

 この後、安田記念に転戦してくる馬もいるかもしれないだけに、チャンピオンズマイルの行方には日本の皆様もぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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