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恒例の9月開催が消滅することが確実となったフェアプレックスパーク

  • 2014年04月30日(水) 12時00分


◆気懸りなのは、1990年以来フェアプレックスパークを開催地としてきた、バレッツセールの先行き

 米国カリフォルニア州南部の競馬サーキットは、毎年9月、ポモナのフェアプレックスパークが開催地となるのが恒例となっていたが、今年はそのフェアプレックスパーク開催が消滅することが確実となった。4月21日(月曜日)、同じく南カリフォルニア地区にあるロスアラミトス競馬場とフェアプレックスパーク競馬場の関係者が協議し、9月開催をロスアラミトスで行うことで両者が合意したのである。今後は、統括組織であるカリフォルニア競馬協会が5月22日に開く月例会議をはじめ、関係各所の承認を待って、正式決定となる予定だ。

 フェアプレックスパークは、カリフォルニア州南部の地方行政府ロサンゼルス郡が、地域振興を目的に各種催し物の会場とすべく1922年に開場した複合施設である。カリフォルニア州で、パリミューチュアル方式による馬券発売をともなった競馬開催が認可されたのは1933年で、これを受けて同年9月に開催されたのが、フェアプレックスパークにおける初めての競馬だった。すなわち、1934年に開場したサンタアニタよりも、1938年に開場したハリウッドパークよりも、フェアプレックスパークは長い歴史をもっているのである。

 ハリウッドパークが昨年一杯で閉鎖されたことを受け、競馬のスケジュールが従来と大きく様変わりしたのが今年のカリフォルニア州だ。その過程において、ハリウッドパークの代替地として名乗りを上げ、ハリウッドパークの主要競走が移設してくるのであれば、施設の大幅拡充を検討していたのがフェアプレックスパークだった。ところが、代替開催の舞台として指名されたのは、これまでクオーターホースの開催地として知られていたオレンジ郡のロスアラミトスで、フェアプレックスパークは今年も従来通り、9月5日を開幕日として通算11日間の9月開催の舞台となることが、一旦は発表されていた。

 この決定を受け、ロスアラミトスは早速、1周5ハロンという小回り馬場を、1周7ハロン195ヤード(約1586m)に拡張。従来はハリウッドパークで行われていた7月開催と12月開催の舞台となることが決まり、従来のG2スワップスSをG2ロスアラミトスダービー(総賞金50万ドル)と改称して7月5日に、G1ハリウッドスターレットをG1スターレットS(総賞金35万ドル)と改称して12月13日に、G1ハリウッドフューチュリティをG1ロスアラミトスフューチュリティ(総賞金50万ドル)と改称して12月20日に開催することを、既に発表している。

 こうした流れを受け、フェアプレックスパークに対し、「9月開催を手放したらどうですか」と圧力をかけたのが、カリフォルニア州馬主協会だった。

 1周5Fのフェアプレックスパークは、コーナーがきついために一流騎手が敬遠しがちな競馬場だ。重賞競走の開催も1つもなく、つまりは馬も人も一流の参戦が望めず、当然の帰結として馬券の売り上げも集客も芳しくない。売り上げの多寡が賞金額に直接はねかえるのがアメリカだけに、馬主さんとしては競馬が、少しでも多くのお客さんが入り、少しでもたくさん馬券が売れる競馬場で開催されて欲しいと願うのは当然である。ロサンゼルス郡としても、競馬開催を行なうことで必要となる運営費と、そこから生じる損益を秤にかけ、ロサンゼルス郡チーフエグゼクテキィヴ、ジム・ヘンウッド氏の言葉を借りれば「戦略的決断」として、9月開催の返上を決めることになった。

 9月開催決定の報と時を合わせるように、ロスアラミトス競馬場は、施設の更なる拡張計画を発表。厩舎地区に新たに200馬房を新設し、ここを調教基地とするサラブレッド用の馬房数を現状の500から700に増加する他、競馬開催時には更に60馬房を増設して、輸送してくる出走馬の受け入れに備えることになった。更には、馬主用のヴェッセルズクラブの拡充、バーの増設や改修、テラス席やボックス席の増設、更にはパドックエリアの拡張などにも取り組むことになった。

 一方のフェアプレックスパークは、前出のジム・ヘンウッド氏が、9月開催のロスアラミトス移設は2014年だけのことではないとコメント。現在使用しているサイマルキャスト用の施設を拡張し、場外馬券売り場としての機能を充実させることを明言する一方、今後フェアプレックスが競馬開催場として機能することはないだろうとの見通しを述べている。

 その言葉通りに事が進むとしたら、ハリウッドパークに続いて、カリフォルニア州は短期間に2つの競馬場が歴史に幕を下ろすことになる。

 また気懸りなのは、1990年以来フェアプレックスパークを開催地としてきた、バレッツセールの先行きだ。バレッツのセール会場は現在、セール開催日以外は場外馬券売り馬として機能しており、ロサンゼルス郡がサイマルキャストビジネスの充実を謳っている以上、セール会場そのものは今後もしっかりと維持されることが約束されている。問題は公開調教を行なう馬場で、競馬開催が消滅することで、バレッツセールの追い切りが主な使用目的となるトラックを、いかにしてメンテナンスしていくかが、今後の大きな焦点となりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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