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「父のことを覚えていて欲しい」親子の絆で作る福永洋一記念

  • 2014年05月06日(火) 18時00分
福永祐一騎手

福永洋一記念を制した永森大智騎手、雑賀正光調教師と並んで記念撮影の福永洋一氏、福永祐一騎手



◆福永祐一騎手「これからも、続けられる限りこのレースを続けて行きたいです」

 高知の『福永洋一記念』が、今年で5年目を迎えました。2010年、福永祐一騎手の提案により、手さぐりで始まったこのレース。今では、ゴールデンウィークの地方競馬を飾る風物詩となっています。今年も表彰式に洋一さんが登場すると、大きな声援とたくさんの拍手に包まれました。高知の特別な一日『福永洋一記念』を、祐一騎手の言葉と共に振り返ります。

 この日の高知は、残念ながら肌寒い雨降りの一日となってしまいました。それでも、この日を楽しみにしていたファンの方々が全国から訪れて、いつも以上の賑わいを見せていました。福永祐一騎手は、交流戦に騎乗したり、ファンの方と触れ合ったり、トークショーをしたりと大忙しの一日。まずは、ご家族が増えての高知来場となった、今年の『福永洋一記念』を終えてのコメントです。

「天候の悪い中で、たくさんの方に来ていただきまして、最後までいていただいて…本当に感謝しています。ありがたいですね。最後に父が登場した時には、温かい拍手で迎えていただいて、すごく嬉しかったですし、やはりこのレースを続けられる限りは続けたいなと思いました。『お帰り』っていう声援もあって、やっぱりそう言う風にいっていただくと嬉しいですね。父にも聞こえてたでしょうし、右手を上げて答えてましたから。

 今年は家族が増えたんですけど、出産後そんなに日にちが経ってなかったので、今日(奥様と娘さんは)参加出来るかどうかはギリギリまでわからなかったんですけど、無事にこうやって一緒に来れて、父も含めて体調を崩すことなく過ごせたので、非常に良かったと思いますね。

福永祐一騎手と翠さん

今回はご家族揃っての高知来場



 娘は、今日初めて僕のレースを見てたみたいですけどね。人気に応えることが出来なくて…。家族が見てる前であんまりいい競馬した記憶がないですね(苦笑)。(ゲートで大きくバランスを崩したので)無事に戻って来れて良かったなと思いますけど」

 トークショーには毎年豪華ゲストが登場しますが、今年は福永祐一騎手の師匠である北橋修二元調教師と、この日一緒に香港から戻って来た角居勝彦調教師を迎え、杉本清さんによる軽妙な司会でファンを沸かせました。

「なかなか(北橋)先生とイベントで話す機会というのがなくて、今回初めてだったんです。いつもあんまり褒められることはないんですけど(笑)。先生がいるからこそ、慢心することなく今まで来られたと思いますし、これからも見守っていただきたいですね。定年されてなお今も支えになってもらってる存在です。ありがたいですね。先生は今まで高知にも来られたことなかったので、今回お声掛けして快諾をいただきました。家族みたいな存在なので、もっと早く来ていただいたら良かったなという気持ちもあるんですけど。こうやってトークショーでご一緒する機会はなかったのでね、まぁ先生は相変わらずあんな感じですけど(笑)。父の現役の時から、北橋先生が先輩で父が後輩で、その関係性の中で、僕はずっと小さい頃から可愛がってもらっていたので。僕の話っていうよりは、本当は父が現役の時の話で盛り上がれたらなって思ってたんですけど。僕の話を中心にしていただいて、申し訳ないなと思いました。

福永祐一騎手と福永洋一氏

父・洋一氏と並んで記者会見に臨む福永祐一騎手



角居先生は香港から一緒に来ました。先生は障害者乗馬を普及する活動をされてて、僕も参加させてもらったりしているんですけど、その障害者乗馬のイベントを名古屋競馬場とか、三木ホースパークとかでやってたんですけど、高知でも出来ないかということで、今日は下見も兼ねて来ていただきました。せっかく来ていただけるので、本当はエピファネイアで勝ったらトークショーに参加してもらおうと思ってて、でも負けてしまったのでどうしようかなと思ったんですけど。でもせっかく来ていただいたので、「参加してもらえますか?」って投げかけてみたら、快く引き受けて下さいました。角居先生にも、本当に感謝しています。

杉本さんは毎年ずっと来ていただいてて、すごく協力していただいて。感謝の気持ちでいっぱいですね」

 毎年色々なイベントが行われますが、今年は『あかうし』のお振舞に加えて、土佐のお座敷遊びも行われました。一通り指導を受けた後には、ファンの方と直接勝負する場面もありました。

福永祐一騎手

ファンの方と直接勝負した土佐のお座敷遊び



「こういう地方競馬だからこそ出来る、お客さんとの距離の近さを活かしたイベントをしていきたいです。もっと触れ合いとか出来たら楽しいかなって思いますね。今日もやっぱり、一緒にゲームしましょうって言っても、なかなか難しいじゃないですか。僕は、今日は特別な日だと思っているので。ちょっと普通のイベントとは違うというか、違う距離感でしたいなと思っています」

 改めて、父・福永洋一騎手の偉大さを実感するという『福永洋一記念』。長年追い続けている背中は、祐一騎手にとって近づいているのでしょうか。

「正直、追い付けるとは思ってないです。追い付けっこないと思いながらやってるんですけど。ただ、追い続けていくことが、自分が成長することに繋がると思っていますし、僕は福永洋一の息子なんでね、もう父は現役を退いているので、追い付けるはずがないんですよね。僕はすでに父の現役だった時間は越えてますけど、それでもよくよく考えたら、父は9年連続リーディング獲ってて、21、2歳くらいからなんで。残している勝率、連対率なんかは、今の自分では遥かに追いつかない数字ですし。しかも時代が違う中で、もっと難しい時代の中で残した数字ですから。比べられるのは覚悟でこの世界に入って来ましたけど、到底かないっこないと言う風に正直自分では思ってます。父の名前でこの世界に入って来ましたから、僕が出来ることは父の名を汚さないことだけなので。真摯に仕事に取り組むということは心掛けてます。そこだけはやっぱり、自分が不誠実な仕事をすると父に迷惑を掛けることになってしまうので、それだけは気を付けてますね」

 どんなに頑張っても、到底追い付けないという偉大な父。その父の名前を冠した『福永洋一記念』は、これから先、どんな存在になっていくのでしょうか。

「正直、若手の騎手はもうほとんど父のことを知らない騎手ばっかりなんですけど、僕より上の騎手の方、武豊さんとか、横山典弘さんとか、柴田善臣さんとか田中勝春さんとか、あの世代の方にはすごく大きな存在みたいです。僕が結婚式をした時にもみなさん来ていただいて、『お前はどうでもいい。父に会いに来たんだ』って言われましたから(笑)。それくらい、すごく影響力のある騎手だったっていうのを感じます。こういうイベントをすることによって、息子として父が残して来た偉大な記録を風化させたくないっていう想いもありますし、たくさんの人に覚えていていただいて、尚且つ、その人たちが語り継いでくれたらいいなという想いがあります。そういった意味で、高知競馬さんにご協力いただきまして、こういうレースが出来ていることは非常に感謝していますし、若手の騎手にとってもね、こういう騎手がいたんだってことを知ってもらうだけで、僕にとっては十分です。

それに、こういったイベントをキッカケに、今まで競馬を見たことがなかった人も、競馬場に足を運んでもらって、競馬を知ってもらうキッカケになったら嬉しいなと思います。これからも、続けられる限りこのレースを続けて行きたいです」
福永祐一騎手と洋一氏

ジャスタウェイの写真を一緒に見ている福永祐一騎手と洋一氏

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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