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トウケイヘイローGI初制覇なるか?インターナショナルC展望

  • 2014年05月14日(水) 12時00分


◆海外でG1初制覇という快挙達成も充分にありえる情勢

 日本からトウケイヘイロー(牡5、父ゴールドヘイロー)が参戦するG1インターナショナルC(芝2000m)が、今週日曜日(18日)にシンガポールのクランジ競馬場で行われる。

 ドバイのG1ドバイデューティフリー(芝1800m)2着、香港のG1クイーンエリザベス2世C(芝2000m)3着の成績で来ていた南アフリカ調教馬ウェルキンゲトリクス(牡4、父シルヴァーノ)が、当初の予定を変更して回避したため、トウケイヘイローにとっての敵は、昨年のこのレースで1、2着している香港勢2頭ということになりそうだ。

 昨年に続くこのレース連覇を目指しているのが、ミリタリーアタック(セン6、父オラトリオ)である。

 愛国産馬で、3歳時を英国で走った後に香港に渡った同馬。2シーズン目の12/13年シーズンに頭角を現し、香港ゴールドC(芝2000m)でローカルG1初制覇を飾ると、G1クイーンエリザベス2世C、G1インターナショナルCと国際G1を連覇してシーズンを締めくくった。

 今季前半はなかなかエンジンがかからず、アキードモフィードの4着に敗れたG1香港C(芝2000m)を含めてシーズン当初は4連敗。だが、使われながら徐々に調子を上げて行くのがこの馬のパターンのようで、シーズン5戦目の香港ゴールドCを制して前年に続く連覇を達成し、復調をアピール。続いてドバイに遠征し、G1ドバイワールドC(AW2000m)で1番人気に推されたが、タペタを全くハンドリング出来ずに10着に大敗。だが、帰国初戦となった前走G1クイーンエリザベス2世Cでは、4歳世代の旗手デザインズオンローマ(セン4、父ホーリーローマンエンペラー)に屈したものの、ウェルキンゲトリクスには2馬身先着して2着を確保し、地力のあるところを見せつけた。

 前走時におおいに心配されたドバイ遠征の疲労が、ここで出る懸念は依然として残るが、能力的に見るとこの馬の中心は動かし難いところであろう。

 愛国産馬のダンエクセル(セン6、父シャマ−ダル)は、ダンボーインエクスプレスという馬名で祖国でデビューし、G3アングルシーS(芝6F63y)、G3愛2000ギニートライアル(芝8F)の2重賞を制した他、G1愛チャンピオンS(芝10F)入着の実績を残している。

 いわば鳴り物入りで11/12年シーズンに香港移籍したダンエクセルだったが、環境に慣れるのに時間がかかり、ようやく本領を発揮し出したのが12/13年シーズンの後半だった。G1香港マイル(芝1600m)4着、香港G1スチュワーズC(芝1600m)2着などの成績を残した後、G1チャンピオンズマイル(芝1600m)で移籍後初重賞制覇を達成。続くG1インターナショナルCでミリタリーアタックの2着となっている。

 今季はここまで8戦して未勝利。シーズン前半は成績が振るわず、後半になるにつれて上昇するという前年と同じパターンを踏み、スチュワーズC2着、香港ゴールドC2着、クイーンズシルヴァージュビリーC(芝1400m)2着と、ローカルG1で健闘を重ねた末に、連覇がかかった前走G1チャンピオンズマイルが、南アフリカ最強マイラー・ヴァラエティクラブ(牡5、父ヴァー)、香港4歳世代の最強マイラー・エイブルフレンド(セン4、父シャマーダル)に続く3着だった。

 前年の力は維持していると見て間違いなく、前年並みのパフォーマンスをすれば争覇圏に入ってくる馬であることは間違いなさそうである。

 欧州から遠征してくる3頭も、ノーマークにはしづらい馬たちだ。

 ドバイ遠征後、G1クイーンエリザベス2世Cはスキップしてここへ向かって来る英国調教馬サイドグランス(セン7、父パッシングランス)。当然のことながら、本拠地である英国キングズクレアに一旦戻り、5月10日にシンガポール入りしての参戦となっている。

 ゆっくりと出世の階段を上がり、4歳8月にG3ソヴリンS(芝8F)を制して重賞初制覇。次走はカナダに遠征しG1ウッドバインマイル(芝8F)で4着となり、まずまずの海外デビューを果している。

 5歳時は国内に専念したものの、ほとんど自国に居た時間がなかったほど多く旅をしたのが6歳時で、序盤はドバイで2戦しG1ジェベルハタ(芝1800m)とG1ドバイワールドCでいずれも4着に健闘。夏には北米に渡り、G1アーリントンミリオン(芝10F)3着。秋には豪州で2戦しG1マッキノンS(芝2000m)を制してG1初制覇を達成。帰りがけに寄った香港でG1香港C5着。そして7歳となった今季も出だしはドバイで、2戦してG1マクトゥームチャレンジ・ラウンド3(AW2000m)7着、G1ドバイワールドC4着の成績を残している。

 輸送慣れしていることは言を待たず、この馬も争覇圏にいる1頭であろう。

 輸送に対する強さという点では、サイドグランスに引けをとらないのが、同じく英国からの参戦となるムルオヴキロフ(セン8、父ムルオヴキンタイア)である。

 6歳10月に制したG3ダーレーS(芝9F)が重賞初制覇と、サイドグランスよりも更にゆっくりと出世の階段を上った同馬。7歳初戦となったG3アールオヴセフトンS(芝9F)で2度目の重賞制覇を果すと、昨年のこのレースで初の海外遠征を経験し、勝ったミリタリーアタックから4.3/4馬身差の5着と悪くない競馬をしている。その後は、夏に北米、秋に豪州と、サイドグランスと同じローテーションを辿り、なかなか成績は上がらなかったものの、遠征最終戦となったフレミントンのG1エミレイツS(芝1600m)4着と、まずまずのパフォーマンスを見せてシーズンを締めくくっている。

 今季初戦となった、ドバイのG2ゴドルフィンマイル(AW1600m)では12着と大敗してしまったが、驚嘆すべきはそのわずか19日後に英国ニューマーケットで行われたG3アールオヴセフトンSに出走し、見事に優勝を飾ってこのレース連覇を成し遂げている点である。長距離輸送や環境変化が、体調維持に全く影響しない、極めて頑健なタイプの競走馬と言えよう。

 一線級に入って勝ち切る能力は無いのだが、消耗戦になった時にしぶとく生き残るとすればこの馬で、入着の可能性はありそうだ。

 今季初戦にロンシャンのG2アルクール賞(芝2000m)を制したのが重賞初制覇で、前走G1ガネイ賞(芝2100m)でも4着を確保したのが、仏国から遠征してくるスモーキングサン(牡5、父スマートストライク)である。シリュスデゼーグルとトレヴという、超一戦級から6馬身差という前走のパフォーマンスから類推するに、このメンバーならば通用してもおかしくはない能力を持っていそうだ。ただし遠征はこれが初めてで、シンガポール特有の気候に対応できるかどうかは未知数である。

 地元勢の筆頭は、昨年11月のローカルG1シンガポールGC(芝2200m)勝ち馬トロパイオス(セン5、父エクセレントアート)になろうか。4月27日にクランジで行われたシンガポールG2クイーンエリザベス2世C(芝2000m)の1・2着馬、ワイルドギース(セン5、父エクシードアンドエクセル)とジョニーギター(セン4、父ロード)の2頭が脇を固める存在だ。だが、彼らが好勝負をするにはそれぞれ、生涯最高のパフォーマンスを見せる必要がありそうだ。

 同日行なわれるG1インターナショナルスプリント(芝1200m)組を含め、外国勢の中では最後となる13日(火曜日)早朝に現地入りしたのがトウケイヘイローだ。

 この馬の場合、いかにして自分のパターンに持ち込むかが最大の焦点で、そういう意味では、前走シンガポールのG2クイーンエリザベス2世Cを逃げ切ったワイルドギースとの兼ね合いがポイントとなりそうである。

 昨年暮れのG1香港Cでは、このレースの中心馬ミリタリーアタックに実際に先着しており、楽に行かせてもらえれば、海外でG1初制覇という快挙達成も充分にありえる情勢と見ている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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