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36年振りのアメリカクラシック3冠達成に挑むカリフォルニアクローム

  • 2014年05月28日(水) 12時00分


◆アファームド以来11頭が3冠制覇目指してベルモントSに挑むもすべて敗れている

 6月7日のG1ベルモントS(d12F)で、1978年のアファームド以来36年振りの3冠達成に挑むカリフォルニアクローム(牡3、父ラッキープルピット)が、20日(水曜日)午前10時45分に決戦の地ベルモントパークに到着。連日、十重二十重の報道陣に囲まれる大フィーバーとなっている。

 この35年の間に、ケンタッキーダービーとプリークネスSの2冠を制した馬は12頭出現。このうち、直前で脚部不安が出て出走を回避した12年のアイルハヴアナザーを除く11頭がベルモントSに挑み、鼻差の2着に泣いた98年のリアルクワイエットを含み、いずれも敗戦を喫している。これでもかというほど肩すかしを食ってきた北米競馬ファンの、3冠馬誕生への渇望はリミッターが弾け飛んでもおかしくないところまで膨張しており、カリフォルニアクロームを巡るフィーバーはこれから本番に向けて、益々加熱していくことが予想されている。

 ちなみに筆者は、プリークネスS(5月17日)の直後、「カリフォルニアクロームはベルモントSを回避するのですか?」というお問い合わせを、複数の方から受けた。カリフォルニアクロームが近走で着用しているネイザルストリップ(鼻腔を広げるテープ)の使用を、ベルモントSが行なわれるニューヨーク州の競馬協会は認めておらず、一夜明け会見でカリフォルニアクロームのアート・シャーマン調教師が「共同馬主のひとり、ペリー・マーティンは、それなら出走しないと言うかもしれないね」とコメント。現地の記者に確認したところ、陣営は本気で回避を考えていたわけではなく、なかば冗談で発した言葉が、「調教師が回避表明」という断定形に姿を変えてネット上を駆け巡ったようである。いずれにしても、ニューヨーク競馬協会は19日(月曜日)に、ネイザルストリップの使用を許可することを発表。これまでの2冠同様、3冠目もカリフォルニアクロームはネイザルストリップを着用して臨むことになった。

 現段階で、ベルモントSは10頭前後が出走予定。ケンタッキーダービー後にプリークネスSをスキップした組では、ダービー2着のコマンディングカーヴ(牡3、父マスターコマンド)、4着のウィケッドストロング(牡3、父ハードスパン)、5着のサムラート(牡3、父ノーブルコーズウェイ)。前走プリークネスS組が、2着のライドオンカーリン(牡3、父カーリン)、3着のソーシャルインクルーション(牡3、父ハイオニアオヴアナイル)、8着のキッドクルーズ(牡3、父レモンドロップキッド)。5月10日にベルモントパークで行われた前哨戦G2ピーターパンS(d9F)1・2着の、トナリスト(牡3、父タピット)、コミッショナー(牡3、父エーピーインディ)といった顔触れだ。

 ケンタッキーダービー組では、19番という大外枠を克服して4着まで追い込んだウィケッドストロングが、着順以上に評価を出来る内容の競馬だった。

 プリークネスS組ではやはり、2着に追い込んだライドオンカーリンが恐いか。父は07年のベルモントS2着馬で、初年度産駒から昨年のベルモントS勝ち馬パレスマリスが出現している。

 だが、カリフォルニアクロームにとって最大の敵は、カリフォルニアクロームとは初対決となる別路線組のトナリストではないかと見ている。

 昨年11月にデビューし、今年1月にガルフストリームのメイドン(d9F)を制してデビュー2戦目にして初勝利を挙げた同馬。続くガルフストリームの条件戦(d8.5F)で、後にG1フロリダダービー(d9F)を制するコンスティテューションの2着となった後、ひと息入れてG2ピーターパンSに向かい、ここを4馬身差で快勝して重賞初挑戦初制覇を果している。

 今季の種付け料15万ドルという父タピットは、長距離適性をことさらに強調できる種牡馬ではないが、それでも、母系にニジンスキーが入っており、2000mを超えてぱったり止まる血脈ではない。一方、トナリストの母の父プレザントコロニーは、リボーの孫で、産駒にはG1愛ダービー(芝12F)やG1キングジョージ(芝12F)を制したサンジョヴィートがいるから、スタミナの供給源となりえる馬である。

 肝心のカリフォルニアクロームはと言えば、父のラッキープルピットは8F〜8.5Fの重賞入着馬。父のブルードメアサイヤーが、BCターフ勝ち馬ティッカネンや日本のオークス馬ローブデコルテを出しているコジーンで、カリフォルニアクロームの3代母の父が英ダービー馬サーアイヴァーという、心強い材料もあるが、カリフォルニアクローム自身がミスタープロスペクターの3×4を持つ配合は、どう見てもスタミナよりはスピード重視の血統構成である。

 能力の違いで押し切ることが出来るか。その前提として、厳しいローテションを経てなお、6月7日のこの馬が能力を出し切れる状態にあるかどうか。2冠馬が3冠に挑むたびに取りざたされる命題が、今回も重くのしかかることになりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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