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凱旋門賞戦線に向け見逃せないレース、コロネーションC展望

  • 2014年06月04日(水) 12時00分


◆今年のコロネーションCはセントニコラスアビーを偲び「セントニコラスアビー記念コロネーションC」として開催される

 世界の競馬は、英国で第236回オークス(G1・芝12F)と第235回英ダービー(G1・芝12F10y)、米国でカリフォルニアクロームが3冠に挑む第146回ベルモントS(G1・d12F)が施行されるという、シーズン前半のハイライトとも言うべき週末を迎えようとしている。

 舞台となるエプソムやベルモントパークでは、この3競走以外にも複数のG1競走が組まれており、いずれも注目すべき競馬ではあるのだが、そんな中で日本の競馬ファンにとって特に見逃せないのが、7日に英オークスや英ダービーと同コース・同距離で行われる古馬のG1、第109回コロネーションC(芝12F10y)である。と言うのも、出走予定メンバーに凱旋門賞の第一次登録を済ませている馬が4頭おり、その結果次第では凱旋門賞へ向けた勢力分布に大きな変化が生じてもおかしくはないのである。

 ブックメーカー各社が2.625倍〜2.75倍のオッズを掲げて1番人気に推しているのが、セン馬のため凱旋門賞には出走資格のない仏国調教馬のシリュスデゼーグル(セン8、父イーヴントップ)だ。

 3歳時から重賞戦線に顔を出し、タフに駆け続けている同馬。6歳暮れに遠征先の香港で左前靭帯を傷め、7歳6月に復帰を果したものの4連敗を喫した時には、この馬の時代は終わったとの見方が支配的だったが、そこから渋太く再浮上。今季3戦目となったロンシャンのG1ガネイ賞(芝2100m)で、昨年の凱旋門賞馬トレヴとの競り合いを制して4度目のG1制覇。そして前走ロンシャンのG1イスパーン賞(芝1850m)も逃げ切って5度目のG1制覇と、往時の力を完全に取り戻した姿を見せている。このところ英国は雨が多く、この馬にはお誂え向きの馬場になりそうで、ここは存分に力を発揮出来る舞台となりそうだ。

 それだけに、好調で条件も合いそうなシリュスデゼーグルを相手に、会心の競馬を見せる馬が現れたりすると、凱旋門賞へ向けた前売りオッズでジャンプアップする可能性があるのだ。

 そして、このレースの2〜4番人気が、いずれも凱旋門賞に登録済みの馬たちである。

 3倍から3.25倍という、シリュスデゼーグルと差の無いオッズで、各社が2番人気に推しているのがルーラーオヴザワールド(牡4、父ガリレオ)だ。

 キングジョージなどG1・5勝のデュークオヴマーマレイドの半弟で、3歳4月のデビューからわずか8週間後に、キャリア3戦目にして英ダービー制覇を果した、エリート中のエリートである。ただしその後は、勝ち馬キズナに鼻差まで迫ったG2ニエユ賞(芝2400m)、勝ち馬ファーに3/4馬身差に迫ったG1チャンピオンS(芝10F)など、惜しかった競馬を含めてシーズン末まで4連敗。更に、直前にカタールの王族シェイク・ジョアンが権利の50%を取得し、シェイク・ジョアンの服色で走った前走のG1ドバイワールドC(AW2000m)は、オールウェザートラックをハンドリング出来ずに13着に大敗。ダービー馬の看板をこれ以上汚さないためにも、エプソムに凱旋するここは、この馬にとって間違っても下手な競馬は出来ないレースとなっている。

 各社5.5倍〜7倍のオッズで3番人気に推すのが、仏国調教馬のフリントシャー(牡4、父ダンシリ)だ。

 昨年のG1パリ大賞(芝2400m)勝ち馬で、昨年秋のG2ニエユ賞でキズナにとって最大の敵と目され、実際に1番人気に推された馬である。そのG2ニエユ賞が4着、続くG1凱旋門賞が8着と、案外な成績で3歳シーズンを終えた同馬の、今季初戦となるのがこのレースである。管理する仏国随一の伯楽A・ファーブルがその素質を高く評価し、血統的にも成長力を充分に秘めているだけに、ここでの競馬振り如何ではこの路線の主役に浮上してもおかしくはない馬である。

 各社7.5倍から8.5倍のオッズで4番人気に推されているのが、昨年のG1英オークス馬タレント(牝4、父ニューアプローチ)だ。

 3歳初戦となったLR英プリティポリーS(芝10F)を制して臨んだG1英オークスは、同馬にとって重賞初挑戦で、オッズ21倍の8番人気とファンの評価も低かったが、後方から末脚を炸裂させる豪快な競馬で、2着シークレットジェスチャーに3.3/4馬身差をつける完勝を演じ、周囲の度肝を抜くことになった。続くG1愛オークス(芝12F)は7着に大敗したが、秋にはG1セントレジャー(芝14F132y)に挑んでリーディングライトの2着に健闘。3歳最終戦となったG1ブリティッシュチャンピオンズ・フィリーズ&メアズ(芝12F)でも3着と悪くない競馬をし、オークスがフロックではなかったことを実証している。ここは7か月半振りの実戦となるが、昨年もシーズン初戦のLR英プリティポリーSを白星で通過しており、休み明けでも走れる馬と見られている。

 凱旋門賞に登録のあるもう1頭が、バタリオン(牡4、父オーソライズド)だ。

 昨年11月、ルクロワズラローシェ競馬場の準重賞(芝2100m)で3着に入ったのがこれまでで最良のパフォ−マンスで、今季初戦のハンデ戦(芝12F10y)では勝利を収めたものの、前走ニューバリーの準重賞(芝13F61y)では1番人気を裏切り7頭立ての7着に大敗。前走は、不得手のパンパン馬場が敗因と言われているが、それにしてもこの顔触れに混じって勝ち負け出来る馬ではなさそうだ。

 なお今年のコロネーションCは、11年から13年にかけてこのレース3連覇を達成し、その後、右前脚骨折による長い闘病生活の末に今年1月に落命したセントニコラスアビーを偲び、「セントニコラスアビー記念コロネーションC」として開催される。セレモニーの模様も含めて、日本の皆様にもぜひご注目いただきたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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