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江田照騎手は津軽海峡を越えるか。ローブティサージュに走る気は戻ったか。

  • 2014年06月19日(木) 12時00分


江田照騎手が函館スプリントSでツインクルスターに騎乗しそうだ。
もし、想定等で発表されているとおり、江田照騎手がツインクルスターに騎乗するとなると、それだけで注目せざるをえない。

なぜなら江田照騎手が津軽海峡を越えるのは、それだけでレアだからだ。

江田照騎手は基本的にテリトリー系の騎手だ。
基本のテリトリーは関東&関東近郊。

東京・中山・新潟・福島

この4競馬場が江田照マーキングの主要競馬場だ。
津軽海峡を越えないだけでなく、箱根の山もめったに越えない。

札幌競馬 0-1-0-0
函館競馬 0-0-2-5

これは江田照騎手の過去5年の北海道競馬騎乗回数。
北海道で騎乗するイメージは少なかったけれど、イメージ以上に少ない。
もう少し函館の夜景やススキノをランデブーしていると思っていた。

札幌競馬場は1日だけ。それも1頭のみ。
函館競馬場は2日だけ。
これだけで、今回、ツインクルスターに騎乗することのレアっぷりがわかる。

とはいえ、これは過去5年だ。
昨今の騎手事情はめまぐるしい。エージェントが替わったり、オーナーとことをこじらせたりすれば、騎乗数や騎乗馬の傾向もガラリと替わる。だから過去まで遡りすぎても、騎手データが参考にならないこともある。
しかし、江田照騎手の上記の北海道騎乗はあまりに少ないと思ったので、念のため過去10年まで遡ってみた。

札幌 0-1-0-0
函館 0-0-2-5
――津軽海峡――
福島 37-36-42-613
新潟 49-67-75-926
東京 69-80-100-1826
中山 98-105-14-2050
――箱根の山――
中京 1-2-1-10
京都 0-1-1-38
阪神 2-1-3-64
小倉 3-7-7-91

北海道に関しては過去5年も過去10年もまったく同じ。
むしろ津軽海峡を越えるようになったのは最近の出来事とも言える(それにしたって少ないけど)。
というわけで結論は出た。
江田照騎手の北海道はレア騎乗と決めつけていい。

っていうか、テリトリーが一目瞭然だ。
江田照騎手はめったに津軽海峡を越えないし、箱根の山もなかなか越えない。
若手騎手の過去10年なら、騎乗競馬場の偏りがあるのはわかる。関西所属の若手が東京で騎乗しようと思えばそれなりの実績が必要だろう。逆もまたしかり。
けれど江田照騎手は騎手生活20年以上のベテランだ。騎手として、主戦競馬場があるのはわかるけれど、もうちょっと騎乗回数があっちこっちにあってもいいのではないか? だから余計に気になる。江田照騎手自らが敷いた結界があって、それを越えるときには何らかの理由があるのではないか?
結界とか書くと江田照騎手が陰陽師みたいに思えてくる。穴の地相を操る陰陽師。うむ、かっこいい。

とここまで書いたら、やっぱり全部知りたくなった。過去10年ではなくデビュー以来すべての競馬場別の成績を知りたくなった。

今年で25年目だから、過去24年と6ヶ月の成績
札幌 0-1-0-5
函館 2-1-2-11
ーー津軽海峡ーー
福島 97-93-92-1061
新潟 161-182-182-1732
東京 244-243-260ー3610
中山 291-303-354-4009
ーー箱根の山ーー
中京 1-4-4-22
京都 3-1-2-97
阪神 2-2-4-84
小倉 3-7-7-91

やっぱり結界は昔から存在していた。しかもその結界は津軽海峡をほとんど越えないことがわかった。
札幌競馬場はまだ2日しか騎乗してない。
函館競馬場は4日だ。
つまりデビューして25年、まだ6日しか北海道で騎乗してないということだ。
(江田照騎手は福島出身だから、福島と新潟を大事にしていることはわかる。おそらくそれが答えだろう。6月が東京・阪神・函館開催になって、函館騎乗が実現しやすくなったのかもしれない。そうだとしてももうちょっと騎乗していると思った)

問題はその結界を越えたときに意味があるかだ。それがただのレアではなく、プレミアムな何かを纏っているかだ。

ここは直近5年のデータを調べてみた。25年も遡っても意味はないと思うからだ。

札幌競馬 0-1-0-0 
10年キーンランドC ジェイケイセラヴィ 6人気2着
1頭騎乗で2着!

函館競馬 0-0-2-5 の内訳
13年7/21 0-0-2-1
13年8/31 0-0-0-4

3着2回はどちらも7/21で、
函館2歳S トーセンシルエット 8人気3着
新馬ダ17 エキマエ 6人気3着

8/31の函館では馬券圏内はなかったけれど、札幌2歳Sのトーセンシルエットに騎乗していた(8着)。

3回の津軽越えの動機はすべて、重賞に騎乗するためであることがわかる。
しかも3回中2回、重賞で馬券になった。
騎乗した2頭(ジェイケイセラヴィ・トーセンシルエット2回)はテン乗りではなく、継続騎乗でもあった。

つまり勝負の手応えがあるなら北海道でも騎乗し、手応えがなければ北海道には行かないということだ。
それは十分伝わってくる。

「自ら課しているであろう結界の外に飛び出すときは、勝負の手応えを掴んでいるとき」
この仮説はわかりやすく立つ。

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ツインクルスターは江田照の動機を満たしているか?
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ツインクルスターは江田照騎手に乗り替って、逃げたり、番手追走したりしながら、1000万、1600万をわりかし順当に勝ち上がった。

オープンに上がってからの3戦はこんな成績。

ラピスラズリS 芝12 4人気9着  6-5-4 着差0.4
「タメて切れを生かすタイプではなく、自分のリズムで動いて行く形が合っている馬。この馬はいつも通りのスタートを切れたが、隣の馬が凄く速くてそういうレースができなかった。」(江田照・週刊競馬ブックより)
隣の馬とは、右隣の逃げたアースソニック(8着)、左隣の2番手追走のメモリアルイヤー(15着)のどちらか。
自分のリズムで動ければ、このクラスでも通用することを窺わせるコメントだ。

オーシャンS・G3 芝12 12人気9着 3-2-2 着差0.7
コメント拾えず。

春雷S 芝12 3人気7着 1-1-1 着差0.4 「返し馬に入って、テンションが高いというわけではなく、走る気満々で元気よく走っていました。もう少しリラックスして走れれば、粘れたと思います」(江田照・競馬実況WEBより)
もうちょっとで勝ち負けになったことを窺わせるコメントだ。

オープンに上がってからの江田照騎手の2度のコメントを総合すると、リラックスして、自分のリズムで動いていける展開に持ち込めれば、オープンでもギリギリ粘れると解釈できる。

その戦法が日本一直線が短い函館競馬場(262.1m)でなら、より生きると考えているとしたら……。
このレースには、速いと称したアースソニックもメモリアルイヤーも登録しているけれど、函館の洋芝で2頭の速さも削ぎ落とせると踏んでるとしたら……。
江田照騎手の津軽越えも納得できる。

ツインクルスターは函館競馬は初出走だけど、札幌競馬には出走経験があって、0-1-1-0と悪くない成績だ。そこも決め手になっているか。

相手関係はともかく、江田照騎手の動機は満たしているとは言えるのではないか。

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ツインクルスターで食い込める余地はあるか?
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今年の函館スプリントは人気馬がなかなかに強力で、1-3人気の取りこぼし指数は低いかもしれない。

予想1人気 ストレイトガール 函館5-2-0-1
予想2人気 フォーエバーマーク 函館3-0-1-0
予想3人気 スマートオリオン 函館2-0-0-0

けれど、1人気馬でも先行して、3角5番手、4角3番手くらいにいないと取りこぼしもあるのが函館スプリントだ(1人気・過去10年で3-3-0-4)。
16頭立てフルゲートで、外枠に入れば、人気馬といえども先行できなかったり、先行できたとしても前半で無理を強いられる可能性もある。
だからまだわからない。
人気馬が1頭でも外枠に入り、ツインクルスターが内枠に入れば、まだわからない。

今年はエルニーニョの影響で北海道は冷夏で、なおかつ雨量が増える可能性が高いと競馬王7月号でコースの鬼がレポートしていた。その一方で、今年は水はけをよくするために、函館・札幌競馬場にシャタリングもかけたと同じレポートにあった。

実際、北海道は6月になって、雨の日ばかりで、札幌では22年ぶりの12日連続の雨だったようだ。
先週は、木・金に降った雨の影響で重馬場スタートかと思いきや、土曜の芝は稍重でスタートし、日曜の芝は良馬場に回復していた。
水はけ効果が発揮されたのか?

先週の開幕の芝レースは例年通りに断然内有利で、
芝1200・芝1000は1-8番までの馬連ボックス(28点)で、すべて的中できただけでなく、大幅なプラス収支にもなった。
(3230円・570円・21570円・3340円・6600円・18400円・2160円。どう見ても大幅なプラスだ)

芝中距離でも7レース中5レースが1-8番のボックスで的中はできた(儲かるかは別)。

もし水はけ効果が発揮されていたとするなら、今週も内有利に思える。
週中の予報によれば、函館は先週ほど雨は降らなさそうで、週末も雨は降らなさそう。となると今週は先週以上に乾いた良馬場になる可能性がある(濡れた馬場でレースをするのが一番荒れやすい)。

騎手も内枠先行が有利なことはわかっているはずで、外枠なら何らかの手は打つとは思う。
それでも多頭数だと、外枠はやっぱり不利。名手だからなんとかなると考えるよりも名手でもなんとかならないと考えた方が結果的には上手くいく。
(先週のUHB杯の1人気エイシンオルドスは7枠13番だった。岩田ならなんとかするのかな? と思ったけれど、3着が精一杯だった。芝1200で9番より外の馬が馬券圏内に入ったのは、そのエイシンオルドスのみ)

今年はフルゲートになる可能性が高そうだから、少なくとも7枠8枠に人気馬が入ったら、最高で3着と考えて、別の馬で勝負する作戦は立つ。

最近は一億総馬場読み時代で、開幕に限らず、内枠・外枠の傾向に敏感になっているから、え!? この馬がこんなに人気なの!? ってなことにも出くわす。先週のUHB杯で1着したブルーストーンは人気指数では7、8人気と思われたけれど、3枠で注目を集めたのか5人気で、しかも単7.3倍だった(15倍くらいつくと思っていた)。
これを穴人気だから危ないと思うような、そっち系の敏感肌の持ち主だったら、買えなかったはずだ(自分もそっちの毛があるから注意しないと。うは)。でも好スタートから逃げて1着した。3馬身差の圧勝だった。

つまり、今週も芝短距離の内枠天国が続いていたら、ひねりとか、ねじりとかしないで、素直に内枠(4枠まで)から馬を探すのが大事かもしれない(と自分に言い聞かせたい)。
いくら江田照騎手が想定どおりに津軽海峡を越えてツインクルスターに騎乗したとしても、外枠に入ったら、オッズが美味しそうに思えても、あきらめよう。3着のヒモでひっかけることはあっても、2連系で重要視はしない!(と自分に言い聞かせたい)。

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函館スプリントS・注目馬
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ツインクルスター・上記理由+内枠天国が続いていたら、4枠までで馬券圏内で期待。

ローブティサージュ・前走ヴィクトリアマイルの走りに見どころあり。
前走の位置取り 10-5-5
つまり向こう正面→3角までで10番手から5番手に上がったということ。
そういう例外的な競馬をして、0.6差11着は踏ん張ったとも言える。ローブティサージュは復活しつつあるのではないか。
しかも「前走の着順が悪くても0.7差以内ならば、洋芝適性次第で挽回できる」のが函館スプリントの穴の特徴でもある(去年の項参照)。
ローブティサージュは函館1-0-0-0。芝1800でのものだけど、気性的には1200の方がいい可能性あり。

レオンビスティー・吉田隼騎手は函館の芝が見えているかもしれない。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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