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欧米では早くも「大物!」との評価を得た2歳馬が出現

  • 2014年07月16日(水) 12時00分


ヨーロッパでは「大物!」との評価を得た2歳馬が、少なくとも2頭出現。

 ロイヤルアスコットにおける4つの2歳重賞に関するレポートをお届けしてから、まだ3週間しか経過していないが、その間にヨーロッパでは「大物!」との評価を得た2歳馬が、少なくとも2頭出現。更にアメリカでも、デビュー戦を勝っただけで「スター候補」の呼び声が飛ぶ2歳馬が登場しており、このタイミングで再び、2歳馬をテーマとしたコラムをお届けさせていただきたい。

 ヨーロッパからご紹介する1頭目は、ジョン・ゴスデン厩舎のフェイダーン(牡2、父ウォーフロント)である。

 母アグリーアブルミスは未出走馬。祖母スウィートアンドレディが、今はなきハリウッドパーク競馬場を舞台としたG2プリンセスS(d8.5F)勝ち馬で、母の姉妹にG3アーリントンオークス(d9F)2着馬スウィートアンドフロウレスや、日本で走りG3クイーンC(芝1600m)3着などの成績を残したマチカネタマカズラいるという血統背景を持つフェイダーン。昨年9月にケンタッキーで開催されたキーンランド・セプテンバーセールに上場され、シェイク・ハムダンのシャドウェルに50万ドルで購買されている。

 欧州での活躍馬も多いウォーフロント産駒ということもあってか、ニューマーケットのジョン・ゴスデン厩舎所属となった同馬は、7月3日にヘイドックパークで行われたメイドン(芝6F)でデビュー。ゲートを出てすぐ右に寄れたフェイダーンは、前半は馬群後方を追走。残り2F標識の手前から鞍上P・ハナガンが追い出しにかかった同馬が、残り1Fで先頭に立つと、そこから後続を一気に突き離し、6馬身差の快勝でデビュー勝ちを果した。

 これを受け、大手ブックメーカーのコーラルが15倍のオッズを掲げて来年のG1二千ギニー(芝8F)の1番人気に支持するなど、一躍クラシック候補ともてはやされる存在となっている。

 フェイダーンは8月23日にヨークで行われるG2ジムクラックS(芝6F)の登録を済ませており、管理するJ・ゴスデン師によると、どこかでもう1戦、条件戦を使った上で、ジムクラックSに向かうと表明している。

 ヨーロッパからご紹介するもう1頭は、リチャード・ハノン厩舎のアイヴァウッド(牡2、父ゼビーディー)だ。

 英国で走り、オールウェザーの10F〜12F戦で3勝を挙げた母キーネスロワイヤルの初仔として生まれたアイヴァウッド。祖母キネアードはG1オペラ賞(芝2000m)勝ち馬で、その産駒にはG2ロイヤルロッジS(芝8F)勝ち馬バークシャーがいるという血統背景を持つ同馬は、13年10月のタタソールズ・オクトーバーセール・ブック1に上場され、22万ギニーで購買されている。

 デビューは6月13日にサンダウンで行われたメイドン(芝5F6y)で、アイヴァウッドはここを2.1/4馬身差で制してデビュー勝ち。続いて7月10日にニューマーケットで行われたG2ジュライS(芝6F)に駒を進めると、好位で折り合った後に残り1F付近から抜け出し、ロイヤルアスコットのG2コヴェントリーS(芝6F)3着馬ジャングルキャット(牡2、父イフラージ)に2.3/4馬身差を付ける快勝。2歳馬らしからぬ安定したレース振りで、デビュー2連勝を飾るとともに重賞初制覇を果した。

 これを受け、大手ブックメーカーのコーラルは同馬を、来年の二千ギニーへ向けた前売りでオッズ17倍を付けて、フェイダーンに続く2番人気に評価することになった。

 管理するR・ハノン師はG2ジュライCの後、アイヴァンウッドを評して、自らの管理馬でロイヤルアスコットのG1クイーンアンS(芝8F)で2度目のG1制覇を果した「トロナードに似ている」とコメント。実はこの馬も、8月23日にヨークで行われるG2ジムクラックSへの登録を済ませており、場合によってはここで早くも、フェイダーンとの直接対決が実現する可能性がある。

途轍もない大物が出現したかもしれないと、一部のメディアやファンが騒然となったワンダーギャルのデビュー戦

 一方、アメリカからご紹介する期待の2歳馬は、リー・ジャマティ厩舎のワンダーギャル(牝2、父ティズワンダフル)だ。

 母パッセは未出走馬。祖母ギャルオンザゴーはG3シンガポールプレートS(d8F)2着馬で、その産駒に重賞2勝馬ソーシャルクイーンがいるという血統背景を持つ同馬は、14年3月にフロリダで開催されたOBSマーチセールにエントリー。公開調教で1F=10秒2の時計をマークし、21万ドルで購買されている。

 そのワンダーギャルのデビュー戦となったのが、7月6日にベルモントパークで行われた、ニューヨーク産2歳牝馬限定の特別リーンブルックS(d6F)だった。

 ゲートを出た同馬は、自分が何をすべきか良く判っていなかったようで、前半は5頭立ての最後方をトコトコと追走。3コーナーで鞍上テイラー・ライスのゴーサインが出ると、大きなストライドで他馬を追い抜き、4コーナーで早くも先頭へ。直線では1頭だけ次元の違う脚を繰り出して、最後は後続に14馬身半差をつけてデビュー勝ち。途轍もない大物が出現したかもしれないと、一部のメディアやファンが騒然とすることになった。

 特別競走ではあったものの、実質的には一般的なメイドンと変わらぬ水準のメンバー構成だっただけに、1戦だけで大騒ぎするのもどうかとも思うが、レース振りの鮮やかさという点では、今季ここまで北米でデビューした2歳牝馬の中でピカイチだったことは間違いない。

 次走は、8月10日にサラトガで行われるG2アディロンダックS(d6.5F)が有力視されている。本当の大物かどうか、まずは次走をじっくりと見てみたい馬である。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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