スマートフォン版へ

セレクトセール2014

  • 2014年07月16日(水) 18時00分
セレクトセール

セレクトセール展示風景



大勢の報道陣が忙しそうに撮影や取材に駆け回る姿を見ていると、このセールの存在感がいかに大きいものかということを思い知らされる

 すでにスポーツ各紙などで報じられているように、7月14日(月)、15日(火)の2日間にわたり苫小牧市のノーザンホースパークを会場にして「セレクトセール(主催・日本競走馬協会)が開催された。初日が1歳馬、2日目が当歳馬の日程で、1歳馬は255頭(牡145頭、牝110頭)が上場され、215頭(牡127頭、牝88頭)が落札された。売却率は84.3%、売り上げは60億2800万円(税抜き)と、1歳市場は大盛況だった昨年の61億6070万円よりもわずかに数字を減らしたが、ほぼ前年並みの数字を確保できた。ただ落札馬の平均価格は2803万7209円と前年比77万7474円上昇した。

 最高価格馬は53番「リッスンの2013」(父ディープインパクト、牡黒鹿毛)の2億6000万円。ノーザンファームが上場し、David Redvers氏が落札、1億円超えのミリオンホース8頭のうち、6頭がディープインパクト産駒であった。

「リッスンの2013」

「リッスンの2013」



 予定通り午前10時より開始されたセリは、初めから落札馬が続き、最初の30頭が終わった段階で1頭欠場、2頭主取の他はすべてが売れる展開となった。ディープインパクト産駒のトップバッターは19番「マジックストームの2013」だったが、ここで早くも2億円馬が誕生し、場内を湧かせた。落札者はこのセールでもお馴染みの里見治氏。上場馬が会場から出てくると、それに合わせて多くの報道陣がカメラを片手に撮影場所に群がってくるのも毎度おなじみの光景だ。高額落札馬はまず立ち写真を撮り、その後、事情が許せば落札者もしくは代理人を囲んでコメント取材となる。高額落札馬が誕生するたびにこれが繰り返された。

「マジックストームの2013」

「マジックストームの2013」



 前半に高額馬が続いたことから、後半はやや落ち着いたセリとなったものの、終日活発な取引が行なわれた。馬主や調教師はもちろんのこと、報道陣も毎年「ここでしか会わない」顔ぶれが多い。いつものことだが、大勢の報道陣が忙しそうに撮影や取材に駆け回る姿を見ていると、このセールの存在感がいかに大きいものかということを思い知らされる。

大勢の報道陣

撮影や取材に駆け回る大勢の報道陣



 例年、必ずどこかで雨に降られることの多いセレクトセールだが、今年は2日間とも好天に恵まれた。その代わり気温湿度ともにやや高めに推移し、蒸し暑かった。

 2日目は当歳。セリに先立ち、全上場馬220頭を集めての比較展示が午前8時より始まった。これはまさしく圧巻で、当歳馬だから一部を除いてほとんどの馬に母親がついている。つまり400頭以上の馬たちが番号順に決められた場所で、2時間を過ごすのだ。

 購買者はその間に目当ての当歳をチェックして歩く。きれいに整備された木々が生い茂る空間と、その隣の刈り込まれた広い草地が展示スペースとして確保されており、案内板がここかしこに立てられ、購買者が迷わずに見て歩けるように工夫されている。

 総額65億円に及ぶ当歳馬たちがここに集結し展示されている中を名簿片手に見て行くだけでもかなり大変な作業だが、その分だけ見応えは十分すぎるほどある。名前に馴染みのある繁殖牝馬も多数いて、目移りしてしまう。

 初日と同様にせり開始は午前10時。これまでは初日の1歳と比較すると2日目の当歳はやや数字が落ちる傾向が続いていたが、今年に限っては、1歳と変わらないどころか、初日を凌駕する売れ行きを見せた。220頭(牡161頭、牝59頭)のうち、189頭が(牡139頭、牝50頭)が落札され、売却率は昨年の75.5%から一気に10ポイント以上も上昇して85.9%に達した。売り上げ総額も65億4705万円と、昨年より9億円以上も伸ばし、2日間の合計では125億7505万円と、セレクトセール史上最高額を記録した昨年の数字を大きく上回る新記録となった。

 2日目もミリオンホースが続出し、最高落札金額は403番「アゼリの2014」(父ディープインパクト、牡鹿毛)の2億5000万円。(有)ノーザンレーシングが上場し、近藤利一氏が落札した。「母はアメリカ年度代表馬。早く走る姿を見てみたいですね」と報道陣に囲まれた近藤氏はご満悦の表情で語った。

「アゼリの2014」

「アゼリの2014」



 盛況に終わったことを受け、主催者を代表して吉田照哉氏は「展示の時から上場馬を見て歩きましたが、血統だけではなくて管理技術などもレベルがどんどん上がっていると強く感じました。今まではディープインパクト産駒だけが高評価だったのですが、今年はハーツクライもステイゴールドもいて、さらに来年はオルフェーヴルやロードカナロアの産駒も出てきますし、楽しみにしています」と笑顔で語った。

吉田照哉氏

吉田照哉氏「来年はオルフェーヴルやロードカナロアの産駒も出てきますし、楽しみにしています」



 なお、2日目に注目を集めた中の1頭に父フランケルの376番「グッドウッドマーチの14」がいる。並いるディープインパクト産駒を押しのけ、牝馬の最高価格である9600万円で寺田寿男氏が落札した。この馬はカタールブラッドストック社が所有し、浦河の(有)三嶋牧場が管理を委託され出産させた馬。14戦14勝の“怪物”を父に持つ当歳とあって注目度は抜群であった。

「グッドウッドマーチの14」

「グッドウッドマーチの14」



 さまざまなドラマが繰り広げられたセレクトセールだが、果敢に挑戦した日高の中小牧場は、大盛況の中にあって苦戦を強いられるケースが目立った。「牧場の中ではもちろん一番期待できる生産馬を敢えてここに連れてきていたわけですが、なかなかせり上がるところまで行かないのが残念でした」とある生産者は語る。世界水準の繁殖牝馬がひしめく社台グループ生産馬と比較すると、日高産馬はいかにも分が悪いのだが、まずはできる限り参加し続けることに意義を見出す若手生産者も少なくない。そうした意欲や情熱に期待したいと思う。

 ところで来週は、新ひだか町静内の北海道市場にて「セレクションセール」(主催・日高軽種馬農協)が開催される。日高の生産者にとってはホームグラウンドに戻ってのセリとなる。日高の生産者にとってはむしろこちらにより多くの期待をかけている部分があり、景気がどの程度回復しているのかを占うためにも、まず来週のセレクションの動向に注目したい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング