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高橋康之調教師(1)『ネージュドールのデビューが豊さんの復帰と一緒になれば』

  • 2014年08月04日(月) 12時00分
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▲8月のゲストは新規開業した高橋康之調教師

今月のゲストは、元ジョッキーで8年間の試験勉強の末、見事調教師試験に合格した高橋康之調教師。2年間の技術調教師を経て、今年3月ついに開業を迎えました。同期の後藤浩輝騎手の手綱で厩舎初勝利を飾るという、うれしい第一歩。そして、名伯楽であり自身の師匠でもある池江泰郎元調教師の愛馬、2歳のネージュドールを管理することでも注目を集めています。師匠との秘話や、温めてきた独自の馬作り理論などをたっぷり語っていただきました。(取材:東奈緒美)

騎手時代の兄弟子が厩舎の助手


 2012年に調教師免許を取得されまして、2年待って今年の3月に開業になりましたけれども、待ちに待った時を迎えてどんな思いでしたか?

高橋 技術調教師の間が2年あって、さらに調教師試験に受かるまでにも8年かかりました。その間にいろいろなことを勉強させてもらって、「ああしたい、こうしたい」という構想がたくさんありましたので、それがやっと一歩前に進めるかなというところですね。

 温めてきたものをようやく使える時が来た、という感じですね。技術調教師はどこの厩舎でされたんですか?

高橋 初めが池江泰寿厩舎で、その次に角居勝彦厩舎です。池江先生、角居先生には、調教師試験の勉強を教えていただいたり、普段からお付き合いさせてもらっていますので、ご厚意に甘えてお世話になりました。

 両厩舎とも名門ですね。今の高橋厩舎のスタッフさんというのは、どういう方が集まって来られているんですか?

高橋 いろいろな厩舎から来ているんですよ。僕の開業の時は解散する厩舎が10あって、そのうちの5つの厩舎から来ています。だから、お互い初めて顔を合わせるスタッフばかりだったんですけど、それが逆に人柄を探るじゃないですけど、コミュニケーションを取りながらお互いを知っていくというところで、しっかりと話をしてきて、今ではとてもいい関係になれているんじゃないかなと思います。やっぱり厩舎から笑い声が聞こえてくるとうれしいですよね。

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▲高橋「厩舎からスタッフの笑い声が聞こえるとうれしい」


 和気あいあいとしていて。「何の話をしているのかな?」って気になりますね。

高橋 そうそう。僕も入れてほしいなぁと思いますよ。でも、僕が行くと空気がピリッとしてしまって。仕方ないですね(苦笑)。

 「先生が来た!」ってなりますもんね。騎手時代の兄弟子だった内田浩一元騎手(騎手時代に池江泰郎厩舎に所属し、メジロマックイーンの菊花賞などを制した)も、助手さんとして働かれているそうですね。

高橋 そうなんです。「うちの厩舎に入って欲しい」って、ずっと声を掛けていたんですよ。それこそ、1年以上。僕が試験に受かってすぐに、「うちの厩舎に入ってもらえないですか」「こういう厩舎の方針で考えています」って。「こういう馬の育て方をしていきたいんです」という話もずっとしてきたので、今では10言わなくても1、2伝えればすぐに「ああ。こういうことやね!」って理解してくれます。スタッフ皆を引っ張ってくれていて、すごく頼もしい存在ですね。

 厩舎の皆さんも慕っていらっしゃるんですね。

高橋 ええ。厩舎としてまだまだ手探りの部分が多いなか、僕の考えを一番理解してくれている人が、いろいろな場面でパッと動いてくれて。それもあって、いい形になってきているなと思います。

 馬を預けている馬主さんも幅広いですよね。社台系やクラブからも入っています。なかでも、初勝利のスズカカイゼルの“スズカ”の馬が多いですか?

高橋 そうですね。解散した武宏平厩舎から、引き継ぎの馬を多く回していただいたんです。開業前に武厩舎でも勉強させていただいたので、そのご縁でというところもありますね。あとは池江先生、角居先生に連れて行っていただいた牧場ですとか、僕の師匠の池江泰郎先生に声を掛けていただいたりというところですね。

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 高橋調教師は、騎手でいらした時は池江泰郎厩舎に所属されていたんですよね。その池江泰郎先生の所有馬第1号“ネージュドール”を預かることになられたのは、大きなニュースになりました。池江泰郎先生は去年の7月に馬主資格を取られましたが、事前に聞いていらっしゃったんですか?

高橋 直接ではないですけど、聞いていましたね。泰寿先生ともよく話をしますので、そういうなかでも聞いていました。

 勝負服は、かつての厩舎服と似たデザインで作られたんですよね。

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▲勝負服完成に微笑む池江泰郎元調教師(撮影:花岡貴子)


高橋 もう見られました? 馬主になるのは、師匠の夢だったんじゃないかなと思います。その馬を預けていただけるというのは、本当にありがたいことで。ただただ、感謝ですね。騎手として師匠のところに弟子として行かせてもらった事から始まって、そういうのも含めて運命というか。そういうご縁にすごく感謝しています。

 師弟の愛情を感じます。そのネージュドール、7月1週目の中京でデビュー予定でしたが、当週に左前脚を捻挫してしまい、デビューはいったん延期に。

高橋 目に見えて歩様を悪くしたりですとか、そういうのは全くなかったんです。ただ、ちょっと筋がポワーッと張っていたんですね。箇所が箇所ですので、無理をして動かすと後々に響いてくるなと思い、少しでも不安があるなら無理はしないで、様子を見ようということにしました。

 大事を取ってという感じですね。

高橋 そうですね。若い2歳馬には、珍しいことではないんです。でも、ここの判断が将来を大きく左右すると思います。この時は師匠にもすぐに来ていただいて、一緒に脚を触ってもらって、休ませることを決めたんです。今後どうしていこうかという話もしました。まぁ、預託料が余計にかかってしまうのが、師匠には申し訳ないんですけど(苦笑)。

 そこはデビューしてからしっかりと稼いでいただいて(笑)。池江先生は、よくトレセンに来られるんですか?

高橋 いらっしゃいますよ。でも、気を遣っていらっしゃるみたいで、少し我慢をされているみたいです。ほら、師匠がトレセンの中を動くと、新聞記者さんとかたくさんのマスコミにすぐに囲まれてしまいますから。それで夕方にコソッと来られたりします(笑)。

 いつでも注目の方ですね。ネージュドールは、今はどんな具合ですか?

高橋 7月中旬から軽くキャンターで乗り出して、球節を動かしながら、捻挫の影響がどれだけあるかというのもよく見ながら、進めていっている状態です。今日(7/24)も大分よかったですので、ここのまま順調ならそろそろ坂路でも乗り出していこうかなと思っています。

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▲平日木曜の午前11時、ウトウトお昼寝中のネージュドール


 仕切り直して、デビューは8月くらいですか?

高橋 そうですね。まだ具体的な日程は決めていないですが、これから調整が進むにつれて「大丈夫だな」と思えれば、具体的な目途も立つと思います。ブリーズアップセールの出身馬なので、セール前と最初のデビュー予定前と2回仕上がっていますからね。体つきもそんなにワーッとなるような馬ではないので、仕上げると決めて動かせるようになれば、態勢が整うまでは早いかなと思います。

 ジョッキーは武豊さんということで。豊さんが怪我をされてしまったのが心配ですが…。

高橋 右手親指のつけねの骨折ですよね。豊さんはアブミを軽く踏んで、親指の関節をうまく使う乗り方をされるジョッキーなので、負担がかかりやすいんだと思います。豊さんには1度調教にもまたがってもらっているんです。だから、豊さんの復帰とデビューが一緒になったらいいですよね。

 そうなれば、かなり盛り上がりますね。実際にレースともなれば、人気になりそうですね。

高橋 師匠の馬で、豊さんですからね。それはもう仕方がないと思っています(笑)。(次週へつづく)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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