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サンビスタが断然人気のワイルドフラッパーを破り重賞初制覇/ブリーダーズゴールドカップ・門別

  • 2014年08月15日(金) 18時00分



確実に力をつけていたサンビスタ

 今年から牝馬限定となったブリーダーズゴールドC。ここ2年は地方馬の出走がほとんどなく、また牝馬のダートグレードが7月上旬のスパーキングレディーCから、10月上旬のレディスプレリュードまで間隔があいていたことからの条件変更だが、とりあえず出走頭数という点では、フルゲート16頭に対して14頭の出走があり格好はついた。ただ出走馬のレベルということでは、正直厳しいものだった。中央5頭の単勝オッズが一桁か二桁で、地方馬はすべて万馬券どころか200倍以上。で、結果もそのとおり、中央5頭が掲示板を独占。地方最先着の6着馬は勝ち馬から3.9秒もの大差がついた。

 地方で行われるダートグレードにおける中央の出走枠については、『地方競馬に吠える』のコラムほかで何度か問題として取り上げているが、中央に牝馬限定のダート重賞がないことからも、とりあえず試験的にこのレースからでも中央の出走枠をフルゲートの半数程度にしてみてもいいのではないか。

 一方で、牝馬限定にするにはタイミング的に残念だったということもあった。ショウリダバンザイ、クラキンコなど、牡馬の一線級とも互角に戦っていたトップクラスの牝馬が引退したあとだったからだ。このことについてはまたあとで触れる。

 ワイルドフラッパーが押し出されるように先頭に立ったのは予想どおりで、マーチャンテイマー、リアライズキボンヌ、サンビスタと中央勢が前を固めたのも予想どおり。スタート後はやや離れた位置を進んでいたケイティバローズも向正面で2番手集団に追いついてきた。

 3コーナー手前でリアライズキボンヌが遅れだし、断然人気のワイルドフラッパーに挑むのは3頭に絞られた。その3コーナーでひとつポイントになったのは、サンビスタの岩田康誠騎手が進路をラチ沿いにとったこと。この日は内が重く外差しが決まる馬場で、向正面から各馬とも内を空けて走っていた。ただ岩田騎手は、4コーナーで前にいる3頭の外を回す距離損よりも、直線でワイルドフラッパーと追い比べになったときのことを考え、コーナーワークで少しでも距離を縮めておくほうを選択したのではないかと想像される。

 しかし4コーナーでほぼ決着はついた。懸命に手綱を動かすワイルドフラッパーの福永祐一騎手に対して、サンビスタの岩田騎手はほとんど持ったまま。直線を向くところで並ぶ間もなく内からサンビスタが前に出て、直線ではじわじわと差を広げての快勝となった。ワイルドフラッパーはといえば、迫ってくるマーチャンテイマーをなんとかクビ差でしのいで2着を確保するのが精一杯だった。

 サンビスタは、エンプレス杯ではワイルドフラッパーに2秒2もの差をつけられての3着だったが、雨で水の浮く馬場で力差以上に差がついたということはあったかもしれない。さらに、牡馬相手の前走マリーンSでの僅差2着は、確実に力をつけていた、もしくは調子が上がっていたと考えられる。それを思えば、単勝4.3倍、ワイルドフラッパーとの馬連複で1.3倍という“断然の2番人気”に支持した馬券ファンはお見事。

 対してワイルドフラッパーは、他の中央馬より2キロ重い57キロは、同じ57キロで圧勝のマリーンCを考えれば敗因にはあたらない。明らかにスローな単騎の逃げも4コーナーでは手ごたえ一杯で、この馬自身の上がり3Fは40秒5というもの。この馬の力を出していないのは明らかで、怪我などでもない限り、休み明けのプラス14キロで、デビュー以来最高体重の526キロは、やはり本調子になかったと考えるしかない。ただそれだけを理由に、予想の段階で本命を外せるかといえば、実績を考えるとやはり難しい。

 今回の勝ちタイムは2分7秒4。牡馬のレース(もちろん牝馬も出られるが)として、門別2000mで行われた過去5年の勝ちタイムで、もっとも時計がかかったときでも2分5秒0。スローに流れたとはいえ、牡馬中心のレースと牝馬限定戦では、ことダートにおいては、それだけレースの質が違うといえそうだ。

 そういう意味で残念だったのは、冒頭でも触れたとおり、ショウリダバンザイやクラキンコなど牝馬の一線級が引退したあとで、このレースが牝馬限定戦になったこと。同じ2000mで争われる道営記念の過去5年の勝ちタイムを見ると、2分5秒台から2分8秒台。一概にタイムだけで比べるわけにもいかないが、牝馬限定になったブリーダーズゴールドCは、道営記念と同じような流れのレースと見ることもできる。実際に牝馬のショウリダバンザイが2011年の道営記念を制した時の勝ちタイムは2分6秒8だった。

 今回出走した地方馬では、前哨戦のノースクイーンCを制していたココロバがもっとも人気になった(といっても単勝219.1倍)が、中央では500万下で頭打ち、南関東でもC級で1勝のみというクラスでは、やはり今回の人気、結果もしかたのないものだった。

 とはいえ今後、ショウリダバンザイ級の牝馬がホッカイドウ競馬の生え抜きとして出てくればそれに越したことはないが、近年では道営記念を狙って中央オープンや準オープンクラスの馬が転入してくることもめずらしいことではなく、そういう中に牝馬が何頭かいれば、牝馬限定となったブリーダーズゴールドCで中央VS地方という構図が成り立つ可能性は十分にあると思う。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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