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恐れ入った、ブライトエンブレムの荒削りな強さ(村本浩平)

  • 2014年09月16日(火) 18時00分


◆ノーザンファーム早来牧場の横手裕二厩舎長「この時期にあんな強い勝ち方ができるとは思わなかったよ」

 恐れ入った。何かって、札幌2歳Sのブライトエンブレムの荒削りな強さである。

 最後の直線では大外に進路を取ると、そこから一伸び、いや二伸びや三伸びしたかのような末脚で、先に抜け出しを図っていたマイネルシュバリエなどを交わしてゴール。東京で行われたメイクデビューでも大外をぶん回して、届かないような位置から前を行く馬を差しきっているのだが、今回は直線の距離が短く、そして小回りの札幌コース。それでも図ったかのように差しきる辺りに、ブライトエンブレムの底知れぬ素質を感じる。

 自分も札幌競馬場でこのレースを見ていたのだが、ゴールの後、検量室の前にブライトエンブレムの育成を手がけていた、ノーザンファーム早来牧場の横手裕二厩舎長が笑顔で握手を求めてきた。

 横手厩舎長は赤本だけでなく、古くから様々な取材で大変お世話になっている。勿論、ブライトエンブレムも育成時に話を聞かせてもらっていたのだが、

「高い素質は持っているけど、まだしっかりしたところが足りないから、本当に良くなるのはまだ先だと思うな」

 と慎重なコメントに終始していた。ブライトエンブレムがメイクデビューを勝った後にも話す機会があったのだが、

「この時期にあんな強い勝ち方ができるとは思わなかったよ」

 と評価を聞いていた自分よりも驚いた表情を浮かべていた。

 このメイクデビューの後、ブライトエンブレムは横手厩舎に戻ってきて調整が行われる。当初は本州の暑い夏を避ける意味で牧場に戻ってきたこともあり、札幌2歳S出走のプランはなかった。だが、メイクデビューの疲れも見られなかったブライトエンブレムは、日に日に状態を上げていく。

 その姿を見た横手厩舎長は、ノーザンファームの場長などに札幌2歳Sへの出走を進言。厩舎、クラブ関係者からも前向きな答えが出たこともあり、札幌2歳Sへ向けての調整が行われていく。

「それでも掲示板までに来てくれればというのが、偽らざる気持ちだったかな。ここでいい経験ができれば、また牧場で疲れなども取ってあげて、涼しい時期に厩舎に返してあげられると思っていたんだけど…」

 しかし、ブライトエンブレムはいい経験どころか、来年のクラシック出走を確実とする賞金を手にして、再び調整のために横手厩舎へと戻ってくることになった。この日の札幌競馬場ではジャングルポケットの展示も行われていたが、ジャングルポケットもまた横手厩舎の育成馬であり、札幌2歳Sを勝利した後に、日本ダービーを制している。似たようなバックボーンを持ち、そして横手厩舎長の想像を超えるような成長力を持つブライトエンブレムもまた、厩舎の偉大な先輩の跡を追うように、世代の頂点に輝くのかもしれない。

 ちなみにこの札幌2歳Sで自分が注目していたのはハービンジャー産駒のスワーヴジョージ。勝負どころでの不利もあって、握りしめていた馬券共々残念な結果に終わってしまった。ちなみに札幌2歳Sでは、同じくハービンジャー産駒のジャズファンクが除外の憂き目に…。ハービンジャーファンクラブ(笑)の皆さんの悲痛な叫びが聞こえてきそうだが、幸いなことにその後も続々と勝ち馬が輩出されており、再び重賞戦線に名を連ねてくる産駒も出てくるはず。こっそりハービンジャーファンクラブに入っている自分も、産駒の重賞制覇の暁には、的中馬券を振り回して「ハービンジャー万歳!」と辺り構わず触れ回りたい(嘘)。

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