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【再掲】『夢の舞台に近づくために…』勝負師・丸田恭介の苦悩

  • 2022年03月26日(土) 20時00分
丸田恭介騎手

丸田恭介騎手


※当記事は2014年10月7日配信分の再掲です

「最初から一緒にって言う風に、いい馬を任せてもらえるようなジョッキーにならないと」


赤見:サマースプリントシリーズ優勝おめでとうございます!リトルゲルダとのコンビ、ハマりましたね!

丸田:ありがとうございます。本当に頑張ってくれましたね。小倉や阪神まで呼んでいただいて、とてもいい経験になりました。最初は北九州記念で騎乗依頼をいただいたんですけど、実はその週の水曜日だったんです。他の騎手が別の馬に乗るので、空いてしまったみたいで。鮫島先生はいい言い方をして下さったんですけど、「勝負出来るジョッキーを探してくれ」って言って、僕が依頼を受けたというのは嬉しかったですね。

赤見:北九州記念は初騎乗でしたけど、人気薄で接戦をモノにしましたね!

丸田:カメラのアングル的に、あんまりゲート出なかったんじゃないかってみんなに言われたんですけど、そんなことなくて。普通に出てくれてました。ちょっと押してって、位置が取れたのが良かったですね。

赤見:あの時の華麗なるコーナリング!絶妙でしたね!!

丸田:いや、僕じゃなくて馬が上手かったんですよ、ホントに。馬が自分で進んでっている感覚で。僕は邪魔しないように付いてっただけです。コーナー手前は一番内にいて、コーナーでスッスッて外に出てくれて。超なめらかでしたね。普通はちょっと外張ったり、多少内にもたれたりしながらですけど、キレイに回ってくれるんですよ。

赤見:相当いい手応えでしたよね。

丸田:そうですね。直線向く時には「勝てるんじゃないか」って。前の馬はみんな手応えが怪しくなって、僕だけ持ったままなんで。強かったですよ。あのハナ差はデカいですね。

北九州記念

丸田恭介騎手「強かったですよ。あのハナ差はデカいですね」(写真は北九州記念優勝時)



ただ冷静に考えると、僕の乗り方は悪かったなって。あんまり上手に乗れなかった。あの手応えだったら、直線はもっと伸びるはずですから、僕のリズムが悪かったと思います。2戦目はそういうことがないように気を付けました。

赤見:どの辺りが気になるんですか?

丸田:全部ですけど、特に直線のリズムですね。どのレースも勝てば嬉しいですけど、やっぱり重賞ってことで、気持ちが固くなったかなって。そういうところはもっと成長していかないと。

ここまでなかなか重賞が勝てなかった中で、水曜日に依頼が来て、パッと乗せてもらった馬で勝ったので、なんか不思議な感じがしました。嬉しかったですけど、実感がなかなか湧かなかったです。インタビュー受けて、帰って来て、VTRを見て初めて、「うわ〜これ重賞だぞ」って。

赤見:続くセントウルステークスは、強い競馬でしたね!

丸田:ゲートを出てから、ハクサンムーンの位置は見てました。僕のイメージの中では、メイショウイザヨイとエーシントップは一歩位置が下がると思ってたんです。で、フォーエバーマークとハクサンとアンバルブライベンの3頭の先行争いかなって思ってたんですけど、5頭が一団で行ったので、これは速くなりそうだなって。案の定速いラップで、このまま流れに乗って行ったら先行勢は苦しくなるんじゃないかって思って、先行している中でも一呼吸置いて乗っている感じでした。

今回もコーナリング上手かったですね。エーシンが下がって来たその間をスッと抜けて。直線はこの前より余裕でした。人馬共に。直線を向いた時点で、ハクサンムーンもグイグイ手応えあるように見えましたけど、それでも絶対負けないって思えました。絶対僕の馬の方が進むって。

開幕週だったし、本当に強かったですよね。北九州記念を勝った時点でスプリントチャンピオンが獲れそうな位置にいて、4着か5着でチャンピオンになれるっていうところまで来ていたので、こういうチャンスを絶対に物にしなきゃダメだって思いました。せめてそこだけは絶対って。最低限そこを目指してましたけど、思った以上でしたね。

赤見:リトルゲルダとの出会いは、大きかったんじゃないですか?

丸田:本当にそうですね。この馬との出会いは突然でもあるんですけど、オーナーとは何年か前から乗せていただく縁があったんです。今年も2頭ずっと乗せてもらってて。まるっきり知らないジョッキーを関東から呼ぶってなったらOKしてもらえなかったかもしれないですけど、そういう繋がりだったりで、僕らは騎乗依頼をもらえるんだなって改めて思いました。どうにか成績出るように、乗せてもらえるようにってやって来たことの積み重ねの一つが、実を結んだ感じですかね。

セントウルS

丸田恭介騎手「絶対負けないって思えました。絶対僕の馬の方が進むって」(写真はセントウルS優勝時)



赤見:サマージョッキーシリーズは惜しくも2位でした。

丸田:僕ね、その週の木曜日に気づいたんですよ。記者さんから教えてもらって。リトルゲルダで勝ったらチャンピオンなるよって言われたんですけど、その時は「そんなに甘くないから」って言って、全く気にしてなかったんです。

でもセントウルを勝って、阪神のウイナーズサークルにバンて順位が出たら1位で。「は? 俺1位?」って最初びっくりしたんですけど、そういえば記者さんがなんか言ってたなって思い出したんです(笑)。表彰でウイナーズサークルにいる時に京成杯AHが発走して、ファンの人もいるのに「田辺さん負けてぇ〜」って応援してました(笑)。で、ビシッと勝っちゃって、「あ〜あ、やっぱりな」って。WSJS出たかったですよ。でもそんな甘くないですよね。ただ今回、初めてサマージョッキーシリーズの中で戦うことが出来たっていうのはいい経験でした。

赤見:今年の夏はいい夏だったんじゃないですか?

丸田:そうでもないですよ。だって勝ってないですもん。函館2勝、札幌1勝ですよ。で、小倉の1勝で夏4勝ですよ?!それで、乗り替わりで2個勝たれてますから。病気の乗り替わりと、僕が遠征に行ってる時に出た馬も勝って。僕が触ってる馬で他の人が6勝してますから。

今年けっこう気持ちがブレてんなって。自分が正しいと思ってやって来たことが、まぁタイミングもあると思うんですけど、色々が上手くいってなくて。そうすると信じてたことも疑っちゃうというか。気持ちのふり幅が大きかったんです。函館2勝のうちの2勝は、バンバンて連勝した2勝ですから、いい時はいいんですよ。何かが狂うと、ガタガタってなる。気持ちの面ですね。それで馬に迷惑かけてると思うと、心苦しかったです。どの馬ももう少し上手く出来たんじゃないかって。勝っても負けても納得出来たレースは少なかったです。

赤見:今後の目標を教えて下さい。

丸田:一つでも多く勝つことです。大きい所も勝ちたいし、キリないな。ジョッキーになりたいって思った時は、GIとか見て、勝ったらカッコいいなっていうのを見て憧れたわけですから。ガッツポーズとかしてる姿を想像してジョッキーになったので、そこに少しでも近づけるようにっていうのはずっとありますね。そうなって初めて、「俺はジョッキーになったんだ!」って実感するのかもしれないです。だから、今は「ジョッキー出来てるのかな」って思う時もありますし。

丸田恭介騎手

丸田恭介騎手「(今後の目標は?)一つでも多く勝つことです。大きい所も勝ちたいし、キリないな」



めぐりあわせで今回近しいところまで来させてもらいましたけど、テン乗りだけじゃなくて、最初から一緒にって言う風に、いい馬を任せてもらえるようなジョッキーにならないと。今はそこまで近づいたなっていう感覚はないです。

ファンの方々にとっては、感動するレースと、馬券の収支が大切だと思うので、そこを頭に置いて頑張ります。

(取材・文=赤見千尋)

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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