質問に答えながら太のルーツに迫ります…
“人を傷つけるようなことは言わない”という小牧騎手のポリシーについて、ユーザーから長い長い質問が…。質問に答えながら人柄のルーツに迫るなかで、改めて小牧騎手の少年時代が明らかに!
(取材・文/不破由妃子)
自分で言うのもなんやけど、僕は本当にええ子やった
──今回もユーザーから質問がたくさん届いていて、今週はメンタル面についての長い質問を紹介します。「以前、太論でおっしゃっていた“人を傷つけるようなことは言わない”という人柄はどこからですか? 簡単なようでいて、とても難しいことだと思うのですが。元来、生まれ持ったものですか? それとも曽和先生をはじめとする周囲の方々の影響ですか? もっと言うと、実は騎手にもっとも必要なのは、“乗れる”とか“追える”とかよりも人柄ですか?」というものです。たくさんの質問が入っているので、まずは“人を傷つけるようなことは言わない”という人柄のルーツからいきましょうか。
小牧 そんなのわからんわ(笑)。生まれつきちゃう? 親の育て方が良かったとか(笑)。
──ご自分では、なかなかわからないものですよね。
小牧 そうやね。小学生の頃から友達とケンカしたりもしなかったし…。僕が一番荒かったのは、競馬学校にいるときやね。いつも同じヤツと何度もケンカしたわ。慣れない環境でストレスもあったんやろうけど、そいつにあまりにも腹が立ったんやろうね。そいつは途中で辞めてしまったけど。それ以外は、ケンカというケンカをした記憶はないなぁ。
──小学生の頃も、やんちゃタイプではなかったんですね。
小牧 うん。その頃から気を遣ってしゃべっていた記憶がある。僕ね、家ではもう、めちゃくちゃいい子でしたよ。あまりにも手が掛からない子供だったから、親は僕の子供時代について、あんまり印象にないらしいもん。小学生のときも中学生のときも何にも悪いことはしなかったし、何でも言うことを聞いてたし。掃除から洗濯、夕飯も作っとったなぁ。
──中学生の男の子が、家事全般をやっていたんですか?
小牧 うん、ふたりとも働いてるときはね。自分でいうのもなんやけど、ホンマにええ子やったよ。学校ではね、冗談ばっかり言って騒いでいたけど、親は僕がそういう子だって知らんかったもん。ただ、同級生にいとこがいて、下に住んどったんですわ。で、たまに家に上がってきて、母親にいろいろチクっとった(笑)。親はそれで初めて知るっていうね。
──家でいい子にしていたというのは、意識的に?
小牧 いや…。なんか親に甘えられんかったんやね。甘えたりわがままを言ったりして、親の負担になってはいけないっていう気持ちがあったかもしれん。
──ご苦労されたとおっしゃっていましたものね。
小牧 そういえば、借金取りの電話はいつも僕が取ってたわ(笑)。子供心にわかってたんやろうね。給食費が払えんこともあったなぁ。僕ね、学校の先生には「忘れました」って嘘をついとったんですわ。でも、「忘れました」が3回くらい続いたときに、先生がやっと事情を察してくれて。最後に「先生に怒られるから、持っていかなアカンねん!」って、泣きながら母親に言った覚えがあるわ。いまだに覚えてる。小学校6年生のときやったかなぁ。
──そんな小牧少年を想像すると、冗談ではなく涙が出そうになります…。
小牧 辛抱してましたわ。当時、むっちゃ流行ったメーカー品の靴下があってね。みんな履いてて僕も欲しかったんやけど、絶対に「欲しい」とは言わんかったもん。オモチャもそうやけど、そういうものを買ってもらったことがなかった。ただウチはね、誕生日はちゃんとお祝いしてくれたし、クリスマスも必ずプレゼントを用意してくれてた。自転車とかもらったなぁ。そういうのは忘れへんかったね。
──何でも買ってもらえる環境より、そういうことのほうが大事なのかもしれませんね。だからこそ、頑張っている両親を困らせてはいけないという優しい感情が芽生えたんでしょうし。質問をくれたユーザーの方は「人を傷つけることを言わないというのは、簡単なようでいて、とても難しいこと」とおっしゃっていますが、その点については?
小牧 自分が言われて嫌なことは人にも言わないっていうシンプルなことですわ。とはいえ、気を付けているつもりの僕だって、知らず知らずに人を傷つけているかもしれんしね。嫁さんにはいろんなことをよう言うてるみたいやわ(笑)。
僕だって、知らず知らずに人を傷つけているかもしれんしね。嫁さんにはいろんなことをよう言うてるみたいやわ(笑)
──それはすなわち、「甘えてる」っていうことですね(笑)。最後になりますが、「実は騎手にもっとも必要なのは、“乗れる”とか“追える”とかよりも人柄ですか?」ということですが。
小牧 そんなことはないよ。やっぱり技術は必要でしょう。ジョッキーは技術が一番や!
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