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競馬ファンにとっての醍醐味、来年のクラシックを予想するアンティポスト・ベット

  • 2014年11月05日(水) 12時00分


皆様なりの“イチ推し“を見つけておかれると、来年の3歳クラシックをより一層お楽しみいただけるはず

 今週土曜日(8日)にドンカスターで行なわれる開催を最後に、2014年の英国芝平地シーズンが閉幕する。

 愛国も含めて芝平地の主要競走はほぼ終わり、これからは16日にパンチェスタウンで行われるG1モーギニアハードルを皮切りに開催されていく、障害の主要競走が競馬ファンにとってのお楽しみとなる。

 そしてこれからの季節、競馬ファンにとってもう1つの醍醐味となるのが、来年の3歳クラシックへ向けてブックメーカー各社が売り出しているアンティポスト・ベット(長期前売り、フューチャー・ベットとも言う)だ。

 現状では、牡馬戦線がことに二千ギニーが近年にないほどの大混戦模様なのに対し、確固たる軸馬が存在するのが牝馬戦線となっている。

 G1二千ギニー(芝8F)へ向けた前売りで、各社が横並びで1番人気にしているものの、オッズは9〜11倍と1番人気とも思えぬ倍率となっているのがA・オブライエン厩舎のオルマンリヴァー(牡2、父モンジュー)である。07年に英国と愛国のG1千ギニーを制したフィンスケールビオの3番仔で、昨年秋のオフス・オービーセールにて285万ユーロ(約3億7840万円)という最高値で購買された同馬。8月31日にカラのメイドン(芝8F)でデビュー勝ちを飾ると、9月28日に同じくカラで行なわれたG2ベレスフォード(芝8F)も快勝。絵にかいたようなエリートコースを歩んでいる馬である。ダービーへ向けた前売りでもオルマンリヴァーは、各社9倍前後のオッズで2番人気に評価している。

 コーラルが、オッズ9倍でオルマンリヴァーと横並びの1番人気に推しているのがオルマンリヴァーと同じくA・オブライエンが管理するハイランドリール(牡2、父ガリレオ)だ。祖母がG1AJCオークス勝ち馬サークルオヴゴールドで、叔父にエルヴストリームやハラダサンといった豪州のG1勝ち馬がいるという、豪州血統を背景に持つ同馬は、タタソールズ・オクトーバーにて46万ギニー(約7520万円)で購買されている。今年7月1日にゴウランパークのメイドン(芝8F)を制してデビュー2戦目で初勝利を挙げると、7月31日にグッドウッドで行われたG2ヴィンテージS(芝7F)を連勝している。

 ウィリアムヒルが、オッズ9倍でオルマンリヴァーと横並びの1番人気に推しているのが、これもA・オブライエンが管理するグレンイーグルス(牡2、父ガリレオ)だ。今年のG1愛千ギニー(芝8F)勝ち馬マーヴェラスの1つ年下の全弟で、叔父にジャイアンツコーズウェイがいるという超良血馬である。6月29日にカラのメイドン(芝7F)でデビュー2戦目にして初勝利を挙げると、G3タイロスS(芝7F)、G2フューチュリティS(芝7F)、G1ナショナルS(芝7F)を3連勝。10月5日にロンシャンで行われたG1ジャンルクラガルデル賞(芝1400m)は1着入線後、進路妨害を犯して3着降着となったものの、能力的には明らかにこの馬が抜けていることが実証された一戦だった。

 ラドブロークスが、オッズ11倍でオルマンリヴァーと横並びの1番人気に推しているのが、ジョン・ゴスデンが管理するフェイダーン(牡2、父ウォーフロント)だ。祖母スウィートアンドレディが北米のG2プリンセスS(d8.5F)勝ち馬で、その産駒に日本で走り2勝した他、G3クイーンC3着などの成績を挙げたマチカネタマカズラがいるという牝系を背景に持つ同馬は、キーンランド・セプテンバーにて50万ドルで購買されている。7月3日にヘイドックのメイドン(芝6F)でデビューし、ここを6馬身差で快勝。2歳シーズンはこの1戦のみで終えている。

 一方、オルマンリヴァーが2番人気となっているダービーの前売りで、各社が7〜9倍のオッズを掲げて横並びで1番人気に推しているのが、これもエイダン・オブラエンが管理するジョンエフケネディー(牡2、父ガリレオ)だ。05年にG1モイグレアスタッドS(芝7F)、G1マルセルブーサック賞(芝1600m)を制したランプルスティルトスキンの4番仔で、今年のG1ヨークシャーオークス(芝12F)勝ち馬タペストリーの全弟という、これも超のつく良血馬である。8月10日にカラのメイドン芝8F)を制してデビュー2戦目で初勝利を挙げると、9月13日にレパーズタウンのG3ジュヴェナイルターフS(芝8F)を3.1/4馬身差で連勝。逸材揃いのオブライエン軍団の中でも、ダービー候補筆頭と目される存在となっている。

 一方、G1千ギニー(芝8F)がオッズ5〜6倍、G1オークス(芝12F10y)がオッズ5〜6.5倍で、ブックメーカー各社がいずれも前売り1番人気に支持し、牝馬戦線の確固たる軸と見られているのがファウンド(牝2、父ガリレオ)である。ことにオークス戦線は2番人気以下がいずれもオッズ15倍以上で、1本被りの本命となっているこの馬もまた、エイダン・オブライエンの管理馬である。牡馬を撃破したG1ロッキンジS(芝8F)を含む2つのG1を制したレッドエヴィーの4番仔で、G3パークS(芝7F)勝ち馬マジカルドリームの全妹にあたる同馬。8月23日にカラのメイドン(芝8F)でデビュー勝ち後、いきなり挑んだG1モイグレアスタッドS(芝7F)では、出遅れたうえに勝負どころで追われると左右に寄れる若さを見せて3着に敗退したものの、次走のG1マルセルブーサック賞(芝1600m)を完勝。そのレース振りの確かさから、一気にクラシック本命の座に躍り出ることになった。

 G1千ギニーの前売りで、各社6〜8倍のオッズを掲げて差のない2番人気に推しているのが、ロジャー・ヴァリアンが管理するカーソリーグランス(牝2、父ディストーテッドヒューモア)だ。祖母がオークスの前哨戦G3ミュージドラS(芝10F88y)勝ち馬タイムアウェイという牝系出身の同馬。キーンランド・センテンバーに上場されたものの15万ドルで主取りとなり、生産者のメリーフォックススタッドの所有馬として走ることになり、今年5月24日にケンプトンのメイドン(AW6F)でデビュー勝ち。続くロイヤルアスコットのG3オルバニーS(芝6F)で重賞初制覇を飾った後、ヨークのG2ロウザーS(芝6F)ではティギーウィギーの2着に敗れて初黒星を献上。しかし9月14日のG1モイグレアスタッドS(芝7F)をきっちりとモノにしG1制覇を果している。

 日本のファンの皆様も、アンティポスト上位にいる馬たちの戦績や血統を精査し、レース映像を御覧いただいた上で、皆様なりの“イチ推し“を見つけておかれると、来年の3歳クラシックをより一層、お楽しみいただけるはずである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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