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サミットストーンがゴール寸前で差し切りV! 南関勢が上位独占!/浦和記念・浦和

  • 2014年11月20日(木) 18時00分


(撮影:武田明彦)

驚かされたサミットストーンの末脚

 浦和記念のみならず、浦和競馬場での交流重賞は地方馬が馬券にからむことが多い、ということは予想のたびに書いていると思うのだが、今回は、アタマ、クビという接戦で地元南関東勢が上位3着までを独占する結果となった。

 予想の最後で「過去5年の成績を見ても地方馬が2勝、2着2回、3着1回と好走しているように…」と書いたのだが、実は不安がないでもなかった。その成績は2009〜2011年の3年間に残したもので、ここ2年は中央勢が3着以内を独占していたからだ。しかも、2012年の2、3着馬、さらには昨年の1〜3着馬が今年も出走していた。

 年齢を重ねているとはいえ、今回の中央勢はちょっとだらしないレースぶりだった。9着に沈んだエーシンモアオバーの戸崎騎手は、向正面ですでに手ごたえがなかったと首をひねっていた。今年はほかにハナを主張するような馬もなく、エーシンモアオバーはすんなりと先頭に立ったように見えた。最初の3F通過が36秒4で、1000m通過は62秒2。しかしマグニフィカが強引にハナを奪った昨年でも、同36秒9、63秒1というもの。2着に逃げ粘った一昨年が同37秒8、62秒9で、逃げて4着だった3年前が同38秒3、64秒1という過去のラップと比べると、今年はやや速いラップを刻んでいた。この日は馬の走ったあとに砂埃がもうもうと舞い上がるほどパサパサに乾いた馬場だったことも考えると、直後のグランディオーソ、サミットストーンに突かれて、意外に厳しいペースだったのかもしれない。馬体重マイナス10kgの504kgを懸念する声もあったが、前走・白山大賞典の514kgは、510kgを超える体重での初白星で、むしろ今回のほうが好成績を残している時の平均的な体重だった。エーシンモアオバーは白山大賞典をレコード勝ちしたことで、拮抗したとはいえ1番人気に支持されることになったが、3歳時の連戦連勝以降は、勝利から次の勝利まで間に少なくとも3戦は勝てないレースがあるように、2戦連続ではなかなか好走できないタイプなのかもしれない。

 同じように2012年以降は年に1勝ずつというランフォルセも好位の4番手あたりを追走したが、向正面の中間あたりですでに追走に一杯だった(6着)。シビルウォーが4着、グランドシチーが5着と掲示板を確保したが、3着のトーセンアレスから3馬身という着差は完敗だった。

 中団を追走していたトーセンアレスが向正面で仕掛けて一気に先団にとりつき、エーシンモアオバーが3コーナーで後退したことによって先頭に立ったグランディオーソと、直線は2頭の一騎打ちのような形になり、直線半ば過ぎまで、勝つのはどちらかに思えた。しかし4コーナーでは5馬身ほども差のあるところからラチ沿いをぐいぐいと追い込んで差し切ったのがサミットストーンだった。

 それにしてもサミットストーンの末脚には驚かされた。3〜4コーナーでは手ごたえがなくなって下がりはじめるエーシンモアオバーがすぐ前にいて、外にはあとの中央3頭が厚い壁になり、完全に行き場をなくしていた。4コーナー手前で石崎駿騎手は完全に追うのをやめているほどで、その場面で一旦は勝負をあきらめたという。勝ったからよかったようなものの、あれで負けていれば相当に悔しかったことだろう。レコード決着だったマーキュリーCでは見せ場があっての4着、やはりレコード決着となった白山大賞典ではエーシンモアオバーに3/4馬身まで迫っての2着というサミットストーンの勢いはやはり本物だった。

 悔しかったのは、アタマ差2着のグランディオーソではなかったか。トーセンアレスが早めに動いて並びかけてきたため、それと競り合うように3〜4コーナー中間から追いどおし。ゴール前はやや脚が上がっているように見えた。仮にエーシンモアオバーが後退したあと単独先頭であれば、追い出すのは直線を向いてからでよく、大きなロスのあったサミットストーンの追い込みも振り切っていたと思われる。そういう意味では、結果的にではあるものの、トーセンアレスの早めの仕掛けがサミットストーンの勝利をアシストすることになったとも言える。

 今年地方馬によるダートグレード勝ちは、かきつばた記念のタガノジンガロ(兵庫)に続いて、ようやくこれで2頭目。サミットストーンは、今年出走したダートグレードはすべて4着以内に好走していて、過去にもGII/JpnII勝ちまでで地方の年度代表馬になった馬が何頭かいるように、年度代表馬候補の資格を得たといっていいだろう。JpnIIの兵庫ジュニアグランプリとJpnIの全日本2歳優駿を残しているため2歳馬からも年度代表馬候補が出てくるかもしれないが、3歳以上の地方の年度代表馬争いということでは、勝島王冠(11月26日・大井)で復帰予定のハッピースプリントとサミットストーンが、年末の東京大賞典で決戦ということになりそうだ。

 サミットストーンの今回の勝ちタイムは2分7秒8。過去5年の浦和記念の勝ちタイムとの比較では、2010年のスマートファルコンは2分5秒8とさすがに抜けて速いが、それ以外が2分7〜8秒台であるように、平均的な勝ちタイムだった。ただその平均的な決着の浦和記念から、その後の東京大賞典での活躍馬は出ていない。JBCクラシックと、このあとのチャンピオンズC(中京)の上位組との争いになるであろう東京大賞典で、サミットストーンが勝ち負けとなるには、さらにもう一段階のレベルアップが必要かもしれない。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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