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「レースは何が起こるかわからないからね」小牧太騎手にインタビュー

  • 2014年12月09日(火) 18時00分
競馬の職人

小牧太騎手



小牧太騎手「もう一度つき進む勇気と根性を持ち続けて行きたい」

 先週のチャンピオンズカップ(中京GIダート1800)ではホッコータルマエが見事に中央GI初勝利を挙げました。ホッコータルマエの関係者のみなさま、おめでとうございます。

 今年から中京へ舞台を移し、名前もジャパンカップダートから改名した初回を勝つという名誉を手にしたホッコータルマエは2番手から抜け出し、4角では逃げ馬に並びかけ、直線に入り幸騎手の追いだしには「勝つんだ」という執念を感じました。

 過去2年連続3着。悲願の中央GI初勝利を記念すべき第1回に制覇、といろんな人の思いが勝利へとつないでくれたと思うと感動です。幸先輩おめでとうございます。ドバイへのチャレンジも視野に入ってきますね。僕もこっそり馬運車に乗っていきたいです。

 一方、GI初挑戦の今回、8番人気で臨んだナムラビクターが半馬身差の2着に入りました。鞍上の小牧騎手は、「一瞬勝ったと思ったよ。初めての馬込みでもよく辛抱できこの結果をだすことができた。負けて強しだったし、次が楽しみだね」とコメントしていました。

 いつも絶妙な騎乗をする小牧太騎手からインタビューをいただきました。

常石 今日は、よろしくお願いします。いつもどんな仕事をされていますか?

小牧 馬に乗っています(爆笑)。

常石 (笑)大変失礼しました。園田競馬から移籍され独特な騎乗スタイルで乗っていると思います。こだわっていることありますか?

小牧 いつもこだわっていることも、納得いくレースもないですが勝った時はやっぱり嬉しいですよ。

常石 先日のファンタジーS、おめでとうございました。抜群にいい位置でレースを展開していきましたね。

小牧 人気はないとは思っていたけどしんがりとはね。返し馬が終わった時も「カリカリしていたので、いつもと変わりないかな」と思っていました。3番手でうまく折り合いが付いてレース運びがうまくいったし、勝つときってあんな感じかな。やることみんな上手くいくんだよね。でもたまたまではないよ。新馬の時から力が違っていたからね。

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人気薄だったがファンタジーSを快勝したクールホタルビと小牧太騎手



常石 あんな強い勝ち方ができたレースは気持ちがいいでしょうね。

小牧 ピタッとはまることってなかなかないよなー。この後は阪神ジュベナイルに行くけれど、きびきびした動きでスピード感もあるし、馬体に貫録のふくらみも出てきている。ファンタジーSの時のようにはいかないと思うけど、レースは何が起こるかわからないからね。

常石 1ハロン距離が伸びますね。そのあたりの攻略法は、

小牧 馬体も大きくなっているので、体力も充分あると思うから問題にならないと思う。

常石 楽しみです。小牧さんは鞭をあまり使いませんよね。小牧さん独自の騎乗スタイルが気になっているんですが、教えてください。

小牧 あまり使いすぎると馬本来の能力を失ってしまうと思う。馬の状態を見てギリギリまで来てる馬には、鞭を打っても走らないのがわかる。馬とコミュニケーションを取りながらやっていくけど、うまく取れないときはチグハグになってしまいお互いしんどくなるね。馬から感じる心っていうか感性が大事やな。つねちゃんと話していてもチグハグにならないようにコミュニケーション取ってるよ。(笑)

常石 ありがとうございます。助かります(照れ笑い)

 話は変わりますが、息子さんが乗馬で国体に出場し2種類というか2段階の競技をされて優勝。難しい競技をこなし すごい活躍をされていますよね。やっぱり血統ですか?

小牧 いやいや、よく知らんけど国体に出たりしてるみたいやな。俺の子と違うんちゃうか? (笑)今牧場で働いてるわ。

常石 僕も今乗馬をしていますが、馬場馬術だけでも悪戦苦闘しているので尊敬します。一度一緒のクラブで会ったことありました。

小牧 そうやったな。僕も毎日悪戦苦闘してるわ(笑)

常石 馬に乗り始めてから何年ですか?

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調教へ向かう小牧太騎手



小牧 そうやな忘れたわ(笑)。18歳からやからもう30年。関西所属の平地では僕が一番年上やけど、障害騎手の林さんが一番年上やな。まだまだ行けるで。岡部さんも長いこと乗っていたしね。鍛えてるよ。

常石 小牧さんの動きを見ていると体が軽そうに動いていますよね。

小牧 いやいや体重が重くて困ってるんだよ。走ることを基本に汗取りをやっています。タバコもやめて健康であることを実感しているし、まだやり残してることあるので頑張るわ。

常石 JRAに移籍して何年ですか? 通算746勝そして今年は59勝(12月7日終了時点)と活躍です。

小牧 11年目、もうすぐ12年目やな。地方の時は年間300勝していたから。開催日数の違いはあるけれどJRAに移籍したときは、年間100勝を意識していたがなかなか勝たせてもらえなかった。これが俺の実力なんだけどね。騎手を続けてる限り、やっぱり日本ダービーは勝ちたい、という思いがありますね。2008年はスマイルジャックで2着という悔しい思いをしているしね。あの時は一瞬勝った、と思ったけどね。でもその時は、ダービーをあまり意識してなかったんです。今になって悔しいと思ってます。

 与えられたことを一生懸命やる、という信念は今も昔も変わっていないよ。騎乗数が減ったときもあり自ら限界をつくってしまったように思う。そんな時でもファンの方が応援にかけつけてくれるので申し訳ないと思ったわ。

常石 小牧さんのようなベテランでも悩んだ時期があったんですね。園田競馬場では、小牧記念杯ってあるんでしょう。一度行ってみたいな。大阪から近いので便利ですよね。おいしい屋台もお酒もあるって聞いてます。お酒といえば、兄の店で小牧さんの焼酎があるんですよ。「小牧」という麦焼酎と「太」というイモ焼酎どちらも美味しいんですよ(余談)。今日は、お酒座談会の予定だったのに残念です。(笑)

 騎乗回数や勝利数は半端じゃないですね。最後にファンの方へメッセージをお願いします。

小牧 30年目の節目に立ちたくさんの方へのつながりを感じ、ありがたみも身に染みています。もう一度つき進む勇気と根性を持ち続けて行きたいと思います。最後にみんなでおいしいお酒を分かち合いたいからね。応援よろしくお願いします。

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小牧太騎手「もう一度つき進む勇気と根性を持ち続けて行きたいと思います。最後にみんなでおいしいお酒を分かち合いたいからね」



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 橋口先生からも信頼が厚く、職人技で馬を作っていく小牧騎手ですが、まだまだでっかいことをやってくれそうな予感がします。僕に気づかってくれながらいい話をたくさんしてくれました。小牧騎手の優しさに感謝です。ありがとうございました。

つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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