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ジェンティルドンナの全弟レゲンデ

  • 2014年12月10日(水) 12時00分
ウインベントゥーラ(牡 栗東・宮徹 父ディープインパクト、母コスモフォーチュン)
 母コスモフォーチュンは現役時代に北九州記念(G3)を勝ったスピード馬。コスモプラチナ(09年マーメイドS-GIII)の半姉にあたる良血でもある。初子のマイネボヌールは準OPに出世しているように繁殖牝馬としても悪くない。父がロージズインメイからディープインパクトに替わった本馬は配合的に見どころ十分。ディープ産駒の最も基本的なニックスはLyphardクロスで、本馬はそれを4・5×5で持っている。母コスモフォーチュンはグルームダンサーを通じたLyphardクロスの持ち主。これはスマートレイアー(14年阪神牝馬S-GII)の母と同じパターンで、Seeking the Goldの硬質なスピードとうまくマッチしている。父がスプリンタータイプの繁殖牝馬と相性がいいこともセールスポイント。派手さはないものの好ましい配合パターンが盛り込まれており、手堅く走ってくるのではないかと思われる。芝向きのマイラー。

キロハナ(牡 栗東・池江泰寿 父ディープインパクト、母ハウオリ)
 母ハウオリは芝1600〜2000mが守備範囲で準OPまで出世した。2代母ノースフライトは安田記念、マイルチャンピオンシップを制した名牝。「ディープインパクト×キングカメハメハ」は過去に出走した5頭中4頭が勝ち上がり、デニムアンドルビー(13年フローラS-GII、13年ローズS-GII、13年ジャパンC-GI・2着)、その全妹ヤマノフェアリー(14年春菜賞-500万下)、グリュイエール(京都芝2000mの2歳レコードホルダー)など素質馬が目白押し。また、「父ディープインパクト、2代母の父トニービン」という配合は出走10頭中9頭が勝ち上がり、そのなかにはハープスター(14年桜花賞-GIなど重賞4勝)、ポルトドートウィユ(14年シクラメン賞-500万下)が含まれている。新しい成功パターンとして注目したい。母の「キンカメ×トニービン」という組み合わせはルーラーシップと同じで、クラシック向きの底力を感じさせる。La Troienneを絡めたアメリカ血統とのバランスもいい。ヒストリックスター(ハープスターの母)に似た匂いを感じる繁殖牝馬だ。もちろんディープインパクトとの配合もうまく行くだろう。

バイカ(牡 美浦・高橋義博 父エンパイアメーカー、母バイカオウレン)
「エンパイアメーカー×フジキセキ」はすでにドルメロという馬がデビューしており、新馬戦を快勝したあと中京2歳S(OP)でも2着と好成績を残している。この配合の肝はGana Facil≒ミルレーサー3×3、Imae of Reality≒Marston's Mill 3×4。2代母キクノスカーレットはマーメイドS(GIII)2着馬で、Buckpasser 4×4をはじめLa Troienne牝系の血を濃厚に持っているので、いかにも父とは合いそうなタイプ。日本における父の初年度産駒は、期待の大きさからするともうひとつ調子が出てこない点は気になるが、配合的におもしろいので期待したい。芝・ダート兼用の中距離タイプ。

シガレット(牝 美浦・国枝栄 父Sea the Stars、母ピサノティファニー)
 母は中央未勝利に終わったピサノティファニーで、アメリカのナンバーワン種牡馬Tapitの半妹にあたる良血。現役引退後にアイルランドへ渡り、Sea the Starsを交配して誕生したのが本馬。父Sea the Starsは現役時代、凱旋門賞(仏G1)や英ダービー(G1)など6つのG1を制覇し、カルティエ賞年度代表馬に輝いた。ヨーロッパ生産界を支配する大種牡馬Galileoの半弟にあたるので種牡馬としても期待は大きく、初年度産駒のTaghroodaがキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1)と英オークス(G1)を、Sea the Moonが独ダービー(G1)を、Vaziraがサンタラリ賞(仏G1)を制した。日本向きのスピードに懸念がある種牡馬なので、Mr.Prospector 4×3・5というスピードを強調した配合は好ましい。ただ、全体的にはパワー血統なので、ダート向きに出る可能性が高いのではないかと思われる。

レゲンデ(牡 栗東・石坂正 父ディープインパクト、母ドナブリーニ)
 ドナウブルー(12年京都牝馬S-GIII、12年関屋記念-GIII)、ジェンティルドンナ(12、13年ジャパンC-GI、14年ドバイシーマクラシック-G1、牝馬三冠)の全弟にあたる。母ドナブリーニはイギリスのスプリントG1の勝ち馬。ディープインパクトはスプリント血統と相性が良く、近い世代にスプリンターを持つ活躍馬は珍しくない。スプリンターは往々にしてガッチリとした力強い体型で、豊富な筋力量とそれに支えられた回転の速いフットワークを伝える。小柄でしなやかでトビが大きいディープインパクトに足りない要素だ。両者の異なる個性がうまくかみ合ったときに大物が誕生する。トーセンラー、ミッキーアイル、リアルインパクト、そして本馬の全姉ドナウブルーとジェンティルドンナはその成功例だ。母がNorthern Dancerの強いクロスを持ち、それを継続発展させる形で自身はLyphard 4×4を持つ。これらはいずれも父の配合において実績のあるパターン。2歳夏にグンと馬体が成長したところは全姉ジェンティルドンナと成長曲線が似ている。大仕事を期待したい。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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