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関東本部長・鈴木伸尋調教師の想い

  • 2014年12月16日(火) 18時00分
鈴木伸尋調教師

鈴木伸尋調教師



鈴木伸尋調教師「今は若手中心に危機感を持ちながら頑張っています。そして、その(東西の)差が少しずつ縮小していると思います」

 今週は、調教師会関東本部長の鈴木伸尋調教師にインタビュー!あまり知られていない調教師会のこと、関東と関西の格差問題、今後の展望などたっぷりと伺いました。

赤見:そもそも、調教師会とは何をする団体なんでしょうか?

鈴木:JRAが競馬を主催していて、そこから免許もらってるのが調教師、その調教師が会員になっているのが調教師会です。言葉で説明するのはちょっと難しいんですけど、互助的な団体です。定義が難しいんですよね。本来調教師は個人事業主ですが、各厩舎でやるべきことのいくつかを調教師に変わって行っているという。一般の人から見たら、「なにそれ?」って感じかもしれないですね。

赤見:その中で、鈴木調教師は関東本部長という役職なんですね。

鈴木:そうです。全体のトップが二ノ宮敬宇調教師で、調教師会会長、その次が関東と関西に分かれていて、関東本部長が僕、関西本部長が谷潔調教師です。役職は東西で16名ずつ選挙で選ばれるんですけど、業務担当、馬場委員などいろいろあって、会長と本部長はそのどれにも関わって行く感じです。

赤見:それは相当忙しそうですね。

鈴木:本当に忙しいです。自分の厩舎経営もある中で、会議会議でかなりの時間を取られますから。本音はみんなやりたくないんじゃないですかね(苦笑)。でも、誰かがやらなければならないことだし、競馬会全体にとっても大事なことですから。選ばれた以上は、精いっぱいやりますよ。

赤見:鈴木調教師は長年役職をやっているそうですが、一番力を入れて来たことは何ですか?

鈴木:数年前から関東は定年前に調教師を辞めなければならない人が多くいましたが、二ノ宮調教師が本部長になって、健康上の理由などで辞める人は別だけど、馬がいなくなってやりたいのに出来ないっていう人はいなくなって来ました。

赤見:関東と関西は、何故こんなに格差が出来たのでしょうか?

鈴木:原因はいろいろ考えられます。一つは、前から言われていることですが、施設の面もあると思います。ただ、美浦の坂路はゆるいと言われていた中で、藤沢和雄調教師はその間もずっとトップを獲っていたし、関西の松田博資調教師は坂路を使わないで大きいところを勝ったりと、施設面だけでマイナスと考えるのは違うのかなと思います。でも、そういう情報がパッと知れ渡って、馬主さんたちが耳にすると、じゃあ栗東に持って行こうか、という流れもあったんじゃないかなと。そういうことが色々重なって、関西に傾いている時期に、関東が危機感を持っていなかった、ということも大きいと思います。何十年も前は関東が圧倒的に強かった時代があって、景気も良かったし、馬主さんもいっぱいいて。一度逆転されても、いずれまた変わるだろうという、そういう危機感のなさが現状を招いたということもあると思います。しかし、今は若手中心に危機感を持ちながら頑張っています。そして、その差が少しずつ縮小していると思います。

赤見:具体的には、どんな展開を考えていますか?

鈴木:施設面はだいぶ改善されました。特に坂路は徐々に改善して、チップを深くしたり、細かく切ったり、散水して含水量を多くしました。それによって力の要る馬場になり、トレーニング効果の高い馬場になりました。

もちろん、まだ改善の余地はあるけどお金のかかることなので、ハード面ばかりではなく出来ることを考えていきたいと思っています。来年再来年にすぐ結果が出ることではないですが、いい馬を入れてもらえるような環境を作ることが大事なので。例えば競馬会と協力して、新規の馬主のオリエンテーションやイベントを企画して、各調教師と馬主が接触できるようにしています。個人ではみんな頑張っているので、その頑張りが実を結ぶような環境を作りたいですね。

鈴木伸尋調教師

鈴木伸尋調教師「個人ではみんな頑張っているので、その頑張りが実を結ぶような環境を作りたいですね」



赤見:来年から変わることはありますか?

鈴木:これは全体のことですけど、来年度から地方交流重賞の選定法が変わります。今までは一生涯の賞金で考えてたから、年齢や経験を重ねていない馬は出走が難しかった。でも来年からは、上から3〜4頭(各レースによって頭数は変わります)までは今までの計算で、残りの何頭かは過去1年間の賞金で計算されることになりました。そうするとメンバーの入れ替わりもあるし、過去に活躍した馬も出ることが出来て、同じメンバーがずっと走るということはなくなります。

赤見:今後変えたい部分はありますか?

鈴木:いろいろありますが、例えばローカル競馬が始まった時、メインは1000万条件か1600万条件の、1800〜2000mの芝が組まれることが多いでしょう。そこで勝ち上がった馬が秋の重賞戦線で注目されるわけで、馬券的な注目度も大きいんですけど、頭数がなかなか揃わないんです。その辺りの層がもっと厚くなってくれると、夏も盛り上がって、秋に繋がって行くので、今後考えていきたい問題です。

赤見:では、今後の目標を教えて下さい。

鈴木:今日は関東本部長として話しましたけど、一番はやっぱり自分の厩舎経営を頑張ります。ここを疎かにしてしまったら意味がないですから。関東本部長としては、若手が頑張れる環境を作りたいと思っています。それで、ある程度の年齢になったら譲って行かないと。下の世代がどんどん出て来て、自分たちで動かしてくれるようになって欲しいですね。調教師会の役職は大変なことも多いですけど、必ず誰かがやらなければいけないことですから。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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