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英国プロスポーツ観客動員ランキングTOP10に競馬が4つもランクイン

  • 2014年12月17日(水) 12時00分


1位がウィンブルドン、2位がF1の英国グランプリ、3位にロイヤルアスコット

 英国のマーケティング会社「デロイット・スポーツ・ビジネス・グループ」から12日、2014年の主要なプロスポーツ競技の観客動員ランキングが発表され、トップ10に競馬の主要開催が4つランクインしたことが明らかになった。

 観客動員第1位は、13日間の大会を通じて延べ49万1千人が入場したテニスのウィンブルドンだった。

 開催期間が長いこともあるが、通算で50万人近い有料入場者を集めるとは、さすがに英国における国民的イベントである。

 第2位が、F1の英国グランプリ。こちらは、舞台となったシルヴァーストーンに、3日間で29万8千人が入場している。1日平均10万人近いという集客力も凄いが、実は英国グランプリは今年、初めてとなる試みとして、ピットウォークをファンに開放したり、コンサートを行なったりする「ファンズ・サースデイ」というイベントを大会前日の木曜日に開催。ここにも3万人のファンが入場したというから、モータースポーツの集客力も恐るべしだ。

 そして、第3位に食い込んだのが、5日間の開催を通じて28万6千人の観客を集めた、競馬のロイヤルアスコットだった。1日平均にすると、テニスのウィンブルドンを遥かに上回る5万7千人を集めたこのイベントもまた、英国における国民的行事と言えそうだ。

 以下、トップ10に名を連ねた競馬開催は、4日間で23万2千人を集めたチェルトナムのフェスティヴァル開催が第6位。2日間で15万5千人を集めたエプソムのオークス/ダービー開催が第9位。3日間で13万9千人を集めたエイントリーのグランドナショナル開催が第10位と、4つの開催がランクイン。種目別で見ると、ウィンブルドン以外に、錦織圭選手が出場したことで話題となったATPワールドツアーファイナルズ(入場人員26万4千人は、このイベントとしては歴代最多)の2大会がランクインしたテニス、ライダーCと全英オープンという2つのトーナメントがランクインしたゴルフをしのいで、競馬は最多ランクイン種目となっている。

 競馬が4つ、テニスとゴルフが2つずつ、F1が1つで、それではトップ10のもう1つは何であったかというと、バーリー・ホース・トライアルズという馬術の3日間競技で、16万6千人を動員して第8位に食い込んでいる。馬術競技が16万人も動員するというのは、日本人の感覚からすると考えられないことかもしれないが、しかし、2012年のロンドンオリンピックを思い出していただきたい。王族たちが馬術会場に足を運ばれ熱心に観戦されるご様子が日本でも報道されたことを、ご記憶の皆様も多いと思う。英国のみならず欧州各国で、馬術は人気の観戦スポーツであり、馬文化が市民生活に深く根付いていることが、こんなところにも垣間見える。

 日本の競馬ファン目線で見ると、チェルトナムのフェスティヴァル開催が動員した23万2千人という数も、俄かには想像しづらいものかもしれない。改めてご説明すれば、チェルトナムフェスティヴァルは、障害競馬のシーズンにおけるクライマックスと位置付けられている開催だ。1日平均にすると5万8千人という数字は、実は、平地競馬のハイライトであるロイヤルアスコットの1日平均を上回っている。英国では、実は平地よりも障害の方が、市民の間での人気は高いとも言われているが、それがあながち間違いでないことは、この数字が物語っている。

 だが、1日平均という視点で見れば、エプソムのオークス/ダービー開催は7万7千人も集客しているから、「3歳クラシック」や「ダービー」という存在はやはり、英国人にとって特別な意味を持っているようだ。

 さて、ここまで御読みになって、トップ10ランキングに多少の違和感をお持ちの読者もおられることと思う。英国で、そして欧州で、大人気のサッカーが、その存在を消してしまっているではないか?!、と。

 これは、「サッカーの聖地」と称されるウェンブリー・スタジアムでもキャパシティは9万人で、つまりは1試合で10万人以上を集めるマッチは催しようがなく、従ってイベント別の集客トップ10には入って来なかったということ。

 トータルで見れば、それはもう、英国のプロスポーツで圧倒的な集客力を誇るのはサッカーである。

 再び「デロイット・スポーツ・ビジネス・グループ」の集計によると、2014年の英国におけるプロスポーツ競技の有料入場人員の総数は、前年比3%増の約6750万人で、このうち実に63.4%を占める4280万人が、サッカー観戦者であった。

 2013/2014年の英国プレミアリーグはトータルで、欧州のどの国のプロサッカーリーグよりも多い、1390万人を動員。プレミアの1つ下のディヴィジョンにあたるチャンピオンシップと呼ばれるリーグですら940万人を動員しているから、イギリスにおけるサッカーの人気は、やはり絶大と言わざるを得ない。

 トータルの入場人員を種目別で見ると、デロイットは競馬と馬術をひと括りにしていてこの辺りも実に英国的概念なのだが、年間で700万人を動員した競馬&馬術は、サッカーに次ぐ第2位の座を占めている。

 これに続く第3位が490万人を集めたラグビーで、第4位が220万人を動員したクリケットというのもまた、英国らしい統計結果である。

 さて、ここまではプロスポーツ競技に限った統計を御紹介してきたが、アマチュアスポーツを含めれば、2014年に最も観客を集めた大会は。7月23日から8月3日までグラスゴウで開催された「コモンウェルス・ゲームス」だった。コモンウェルス・ゲームスとは、4年に1度、かつて英国連邦に所属していた国や地域の代表が集まる総合スポーツ競技会で、11日間の大会を通じてなんと130万人を動員するという、驚くべき集客力を発揮している。

 こうして見ると、英国人とは観戦スポーツが非常に好きな国民であることが良くわかる。

 そして、プロ・アマ含めてたくさんの競争相手がある中、単体イベントとしてトップ10に4開催がランクインし、種目別トータルで2番目というポジションを確保している競馬は、英国に深く根ざした文化であることを、改めて知らしめる統計と言えそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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