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生産者賞、増額

  • 2014年12月17日(水) 18時00分
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来年から増額されるJRAからの生産者賞(写真と本文とは関係ありません)



より身近なところがたとえ数万円でも増額になったのは大きな進歩と受け止めたい

 このほど届いた「JBBA NEWS、2014年12月号」によれば、JRAより交付されている生産者賞の総額が来年度約5%増額され、40億200万円の予算となることが記されていた。馬券発売金予算の設定は2兆4255億円で、本年度よりも3.5%の増額を見込んだ編成となっている。競走事業費予算については「1.発売金の増加・参加機会の拡大、2.『ダービーからダービーへ』の一層の推進、3.円滑な出走、在籍頭数の適正化」という観点より本賞金他も増額することになり、競走事業費全体では本年度と比較し2.6%の増になるという。

 生産者賞は1.生産牧場賞と2.繁殖牝馬所有者賞の2本立てで交付される。まず1.生産牧場賞について。これは当該馬を生産した生産牧場に交付されるもので、GI競走1着100万円、2着40万円、3着25万円、4着15万円、5着10万円。次にその他の重賞競走(すなわちGII、III)が1着65万円、2着26万円、3着16万円、4着10万円、5着7万円。ここまでは今年度と変わらない。

 増額されるのは、重賞競走以外の平地の特別競走(障害は除く)で、1着43万円(40万円)、2着17万円(16万円)、3着11万円(10万円)、4着6万円、5着4万円。カッコでくくった部分が今年度の交付金額で、来年度はそれぞれ1着〜3着までが3万円〜1万円ずつ増額になる。

 平地の一般競走も1着32万円(30万円)、2着13万円(12万円)、3着8万円と、同じく2万円〜1万円の増額だ。

 GI競走を筆頭に、重賞競走は増額にならないが、特別競走と平地一般競走が今回増額の対象になったのは、もちろん生産者により広く交付することが目的である。多くの中小牧場にとっては、重賞以上の競走に生産馬が出走する機会は限られており、より身近なところがたとえ数万円でも増額になったのは大きな進歩と受け止めたい。

 次に、もうひとつの2.繁殖牝馬所有者賞について触れる。

 これは、当該馬が誕生した時に母馬を所有する生産者もしくは馬主に交付されるもので、GI競走1着130万円、2着52万円、3着33万円、4着20万円、5着13万円。その他の重賞競走が、1着80万円、2着32万円、3着20万円、4着12万円、5着8万円となっており、ここまでは増額されてない。

 変更のあるのは重賞競走以外の平地の特別競走以下の部分で、1着43万円(40万円)、2着17万円(16万円)、3着11万円(10万円)、4着6万円、5着4万円。そして平地の一般競走の1着32万円(30万円)、2着13万円(12万円)、3着8万円と、生産牧場賞と同額の上乗せとなった。

 なお、「国際化時代」を反映して、外国産馬の出走があった場合には、GI競走、重賞競走、平地のオープン特別競走については、交付金額がそれぞれ増額される。GI競走では生産牧場賞1着100万円が150万円に、重賞競走では65万円が95万円に、平地の国際オープン特別競走では43万円が53万円に、である。

 繁殖牝馬所有者賞についても同様で、GI競走が130万円から180万円に、重賞競走が80万円から110万円に、平地のオープン特別競走が43万円から53万円に、それぞれ増額されて交付される。

 また、前述したように、障害競走においては、重賞競走のみの交付とされており、特別や一般競走では交付対象にならない。

 ところで、交付を受ける側の生産者は、生産施設を有し、現に生産に従事している者がその対象である。しかし、近年、高齢化や後継者不在などの理由から、廃業に追い込まれる中小牧場が増えてきており、せっかく生産馬が活躍しても、生産者賞の交付を受けられないケースがままあるらしい。また、実態のはっきりしていない生産牧場(名簿上では名前が記載されているが、名義だけ繋いでいるようなケース)に対するチェックもひじょうに厳しくなってきていると言われており、場合によっては、一度交付した生産者賞の返還を迫られる場合もあるという。

 それはさておき、生産者が健全に生産活動を続行して行くためには、何を措いても、生産にかかったコスト分くらいは十分に回収できるような価格維持と流通体系の構築がまず求められる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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