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西舎神社騎馬参拝

  • 2015年01月07日(水) 18時00分
山野辺場長を先頭に騎馬参拝

山野辺啓場長を先頭に騎馬参拝


多くの関係者や一般参拝客でにぎわった恒例の「騎馬参拝」

 午年から未年に変わった今年は、昨年のような馬にちなんだ行事のない元旦を迎え、やや残念な気持ちもある。昨年は元日早々より、ここ浦河町では騎馬による年賀状配達などが実施されたのだったが、今年はそれも行なわれなかった。12年に一度の午年限定の企画だったということだが、もともと浦河は馬の町でもあるわけだから、これくらいの行事はぜひ毎年続けてみてはいかがなものか、と思わぬでもない。

 それでも、新春2日は、恒例の「騎馬参拝」が穏やかに晴れ渡った寒空の下、町内の西舎神社を会場に行なわれ、多くの関係者や一般参拝客でにぎわった。数えて今年で106回目になる。

 今年は乗用馬やポニーなど総勢18騎が参加した。午前10時45分、予定通りにJRA日高育成牧場の山野辺啓場長を先頭に騎馬の隊列が神社前に到着すると、一斉にカメラが向けられた。鳥居をくぐり、社殿前で下馬した山野辺場長は、そこで賽銭を投じ、二礼二拍手一礼。それに続いて石丸睦樹副場長以下の騎乗者たちが次々に社殿前に進み、同様に参拝を終えた。

 やや間隔を開けて次に登場したのは浦河ポニー乗馬スポーツ少年団の子供たち。昨年秋に東京競馬場で行われた第6回ジョッキーベイビーズにも出場した宮内勇樹君(浦河小6年)を先頭に、同じくそれぞれ賽銭を投じて新年の祈願を行なった。

浦河ポニー乗馬スポーツ少年団の子供たち

浦河ポニー乗馬スポーツ少年団の子供たち



 その後、池田拓町長や道議会議員などのお歴々が参拝を行ない、最後に、昨年より実施するようになった餅撒きで締めくくった。

昨年より実施するようになった餅撒き

昨年より実施するようになった餅撒き



 天候に恵まれ穏やかな一日だったが、参拝客はそれほど多くない。せめて町内から馬業界の人々だけでも集まってくれるともう少し盛り上がるのだが、と思わぬでもなかった。

 かつて6年前までは、浦河市街地にある浦河神社にて騎馬参拝が行なわれていた。101段ある石段を騎馬によって駆け上がる勇壮な行事で、毎年1月2日に実施されていた。

 しかし、ちょうど100周年の節目を過ぎた頃に、神社側から「見直していただきたい」という趣旨の申し出があり、その後紆余曲折を経て、浦河神社での騎馬参拝は中止のやむなきに至ったという経緯がある。

 今もなお諸説諸々だが、浦河神社の本音としては騎馬参拝を「決して歓迎していたわけではなかった」ということ。馬による石段駆け上がりは危険を伴い、且つ、石段そのものも破損する可能性がある。騎馬が石段を駆け上がる姿は、見る分には迫力十分で絵になる光景だが、もし万が一事故でも起きたらどうするか、という問題が常につきまとっていたのは事実だ。

 神社側は「騎馬参拝そのものには反対しないが、せめて三が日は避けてもらえないか」という主張だったとも伝えられる。しかし、日程の調整は、そう簡単な話ではなく、神社に通じる国道の交通整理などは地元警察に委ねなければならないし、仮に5日、6日になってからの実施となると、正月休みが終わってしまい社会が再び動き出す。騎馬参拝実行委員会としては、そこでやむなく浦河神社での実施を諦め、現在の西舎神社にて実施という方向に大きく舵を切ったのである。

浦河ポニー乗馬スポーツ少年団の子供たち

6年前のポニー乗馬スポーツ少年団の駆け上がり写真



 一部には未だ、浦河神社での騎馬参拝を復活してはどうか、との待望論もあるという。現在の騎馬参拝はフラットなコースを進んできた騎馬隊がそのまま鳥居をくぐり抜けるだけのことだから、見る側としては味気ない、というような意見もないではないらしい。

 しかし、実行委員会は浦河神社での騎馬参拝復活には否定的だ。毎年繰り返してきた時代には、石段駆け上がりの経験を持つ乗用馬が何頭もいた。だが、以来6年が経過し、その間に経験馬がどんどんいなくなってきており、また騎乗者も同様に、石段駆け上がりの経験者が減ってきていることなど、復活にはかなり難問山積というのが実情だ。

浦河ポニー乗馬スポーツ少年団の子供たち

6年前の騎馬参拝石段駆け上がり写真



 確かに101段もの石段を騎馬で次々に駆け上がる姿は、何とも見応えのあるこの町のお正月ならではの風景であった。個人的には復活できるものならぜひそうして欲しいとは思うものの、口で言うほど簡単ではないということである。

 ただ、西舎神社の騎馬参拝も、できることならもう一工夫して、馬産地の元旦風景の象徴となるようなインパクトが欲しいとは感じている。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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