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地方騎手の評価

  • 2015年01月30日(金) 18時00分


◆岡田繁幸氏、吉田照哉氏の対談を見て

 ちょっと前のことになるが、グリーンチャンネルの正月特番『新春BIG対談2015』をご覧になられただろうか。岡田繁幸氏、吉田照哉氏の対談だ。ぼくは何かの原稿を書きながらグリーンチャンネルをつけっぱなしにしていたのだが、あるところでハッ!として作業の手が止まった。

 それは、騎手の話になったときに、吉田照哉さんが「GII以上のレースの日には、地方の騎手でも誰でも、所属に関係なく乗れるようにしたらいい」というような内容のことを言われたときだ。ずいぶんと大胆なことを言われるなあとちょっと驚いたが、こうしたことが言えるのも吉田照哉さんならではだろう。ようは、GIなどの大レースになると上位何人かの騎手の取り合いになって、思ったような騎手に乗ってもらえないことがあるというのがその理由のひとつ。

 さらに、「地方競馬のトップには、高知の赤岡とか、乗ってもらいたい騎手がたくさんいる」というようなことも話されていた。番組収録が年末の、それも有馬記念の前だったようで、ワールドスーパージョッキーズシリーズに地方代表として出場していたのが赤岡騎手だったので、たまたま名前が出たのかもしれないが、地方競馬に携わる者として、こうして取り上げていただけることは素直にうれしい。

 で、1カ月近くも前のことをなぜ今取り上げたかといえば、社台グループの会員向け月刊誌『Thoroughbred』2月号の『今月のプレゼンテーション』という巻頭コラムに「転籍だけではない、地方騎手の迎え方」と題して、あらためてそのことについて詳しく書かれていたからだ。少し長くなるが、一部を引かせていただく。

 <昨年の騎手ランキングを見るまでもなく、地方競馬でトップに君臨したほどの騎手であれば、その手腕はどこへ行っても即通用することは明らかです。それとともに、いまは日が当たらなくても本当の腕利きがまだまだ地方競馬にはたくさん存在すること、そして彼らが恵まれているとはいえない環境下で日々、黙々と力を蓄えていることをファンはとっくに見通しているのです。しかも、M.デムーロ、ルメール、ムーア、スミヨン……世界的名ジョッキーの手綱捌きさえ目の当たりにできる今日、もっと身近であるはずの存在にも平等にチャンスが与えられるべきだと思うのは、ファンならずとも誰もが抱く率直な感想でしょう。>

 併せて、平地GII以上の重賞開催日は中央競馬の延べ288日のうち2割弱の56日(2015年の場合)で、若手騎手の活躍の場となるローカル場はほとんど侵食することがない、という配慮も示されている。「GII以上」としたのにはそうした理由があった。

 ジャスタウェイ、エピファネイアが2014年度のワールドベストレースホースランキングでトップ2になった例を挙げるまでもなく、日本の競馬が欧米の競馬先進国と肩を並べるようになったのは、世界の誰もが認めていること。中央競馬で行われているGIやGIIが世界でもトップクラスの競馬であるなら、馬主や厩舎関係者が乗せたいと思った一流の騎手には、所属に関係なく乗ってもらうことができて当然だろう。

 一方で、すでに引退された安藤勝己さんが地方騎手として初めて中央に移籍するときにもよく言われたことだが、中央であまり騎乗機会に恵まれない若手騎手には、すでに地方競馬の主催者間では行われているように、期間限定騎乗のような形で、騎手の数が不足している地方競馬で騎乗できるような道筋をつけることも、あらためて話し合われてもいいのではないか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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